181話〜東部防衛線④〜
ー東部防衛軍司令部ー
即席で築かれた防衛陣地の中心に、東部防衛軍の司令部が設置されていた。
司令部にはひっきりなしに伝令がやって来て、戦況を逐一報告していた。
その報告を聞き、司令部にいる将校達は指示を出して行く。
今のところこちらが優勢であり、突破を許していない。
だが、帝国がこのままな訳はないとわかっているので油断なく指揮する。
総司令官であるルーセント辺境伯は腕を組み、地図を見ながら推移する戦況を予測する。
「今のうちに軍を二つに分けよ。片方は休息を」
ルーセント辺境伯の命令で直ちに軍は二つに分けられた。
ルーセント辺境伯の予想通り、帝国軍は陽が沈んだ後も、攻撃の手を緩める事は無かった。
しかしながらそれは予想されており、昼間の間にルーセント辺境伯の命令で軍を二つに分けていたので、休息していた部隊と入れ替わり防衛に努める。
昼夜問わずの攻勢により、数日で疲労困憊し突破出来ると考えていた帝国軍だが、予想以上に敵が粘り強く抵抗する為に、次第に焦りが出ていた。
それは食糧問題であった。
魔物はよく食べる為に、その維持が周辺から獲物となる動物の数も減って行き、飢え始める魔物や中には共食いを始めた魔物もいた。
すると魔獣兵の指揮に従わない個体も現れ始めていたので、早急に対処が必要であった。
そこで帝国軍は近くに村などがないか調べ始めた。
当然この動きにルーセント辺境伯は気付き、優秀な斥候を放った。
すると帝国軍が周辺の地理を調べ始めた事に気が付いた。
「何か仕掛けようとしているのか?」
考えるがすぐに答えは出た。
最近攻めて来る魔物は突破よりも飢えており、倒した兵士に群がり喰らい始めたと言う。
「飢え始めたか。となると狙いは周辺の村人か」
しかし当然ながら、退避命令は出ており村人は逃げ出していた。
しかしある村は逃げ出さずに留まっていた。
村が全ての村人が村を捨てるのは相当な覚悟が必要である。
留まった村はこの辺りでも一番歴史が古く、その分村への愛着も強いのだろう。
「不味いな。すぐに優秀な冒険者を集めてくれ」
ルーセント辺境伯の命令により、優秀な冒険者パーティーが複数集まった。
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