164話〜間者③〜
ゾランを囲んでいる者達が目の前に現れる。
見た目から多分傭兵の様である。
「いや〜最長記録じゃ無いか?俺たちからこれだけ逃げおおせたのは?」
「そうかもな。はぁ、賭けはパウロ隊長の勝ちだな」
「だから言っただろう?手練れだって」
パウロと呼ばれた男は少し自慢げにそう言う。
悠長に目の前で話しているが、隙はどうやら無さそうである。
「あんた。もう観念したらどうだ?」
「お前達は傭兵か?」
「ん?まあ、その通りだよ。傭兵団【梟の剣】だ」
梟の剣と言えばオルトメルガ王国のみならず、ラーバント帝国でも有名な手練れの傭兵団である。
ゾランは買収しようと考えていたが、梟の剣は一度結んだ契約は相手側が契約を解除するか違反しない限り、必ず契約を履行する事でも有名である。
その為に買収は不可能と判断した。
だが一応提案だけはしてみる。
「梟の剣か。その名前は聞いた事がある。一応提案だが提示された契約金の倍を出す事を約束するから、見逃してはくれないか?」
「俺たちの事を知ってるんだろ?例え10倍だとしても答えはノーだ」
「やはりか」
「さて、長々と話して居られるほどこちらも暇では無いのでね。大人しく捕まってくれないか?そうすれば命までは奪わないと約束しよう」
「そうしたいのは山々だが、此方にも事情があってね。抵抗させてもらうとしよう」
そう言ってゾランは腰から二本の短剣を引き抜き構える。
それを見てパウロ達傭兵団も戦闘態勢に入る。
相手は見える範囲で5人。
だがそれ以上いる事は確実だろう。
5人の中でも隊長と呼ばれたパウロが、1番の手練れであろう。
勿論その他のメンバーも十分に手練れである。
例え一人を突破したとしても、すぐに近くの者がサポートに入るだろう。
しかしこのまま時間が経過すれば、此方が不利になる一方で良い事は何一つない。
ゾランは覚悟を決めて行動に移す。
雰囲気が変わった事に気付いたのか、より一層パウロ達は警戒心を上げる。




