162話〜間者①〜
ユウマがクヴァルムとしてバトランタに戻って来てから二週間が経過した。
各地から働き先として、多数の住民を受け入れていた。
勿論中には間者の存在もあったが、今のところ上手く対処出来ている様子である。
ラーバント帝国の間者の一人であるゾランは、知り合いのツテを頼り何とかバトランタに働きに来た村人として入り込む事に成功した。
だが、重要な区画である対帝国用の施設には未だに入る事が出来ないでいた。
「さて、どうするか」
ゾランは潜入するプランを考えるが、中々良いアイデアが思い浮かばないで居た。
普通に潜入しようとして見つかり、処罰されている間者も遠目から確認する事が出来た。
何より24時間体制で監視についているゴーレムが厄介である。
予め許可を得た者でなければ問答無用で捕縛し、取調べのあと問題なければ釈放される。
問題があれば牢屋に入れられる。
仕事終わりに来る酒場で、何か有益な情報がないか耳を澄ませる。
「聞いたから?作業中に事故があって欠員が出たらしい。そこで新たに数名作業員を募集するそうだ」
「本当か?応募者は殺到しそうだな。秘密厳守の代わりに手当は高いからな」
「そうだな」
ゾランはその話を聞くと、その話をしている席に酒を持って向かう。
「その話詳しく聞かせてくれないか?これは俺の奢りだ」
そう言って酒をテーブルの上に置く。
「お?へへ。まあいいだろう」
怪訝にそうにした男達だが、酒を見て機嫌良さげに席に招き入れてくれた。
男達から情報を仕入れた後は、宿に戻り簡単な報告書を作成する。
作成が完了するとそれを伝書鳩に任せる。
「無事に届けろよ」
鳩をひと撫でして、窓から放す。
その後は寝て翌日に備える。




