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ゴーレム使い  作者: 灰色 人生
第4章〜迷宮都市アザゼル〜
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幕間 ある雪の日の出来事・短編【後】

 クヴァルムが救援の部隊を率いて村に到着すると、既に戦闘は終わっていた。


 ここ一月は警戒を厳にして巡回兵を増員していたお陰で、何とか村は守られた。


 そして村人達の安否確認をしていると、子供が3人行方不明になっている事が発覚する。


 3人の子供の内の一人の弟が、村が襲われる前に3人が山に遊びに行ったことを伝える。


 冬の山は危険で立ち入るなと普段厳しく言われていたが、好奇心には勝てずに勝手に行ってしまったようだ。


「わかった。あとは任せよ。3人の子供達は必ず見つけて見せよう」


「ありがとうごぜえます」

 村長や両親に感謝されながら、早速クヴァルムは捜索部隊を組織する。


 今回救援に率いて来た部隊から、山の索敵が得意な者達を選出して部隊を再編成する。


 クヴァルムも自ら一隊を率いて山に向かう。


 山の中には冬の為に沢山の餌を欲する魔物が数多く徘徊しており、通常の倍以上危険になっている。


 こんな森の中に子供3人が無事に生きているとはとても思えなかったが、それでもクヴァルムは山の中を探索する。


「まだ何処からも発見の報せはないか?」

「はい。まだ手掛かりすら掴めておりません」

「そうか」


 3人の生存は絶望的かと思われた時、森の奥の方から悲鳴が聞こえて来た。


「すぐに行くぞ!」


 クヴァルム達は声が聞こえて来た場所に急行する。


 近付く程に血の匂いが濃くなっていく。

 それに何やら剣戟の音が聞こえて来るので、誰かが戦っている様だ。


 そして音の聞こえて来た場所に到着すると、3人の子供は無事でその周りには数多くの魔物の死体が横たわっていた。


 少し離れた所には全身を魔物の血で染めた真っ赤な服に、白く長い髭も血に染めた両方の手に斧を持つ恰幅のいい老人がいた。


 最後の一匹の魔物を倒した後は、こちらをチラリと見てからソリに向かう。


 クヴァルムが声をかける前にシカを駆けさせて大空に消えていく。



「夢を見てるのでしょうか?シカが飛びましたよ?あんな魔物は聞いた事がありません」


「ああ、だが今はそれよりも子供達を無事に連れて帰るぞ」


 それにしてももしかして?いや戦闘能力があるなんて聞いたことないぞ?あの真っ赤な服は血に染まったからなのか?


 頭の中の疑問は解消される事なく、子供達3人を無事に保護して村に戻る。



 村に着くと村人達に感謝された。


「あとであの人物について詳しく調査をしてくれ」

「はっ!」


 カーティルにあの両斧使いに付いて調べる様に命じた。


 村に帰る途中雪がチラホラと降り始めた。


「やけに寒いと思ったら雪か」


 城に戻るとクヴァルムは捜索に参加した者達に、温かいスープを振る舞い一杯だけなら酒を許した。



 そしてその日は疲れたので早めに就寝した。




 …………

 ………

 ……

 …


 早めに寝たせいか夜中に目が覚めてしまう。


 丁度喉が渇いていたので水差しからグラスに水を注ぎ、飲んで渇きを潤す。


「ふぅ、さてどうするか。まだ夜中だし眠るかな」と思った時窓の外に空を駆けるシカの姿が映った。


 急いで外に出る。


「あれはやはり……ん?でもあれはトナカイをがソリを引いていたけど?ここではシカなのか?異世界だからか」と疑問に思ったが、まあいいかと思ったら急に睡魔が襲って来て、気が付けば朝になっており枕元に箱が置かれていた。


「何だ?」


 中を開けて見ると暖かそうなカシミアで出来たセーターとマフラーが入っていた。

 そして一枚の手紙が添えられており中を開けると『Merry Christmas』と書かれていた。


「な!どう言う事だ!」


 慌てふためいていると、コンコンコンと部屋がノックされてリーゼとアールがやって来た。


「どうしました?」


「いや、何でもない。それでこんな朝早くからどうした?」


「はっ!何でも何者かが、民家に入り中にプレゼントを置いていたようです。犯人の目的は不明ですが、誰も何も盗まれてはいないようですが、被害者と言っていいのかその数は子供のいる家庭全ての家です」


「やはり奴は」

 とクヴァルムは思案する。



 ………

 ……

 …


「………様」

「………様!」


「ユウマ様!」


 肩を揺すられて起きると、目の前に心配そうなリーゼの顔があった。


「ん?寝ていたのか?」

「はい。疲れが溜まっているのでしょう。今日はお休みになられては?」

「ああ、そうするか。それと民家に侵入した者の事だがな」

「何の事でしょうか?」

 不思議そうにリーゼは首を傾ける。


「ん?そう報告して来ただろう?」

「いえ、その様な報告は上がっていません」

「何?ではあれは夢だったのか?」

「やはりお疲れの様ですね」

「その様だな」


 椅子から立ち上がり伸びをすると窓の外は雪景色であった。


「いつの間か降って来ていたのだな」

「はい。この地方はそこまで豪雪にはならない様です」

「そうか」


 その時空を駆けるソリが見えた気がしたが気のせいだろう。

メリークリスマス!

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