137話〜キメラ戦②〜
第二ラウンドの開始である。
「仲間を呼んだって事は、向こうも相当キツいはずっスね」
「その通りよ。私たちが彫像ゴーレムの相手をするから、その間にビルナ達はあのキメラを倒して頂戴」
ジュリーはそう言って、背後の彫像ゴーレムに向かって行く。
ビルナとミリナの二人とユウマの3人がキメラに、残りのメンバーが彫刻のゴーレムの相手をする事になった。
巨大に似合わないスピードで、こちらを翻弄するキメラの動きを見切り、チマチマと攻撃を当てて行く。
「このままじゃ、ジリ貧だね」
ビルナの言う通り、キメラは驚異的な回復能力を持っているので、すぐに回復してしまう。
「此処いらで一発デカイのを、お見舞いする必要があるかもね」
「そうなの」
「なら、足止めしますので、その隙にデカイのをお願いします」
「任せろなの」
「オッケー、アタシも手伝う」
ユウマの案にミリナとビルナも賛成する。
「では行きます!」
そう言ってユウマはキメラに向かって走って行く。
ビルナもユウマとは反対側の左側に向かって走り出す。
ターゲットが分かれたキメラは、ユウマとビルナのどちらに対処しようかと、首を左右に振ったが真ん中に残ったミリナに狙いを定めて真っ直ぐに向かおうとしたが、横からユウマのファイアボールを喰らい標的をミリナからユウマに変える。
「GAAAAA!!」
咆哮して、ユウマに向かって鋭い爪がある前足で攻撃する。
それをユウマは横に飛んで交わすと、再びキメラの顔に向かってファイアボールを放つ。
だが、それはキメラの尻尾部分の蛇が放つ酸により相殺される。
「こっちにもいるよ!」
そう言って後ろに回り込んだビルナが、渾身の一撃をキメラに叩き込む。
「GAYYYY!!」
そう声を上げて十数メートルキメラは吹っ飛ばされる。
更に彫刻ゴーレムの一体が巻き込まれて、粉砕される。
「凄いパワーだ」
「ま、こんなもんだよ」
素直にユウマは感心する。
ガラガラと瓦礫からキメラが姿を現すが、そんなにダメージはないようだ。
「頑丈だね」
「そうですね。でも確実にダメージは蓄積されている筈です」
「なら何度でも叩きのめすだけさ」
ユウマとビルナ達がキメラに善戦している頃、彫刻ゴーレムを相手にしているガンジョー達は、数の差をものともせずに、次々と現れる彫刻ゴーレムを文字通り粉砕していた。
「もう、数だけは多いッスね」
「リムさん。油断は禁物ですよ」
「わーてるッスよ、ナディアっち」
いつの間にか、仲が進展しているリムとナディアであった。
彼らが悠長に会話している間にも、ガンジョーがまた一体の彫刻ゴーレムをその戦斧で真っ二つにする。
どうやら彫刻ゴーレムは物理攻撃だけで、魔法を放つ気配はないので物理特化のようである。
通常の冒険者なら、その硬い身体と魔法をある程度軽減する能力に、更には数の暴力により苦戦を強いられただろうが、ここにいるメンツは普通の冒険者ではない。
方やランクAパーティーと言う、ほぼ最上の地位にいる冒険者達にゴーレムとしての最高峰であるリムとガンジョーに、ダークエルフ族の戦士長と姫君である。
彫刻ゴーレムの魔法を軽減する特殊な能力も、圧倒的な魔法力の前には関係なく悪化なくナディアの魔法により倒されている。
キャミーとジュリーの二人も、流石はランクB冒険者に相応しい力量で、難無く彫刻ゴーレムを倒して行っている。
目に見えて彫刻ゴーレムの数は減って行き、残り数体となった時ゴゴゴと音がした方を見ると、壁の一部が開きそこから無数の彫刻ゴーレムが現れた。
「何なんッスか!もう良い加減に飽きて来たッスよ!」
少し怒気を込めながら、リムは彫刻ゴーレムの首を撥ねて行く。
「どうやらここは一種のモンスターハウスのようね。多分キメラを倒さない限り追加でまた出て来ると思うわ。キメラは確かに強敵だけど一番の難点は、あの異常なまでの回復力だからこのモンスターハウスと合わせると、とても凶悪な代物よ」とジュリーが解説してくれる。
「なら速く倒して欲しいよね」
キャミーもうんざりした様な声を出す。
ガンジョーは黙々と彫刻ゴーレムを粉砕し、ディアナはナディアに近づく彫刻ゴーレムを片っ端から排除していく。
そうして無駄口を叩きながらも、手を休めずに彫刻ゴーレムを倒して行く




