136話〜キメラ戦①〜
キメラは大きく分けると、大型・中型・小型の三種類に分けられる。
大きいから強い、小さいから弱いなどはキメラには当てはまらないが、大体のキメラは大型が強い傾向にある。
大型と言うことは、それは多種多様な魔物を多く吸収した事になるからだが、キメラは量を重視する個体もいれば、質を重視する個体もいる為に、小さいが強力な魔物を吸収して強い事もある為に、注意が必要である。
今回目の前にいるキメラは、大凡体長3メートルから4メートルの中型に分類される。
こちらが散開するのと同時に、今までいた場所にキメラの酸弾が命中して地面を溶かす。
ユウマは、キメラが発射する酸弾の次弾までの秒数を数えておく。
「だいたい5秒程度で、ヤツは次の酸弾を飛ばして来ます!」
「オーケー」
ビルナはユウマに返事をすると同時に、急加速してキメラの懐に接近する。
キメラがゴリラの腕でビルナに殴りかかるが、ミリナがその腕に魔法を放ち軌道を逸らす。
思ったよりも高威力であったのか、キメラの身体全体が横に反れる。
体勢を崩したのを見逃さずに、キャミーも後ろから接近する。
その横を同じくリムも並走する。
二人は示し合わせたかの様に、尻尾による攻撃を避けたのを合図に左右に分かれて、それぞれキャミーは右後ろ足を、リムは左後ろ足を短剣で斬り付ける。
思ったよりも皮膚が厚いのか、それほど深く斬り込めていないが、それでも十分に注意を引けて狼の顔が、後ろを向く。
その隙を見逃さずに、ビルナが大剣で胴体を斬り付ける。
「硬いね!」
思ったよりも深く斬れなかった様である。
素早くビルナはその場から動く。
「GAAAA!!」
キメラは怒りの咆哮を上げて、自身を斬り付けたビルナに狙いを定めて、狼の口から炎を吐き出す。
それをビルナは避ける。
狙いがビルナに向いてる間に、ミルナの放った精霊魔法が炸裂する。
地面から生えて来た木の根が、キメラの身体中に巻きついて地面に縫い付ける。
ガンジョーが巨大な戦鎚を、キメラの頭に振り下ろす。
グチャと音がしてキメラの片目を潰す事に成功した。
痛みで暴れるキメラだが、木の根が思ったよりも強力で動けない。
その隙にナディアが唱えていた詠唱が完了する。
「皆さん離れてくだい」
そう言うと、キメラの頭の上に雷雲が出来上がり、そこからキメラに向かって雷の雨が降り注ぐ。
『ゴロゴロ!』と雷が唸りを上げてキメラに直撃する。
キメラは痺れて動きが鈍くなる。
再生能力が高いキメラと言えど、こうも連続して攻撃を受けると再生速度が間に合わなくなって行く。
出血が多くなって来たキメラに、全員で集中攻撃する。
「あと一押しってところだね」
「その様ですね」
ビルナの意見に同意する。
ユウマは剣を構え直して、次の出方を伺う。
するとキメラが「GALUUUU!!」と今までと違う鳴き方をする。
何か動きがあるかと、キメラを注視していると後ろから気配を感じて、飛び退くとユウマがさっきまでいた場所に、槍が突き立っていた。
それを投げたのは、部屋の壁側にあった彫像であった。
他の彫像も動き始めた。
「どうやらお仲間を呼んだようだね」
部屋にあった彫像全てが動き出した。
その数実に30体である。




