11話
扉を開け中に入るとまず目につくのは屈強な男達である。
野党の様な格好の人や騎士の様に全身鎧の装備など様々な姿形の冒険者がいた。
横は酒場が併設している。
そこでは次の依頼の作戦会議をしている者や
依頼帰りで祝杯をあげているもの、ただ単に飲みにきただけの輩も見受けられる。
ギルドの受付は広く銀行見たいな感じでロビーでは立て札を持った、冒険者や依頼者が椅子に腰掛けている。
「ユウマさん私達も立て札を取って待ちましょう」
「わかりました」
ロベルトの提案に素直に同意し立て札を取り椅子に腰掛けて辺りを見渡した。
受付は主に3つに別れている。
1つは依頼を受注する場所。
もう1つは依頼を発注する場所だ。
最後の1つは依頼の完了報告と魔物の素材や薬草の買取場だ。
暫くそうして見渡していると立て札の番号が呼ばれ自分達の番だとわかると立ち上がり受付に向かった。
ギルドの受付嬢は皆綺麗であった。
自分達の受付嬢は猫系の獣人なのか頭の上に猫の耳があり、髪は栗色で肩の辺りで切りそろえてあり目はぱっちりとして、可愛らしく顔立ちは綺麗と言うより可愛らしい。
服装は赤のベストに中に白のカッターシャツを着て首元には黄色のリボンをしていた。
下は受付の台で見えないが奥の女性職員を、ちらりと見ると上が同じ服装で下が紺色のスカートを履いていたので同じだろう。
まずはロベルトが受付嬢に自分の護衛の冒険者の事を報告した。
「そうですか、わかりました。彼らの財産は生前の契約に基づき孤児院に寄付させていただきます。」
冒険者はもし自分が死んだ時の為にギルドで手数料を払えば、自分の財産を指定の相手に渡す様にする事が出来る。
手続きをしていない場合はギルドの維持費などに使われる事が多くその事を登録時に事前に了承した貰う。
「ありがとうございます。それと此方のユウマさんの登録をお願いします」
「かしこまりました。えっと確かここにあっ!あった、あった」
思わず素の話方になっていた事に気付いた受付嬢は顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。
それを見かねた先輩受付嬢らしき女性が後ろからやってきた。
「リリア何してるのよ。しっかりしなさい、申し訳ございません。」
先輩受付嬢らしき女性はそう言い此方に頭を下げた。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
ロベルトは親が子を見る様な目でリリアと呼ばれた受付嬢を暖かく見守りそう告げた。
「カーシャ先輩すいません」
「私にじゃなくて此方の方々でしょうが、もう仕方ないわね焦らずゆっくりやりなさい」
どうやらリリアは新人らしく、まだ慣れていなくて申し訳ないと、カーシャと呼ばれたエルフの受付嬢に言われたので、此方はそれに笑顔で「大丈夫です。別に急いでいないのでゆっくりと慌てないでください」
それを聞いた、リリアの表情が、ぱあっと明るくなり「あ、ありがとうございます」
と頭を下げた。
「えっと此方の書類をよく読み理解されましたら此方の登録証に記入してください」
「あと代読、代筆は必要でしょうか?」
「?いや大丈夫ですよ」
この世界は識字率がそれほど高くはないのかな?
まあいいか今はそれよりもこっちだなそう思い書類に目を通した。
差し出された書類には依頼での生死にはギルドは責任を負わない。
冒険者同士の諍いや争いには介入しない。
犯罪行為の発覚時はギルドから除名しブラックリスト入りの他犯罪行為の規模により賞金がかかる。
またギルドの緊急招集の場合速やかに集合すること。
招集の拒否は相応の理由(例えば怪我または病気の為にまともに動けない場合)がない場合は、ギルドランクの降格と罰金または罰則が掛けられる。
以上の事柄に同意する場合は此方にサインをされたし。
書類に同意としてサインをした。
ここでユウマはある疑問が浮かび上がった。
今まで言葉はただ単に日本語が通じていたので同じ言語なのか、と漠然と疑問に思っていたが、書類の文字は今まで見たこともない様なものだった。
じゃあなんで言葉が通じてるんだ?
異世界補正か何かか?
うーん考えても埒があかないからこれはそういうものだと理解するしかないな。
まあ別に理由がわからなくても困らないし逆に通じて良かったしな
そう思考をポジティブに考え次の問題は俺の字が通じるかだよな?
まあとりあえず書いてみてダメだったら代筆を頼めばいいか
記入事項は名前と職業だけだった。
名前はただ単にユウマだけにしたステータスと唱えると名がユウマだけになっていたからだ。
「この職業というのはその1つまでなんでしょうか?」
ユウマの質問にリリアはキョトンとしどう言えば良いのか迷ったのか頭から煙が出てきそうだ。
それをみたカーシャがフォローに入った。
「そうですね、よくご存知ですね。ランクやレベルの高い冒険者ならご存知ですが、駆け出しの人たちは皆知らないですからね。その通りです。職業は基本は1つ何ですが魔物を倒したり修練を積んだりして、ある一定のレベルに達したときに、頭の中に自分がなれる職業が頭の中に急に出てくるそうです。残念ながら私はそこまでレベルが達してないのでわかりませんがね」
最後は茶目っ気たっぷりに言った。
「で頭に浮かんだ職業を選択の玉に手を当てて念じると成れます。まあこの選択の玉はギルドにもありますので安心してください。あとは教会ですかね。まあ殆どの人は大体生まれた時に最初の職業は決まってますけどね。時々決まってない人は後で強力な職業に就けるかはたまた何の職業も就けないかのどちらかですからね」
「まあ最初の職業は大体が、村人とかそんな感じですから後で、冒険者になって選択の玉で変えるか教会で変えるかはたまたごく稀に勝手に変わるかですかね」
「まあ、勝手に変わると言っても例えば村人で魔物と日夜戦っていると、職業が戦士に変わっていたなどはざらですし。職人はだいたい鍛治師なら鍛治をしてるとなったりしますからね」
「まあ例外が聖職者ですかね。彼らは特殊な儀式でないと成れませんからねただその儀式は秘匿されてるので教会員に、ならないと無理ですけどね」
聖職者は呪いの浄化や回復魔法を使える。
魔法使いも回復魔法を使えるが、それは初級回復ぐらいの為聖職者はパーティーに1人は欲しい所だ。
その為教会は下手な国より権力がある。
教会がその国より撤退してしまうと衛生面でとても困り重傷者、重病者が出ても治療が出来ずにそのまま死を待つばかりだ。
薬師もいるにはいるがやはりそれは高位の回復魔法には及ばない。
その為教会は外交特権などをもち不可侵の存在だ。
過去に教会を支配しようとした国がいたが、教会はそれに対抗してその国から撤退しその国のギルドにも協力要請を出した。
ギルドもある意味不可侵の存在であるギルドが無ければ魔物の脅威に立ち向かうには軍が出撃しなければ成らずその為に、力を注ぐと国の防衛力が著しく低下し国庫も出撃する事に圧迫していくので、段々と国力が衰えいざ他国と戦争になった場合とても厳しくなる。
それ以外にもギルドは様々な素材を市場におろしてくれる為必要不可欠な存在だ。
教会から要請を受けたギルドもその国から撤廃した為にその国は滅び去った。
何故ギルドが教会からの要請を受諾したのか?それはギルドには教会が必要だった為だギルドと教会は協力関係にある。
教会はギルドに一定数の聖職者を冒険者登録させ。冒険者の死亡率の低下を担っている。
教会はその代わりギルドから優先的に儀式などに用いる素材の入手などをしているため両者は共存共栄している。
だが教会は国に依頼して素材の確保をしたらいいと過去に教会の幹部が考え実行した所、その目論見は失敗に終わり教会は多くの負債を一時抱えた。
それは軍が動くのには金が掛かる為その資金を教会も出し失敗に終わった為だ。
成功すればその資金は倍になり返ってきて必要な素材なども手に入っただろうが、普段国の軍はもっぱら対人戦が主流で魔物は冒険者が受け持っていた。
軍にも一部の部隊は魔物退治などに当たっているが、大半の物は対人戦しか経験したことがなく、目的地に着く前に多数の魔物に襲われて半ば全滅して帰還してきた。
その為多くの人命や資材、食料が失われその国は立ち行かなくなり一時は滅びかけたが、冒険者ギルドや商人ギルドのお陰で立ち直った為、それ以降他国での冒険者ギルドや商人ギルドの格が上がりなくてはならない存在だと、認識されなかば不可侵じみた存在になった。
この経緯があり、その当時の幹部は処罰され教会は冒険者ギルドと協力関係を確固たる者とし、以降この関係が壊れることはなく今現在も続いている。
「まあこう言う訳ですよ。宜しいでしょうか?」
カーシャの問いかけにありがとうと言い登録証に職業を書き込んだ。
「ありがとうございます。え〜と次はん?ええっ?!」
ユウマが書き込んだ登録証を見てリリアが突如大声を出した
「ちょっ!?リリア何騒いでるのよ」
リリアの大声に辺りにいた人々が一斉に視線を向けた
「先輩これみて下さいよ、ねっねっ!」
「わかったわよ、その前に皆様大変お騒がせ致しました申し訳御座いません」
カーシャは、立ち上がり優雅に一礼した。小声でリリアにも促しリリアも、慌てて立ち上がり深々と一礼した。
「ふぅどれ見せてみなさいな」
リリアから書類を受け取ったカーシャは目を見開き「えっ?えぇぇぇ!?」と、大声を出しまた周囲の注目を浴びた、その声に奥から上司が飛んできて2人の頭にそれぞれ拳骨を落として、2人の頭を押さえつけ「皆様大変お騒がせ致しました申し訳御座いません」と深々と頭を下げた。
その行為に周囲は呆気に取られたが、直ぐに興味を失ったのかそれぞれの作業や会話に戻っていった。
そして周囲にいつも通りの喧騒が戻ったのを見計らいロベルトとユウマに向かって、上司はもう一度「申し訳御座いませんでした」と深々と頭を下げた。
横目でギロリと2人の受付嬢を見据えると2人は慌てて頭を下げた。
この上司の人族の男性の見た目は筋骨隆々で身長は2メートルちかく、とてもギルド職員には見えず顔も強面で頬に切り傷があり余計にその迫力を際立たせている。
それに盗賊の親分ですと紹介されたら、納得しそうな妙な迫力がある。
それもただの盗賊ではなく大勢の子分を従えた大盗賊団の頭領のだ。
だがそう呼べないのはこの男性は見た目にそぐわず所作の1つ1つが洗礼されており顔は柔らかな微笑みを携えているからだろう。
だが今はその顔には青筋が浮かび上がっており気の弱いものなら卒倒しそうなほどの迫力がある。
現に受付嬢のリリアは泣きそうな顔になりカーシャは顔が青白くなっている。
「ではお二人方は申し訳御座いませんが別室でお話しさせて頂けませんでしょうか?」
それは一件提案の様に聞こえるが拒否は許さんというオーラが身に纏っていた。
ロベルトとユウマは冷や汗を流しながら断ったらやばいと本能的に察したのか2人同時に「「わかりました」」と答えた。
「ありがとうございます。申し遅れました私はこの受付の監督を任せて貰っています。グンナイと申します以後お見知り置き下さい」と一礼し後ろを振り向き「ミナすいませんがここの受付をお願いします」ミナと呼ばれた女性が駆け寄ってきて「はいわかりました。と敬礼した」
この行為にロベルトとユウマは、逆らってはダメだと思った現にリリアとカーシャは直立不動の姿勢になっており、断頭台に連れて行かれる囚人の様な思い空気を身に纏っていた。
「では参りましょう、こちらです」とグンナイは2人を誘導して歩き出した。
リリアとカーシャはそれに続いて姿勢正しく歩き出しロベルトとユウマもそれに続いた。
周りの視線は憐れみを帯びており幾人かの職員は敬礼をして見送ってきた。
普段は陽気な冒険者達もこの時ばかりは静かになりじっと一行を見守った。
ユウマは内心今直ぐにでも逃げ出したかったがそんなこととても恐ろしくて出来なかった。
ロベルトが小声でユウマに「確かグンナイさんは昔はAランク冒険者で巨鬼のグンナイと呼ばれて恐れられていたらしいですよ。普段は温厚らしいですが一度怒るととても恐ろしいらしいです。確か先日ギルドの受付嬢にしつこく付きまとったタチの悪い冒険者がグンナイさんに注意され突っ掛かり別室に連れて行かれ戻って来たら、顔色がとても悪く震えていたらしいですよ。それに以後態度が180度変ったそうでそれ以降グンナイの兄貴と呼び、依頼を真面目に受け困っている新人の冒険者にアドバイスしたり親身になって相談を受けたりしたそうです。それにグンナイさんを兄貴と呼び敬っているそうです」
それを聞いたユウマはどんな事をされたらそんな人格が変わるんだと恐怖を抱いた。
そういえばグンナイさんが出てきた時冒険者の幾人かが、グンナイさんに敬礼していたなと思ったが、それはただ単に見た目が恐ろしいだけではなく折檻された者もいたのだろう。
二階に上がり曲がり角を曲がって、その先にある部屋の扉の前でグンナイが振り返り「こちらの部屋で事情を聞きます、私はギルド長に少しこの部屋を使う使用許可を取ってきますのでこの中でお待ちください」といい身を翻して来た道を戻り三階に上がって行った。
残された4人は、無言で部屋に入りロベルトとユウマはソファに腰掛けたが、リリアとカーシャは対面のソファの後ろ立ち不動の姿勢を維持した。
「あの、座らないんですか?」
ユウマが、声をかけると。
「いえ、大丈夫ですこのままでお願いします」と懇願に近い声色で頼まれたので黙って頷いた。
しばらく待っていると足音が聞こえ段々と近づいてきた。
そのあとに2人の受付嬢は見る見る顔を青くさせ今にも倒れそうなぐらいだ。
コンコン部屋をノックする音が辺りに響いた。
それにいち早くロベルトが対応した。
「どうぞ」
ガチャリと扉が開き、グンナイとその後ろから秘書らしき女性が、赤縁眼鏡をかけ長い銀髪の髪を後ろでシニョンで纏め、灰色のスーツでビシッときめて手にはバインダーを持って現れた。
「失礼します」
グンナイに続いて女性も挨拶した
「失礼します。秘書のクレミールと申します。今回は普段は騒がない受付嬢達が大声を出したので何かあるかと思われたグンナイ氏の要請で立ち会わせてもらいます」
リリアはまだ新人だから良いとしても、一人前のカーシャまで揃って騒いだため何か一大事が起こったと思ったグンナイは文書に纏めようと秘書のクレミールを呼んだ。
「ではまずはカーシャとリリア貴方達も対面のソファに座りなさい」
「ですがー」
「ーなんです?」
グンナイがカーシャの言葉を途中で、遮り告げると「何でもありません」と素早く対面のソファに腰掛けそれを見たリリアも慌てて座りそれを見た、グンナイとクレミールは対面のソファに腰掛けた。
「ではまずはリリア初めから答えて下さいね、何がありましたか?」
こうして詰問? いや質問が始まった。