150話〜調査依頼⑤〜
異常個体はイレギュラーと呼ばれる様になり、数週間が経ったある日、漸く王都から調査団が到着した。
調査団一行の中には、高名な錬金術師もおりイレギュラーを調べ始める。
するとオルトメルガ王国ではない、技術が使われていることが判明する。
それはラーバント帝国の技術に似ているが、特定するまでには至らない。
今回の事件の背景には帝国がいるのか、それとも帝国の仕業にした第三国の陰謀か?となったが、決定的な証拠はまだ無いので何とも言えない。
調査を進めていると、イレギュラーを収容している施設が襲撃を受けた。
襲撃により、収容していたイレギュラーや調査資料の殆どが焼き払われた。
施設を警備していた衛兵や冒険者も、全滅しており犯人の姿を見た者は居なかったので捜査は難航した。
この事件に対して、すぐに各門の警備を厳重にして、怪しい人物が迷宮都市内から出ないか監視したが、門を完全に閉鎖にする訳にも行かないので、怪しい人物を捕らえる事は叶わなかった。
「副ギルドマスター。襲撃犯を捕らえることは出来ませんでした。申し訳ありません」
「いや、仕方がない。あれはプロの仕業だ。切り替えて行こうか」
ウェールズはそう言って報告に来た職員を気遣う。
ウェールズ自身、襲撃犯を許した訳ではないが怒りでは捕まえられない事を経験から判断してだ。
取り敢えず、迷宮都市の主要な名家には報告して気をつける様に注意を促した。
自治都市であるのは様々な利点がある反面、なかなか意見が擦り合わずに初動が遅れてしまうデメリットもある。
今回がまさにそれである。
すぐに各門の警備などを厳しくしたが、それも完璧ではなくそれぞれの担当に話す時間もあり、通常の都市よりも遅く、封鎖も出来なかったのである。
「取り敢えず、今後はイレギュラーを捕まえても収容する場所は秘匿する様に」
「畏まりました」
職員は一礼して去って行く。
「ふぅ、少し休憩にするかな」
山積みになった資料を見ながら、少し手を置いて外に息抜きに出る。
近くのカフェに入ってコーヒーとケーキを頼む。
少しゆっくりしていると、近くの客の会話が聞こえて来る。
この前の施設の襲撃事件で少し不安に思っている様だ。
戻ろうとした時、近くの席から気になる会話が聞こえて来た。
「そろそろ警戒も厳しくなって来たし抜けるか?」
「馬鹿。勝手に抜けたら消されるぞ?確かに前の襲撃で警戒は強くなったが、こちらのアジトの場所なんかはまだ何処もバレてないからな」
「それもそうだな。暫く豪遊出来るくらいの金も貰ってるし、ゆっくりと過ごすとするか」
「ああ、それとこの話は此処で終わりだ」
少し睨みつける様に男が言う。
「そうだな。悪かったよ」
注意された方も、バツが悪そうな顔をして謝罪する。
ウェールズはそれを気づかれない様に聞いていた。
そしてこの二人が何かしら例の襲撃犯と繋がってると確信する。
二人が席を立ったので、ウェールズもそれに続いて店を出る。




