112話〜第一次蛮族討伐戦〜
翌朝早くから起床して、手早く身嗜みを軽く整えてから外に出てストレッチをした後軽くジョギングする。
十分に身体が温まってから素振りや型稽古をする。
朝の鍛錬が終わる頃には、殆どの兵士が起床して朝食の準備をしている。
クヴァルムは村長宅の裏手の井戸で行水をして、汗を流してたら何処からともなくメイドが現れ、身体をタオルで拭いてくれる。
彼女らは戦闘型では無いが、魔導人形であるためにそこいらの兵士よりも圧倒的に強いので護衛も兼ねている。
初めは山に連れて行くつもりは無かったが、アールの説得の彼女らの懇願により同行する事が決まった。
タオルで体を拭かれた後は、用意された服に着替える。
村長宅に戻り用意されている朝食を食べる。
食べ終わるとそれを見計らったかの様に(実際には見計らっていたのだろう)アールが現れる。
「おはようございます。主様」
「ああ、おはようアール」
「早速で恐縮ですが、登山ルートの確認などをしたいので、部隊長を集めてもよろしいでしょうか?」
「構わない。早速呼んでくれ」
「ありがとうございます。すぐに呼んで参ります」
五分と掛からずに全ての部隊長を連れて戻って来たところを見るに、既に呼び集めて居たのだろう。
相変わらず手際が良い。
クヴァルムが関心している間に、テーブルには地図と駒が置かれて行く。
黒い駒が蛮族、白い駒が自軍である。
「見事にバラバラだな」
黒い駒を見てクヴァルムはそう呟く。
「はい。ある程度ひと塊りになっている方が此方も楽なんですが。一箇所に誘引しますか?」
「それだとどのくらいの時間がかかる?」
「余分に一週間程度はかかるかと、しかし兵の損害は少なくてすみます」
時間を取るか、犠牲を許容するか。
あまり長いこと蛮族に拘っている暇はない。
防諜網が万全とは言え、いつまでも人の口に戸は立てられない。
次第にクヴァルムが不在が知れ渡るだろう。すると良からぬ事を企む輩が一定数は現れるだろうな。
だが、急がば回れと言うしな。
「この場所まで周辺の蛮族を集めよ。この地に最大限の罠を張るぞ」
「畏まりました」
その後集まった部隊長達と仔細を詰めて行く。
「では、各自行動を開始してくれ」
早速囮となる者達を選抜して山に向かって出発する。
他の者は罠の設置に向かったり、周辺の地理を確認したりと動き出す。
それから二時間ほど待つと連絡が来る。
「予定通り囮部隊が蛮族の誘引に成功しました。更に異なる部族が衝突して勝手に争う副次効果も齎しています。既に予定地点には部隊を潜ませて居ますので、あとは蛮族がやって来ればおしまいですね」
「そうか。ならば我々も行くとするか」
「畏まりました」
クヴァルムも馬に乗り予定地点に向かう。
蛮族はある程度間引いたら隷下に加える予定だ。
彼らの馬上技術は卓越しており、馬上から正確に弓を射る事が可能である。
これは先々の事を考えると是非とも欲しい戦力である。
罠が張ってある場所に到着すると、そこは行き止まりになっている場所である。
山間部なので道は入り組んでおり、下から見たら行き止まりには見えない構造である。
暫くするとドドド!と馬の足音が聞こえて来る。
上に登れる様に掛けてある木の橋を登り、囮部隊が全員登りきった後に木の橋を回収する。
そして囮部隊が登りきった後すぐに蛮族が大挙して押し寄せて来た。
先頭は行き止まりになっているとわかって止まったが、後ろから次々と押し寄せて来る味方により壁に押し寄せられて、そのまま圧死して行く。
行き止まりは広場の様になっており、蛮族が全員中に入った事を確認してから、入り口付近に岩を落として退路を断つ。
クヴァルムが右手を上げで下げると、一斉に各所から矢の雨が降り注ぐ。
蛮族は軽装の為次々と矢に射られて倒れて行く。
ある者は馬を盾に、ある者は死んだ仲間の下に潜り込む。
10分ほど矢の雨が降り注いだ所で一旦停止させる。
そこでクヴァルムは一歩前に出る。
そのクヴァルムの周りには盾持ちのゴーレム兵が、いつでもクヴァルムを守れる位置に付く。
「降伏せよ!さもなくば殲滅する!10分ほど猶予を与える!諸君らが賢明な判断を下す事を願っている!」
それだけ言いクヴァルムは後ろに下がる。
10分も待つ事なく次々と蛮族達は降伏して来る。
「思ったよりも上手くいったな」
「はい。蛮族達はどうやら腕っ節がものを言う、野蛮な考えの人種の様ですね。素直に強者に従う反面。上の者が隙を見せればたちまち成りかわるでしょうな。ですから常に強者であらねばならないのは大変ですが、その分上の者の命令には絶対遵守ですから一度掌握すればあとは楽です」
「なるほどな」
クヴァルムの軍はこの調子で次々と他の部族を降して行った。
数日かけて多くの部族を降伏させ、残るは最後の部族だけである。
その部族は山頂部を拠点にして居るので、目指すは山頂である。
「あとは山頂付近に残る女子供達だけか?」
「はい。ですが蛮族から気になる情報が入りました。何でも呪術師と呼ばれる者がいるとか」
「それは魔法とは違うのか?」
「彼らの説明では要領を得ず、何を言いたいのかは何となくとしかわかりませんでした」
「それなら仕方あるまい。十分に注意する様に各隊に伝えよ。それに我々はまだ広い山の世界の一部しか支配して居ないからな。取り敢えず領地に近い部族はこれで全て降したが、まだ奥の方には無数の部族が居ることがわかって居るからな。そちらの対処は落ち着いてからだな」
「畏まりました」
クヴァルムが率いるバトランタ軍は順調に進軍し、山頂部を包囲する形を取る。
逃して抵抗勢力を築かれ為の処置である。
バトランタ軍に加えて投降した蛮族も加わり、現在の兵力は一万を軽く超えて二万に届く勢いである。
聞いた話によると、蛮族は女子供も戦えるので部族全体で戦う事も出来るらしい。
「いよいよ、一旦蛮族の事はこれで終わりだな」
「はい。後処理がありますが、大方はこれで終わりですね」
そしていよいよクヴァルム達は大詰めに掛かる。
四月から忙しくなり、投稿ペースが月一も難しくなりそうです。
出来るだけ月一は投稿する様に心掛けますが、間が空きそうです。




