174話〜バトランタ戦②〜
追撃戦の話も出たが、こちらも武器の消耗が激しく兵達も疲れていたので追撃は行わなかった。
敗残兵となった帝国軍をまとめ上げたのは、ラジェット将軍の副官であった男である。
逃走兵も出て残ったのは僅か3千程度である。
その後五日掛けて本隊と合流する。
本隊の2万は全て精鋭で揃えられている。
そこで副官はこれまでのあらましを報告する。
それを聞いた本隊を率いていた将軍は、撤退を考えたが本営からそのまま突破する様に命じられた。
そして本来ならバトランタを抜いた後の要塞戦で使用する予定であった切り札を突入する事が決定した。
「アレらを出せ」
「良いのですか?アレは要塞で使用予定では?」
「仕方ない。バトランタを抜けなければ要塞には行けないからな」
「わかりました。しかしそこまで統制は取れてませんので簡単な命令しか出来ませんよ?」
「この際仕方ない。バトランタで略奪する予定だったが物資ごと破壊する可能性があるから使いたくはなかったがな」
「では用意して来ます」
「うむ」
これまで本隊の後方にいた不気味な馬車の中身が現れる。
それらは闇夜に紛れてバトランタに侵攻する。
「最近村が襲われたと報告が多発しています。帝国軍の仕業なんだろうか?」
「可能性は高いが、襲われた村を見て来たが魔物の仕業みたいだぞ」
「そうなのか?」
「ああ」
兵士たちはその様な話をする。
「ただでさえ帝国相手に今は定一杯なのに、そこに魔物が加わるとやっかいだな」
「確かにな。前回は完勝出来たが次はわからないからな」
「おい!お前らいつまでくっちゃべってるつもりだ!そろそろ巡回の時間だぞ」
そこにベテラン兵士がやって来る。
「すんません班長!」
「今行きます!」
慌てて槍と兜を手に取って詰所から出て行く。
「うう〜今日は冷えますね」
「ああ、こういう日に限って良くない事が起きるから気を引き締めて行けよ」
「それは班長の経験則ですか?」
「ああ、そんなもんだ」
5人で予定通りの巡回ルートを通っていると、物音が聞こえて来た。
「待て!何かいるぞ」
松明をそちらに当てるが暗くて見えない。
「何も見えませんよ?」
「おかしいな」
「気にしすぎですーー」
バタン。
言葉の途中で兵士の一人が倒れる。
「おい!どうした!」
慌てて駆け寄ると、首から上が消えていた。
「て、敵しゅーー」
ガブリ。
いきなり現れた狼の様な上半身をした魔物に喰われてしまう。
「クヴァルム様!敵襲です!敵は魔物の様ですが、様子が変です」
「変とか?」
「組織だった動きをしています」
「これは……帝国の新たな兵器と見るべきだな。急いで寝ている者達を起こすんだ」
「はい!」
慌しい夜が始まる。




