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ゴーレム使い  作者: 灰色 人生
第3章〜領地開拓・勇者来訪編〜
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幕間〜槍の勇者アカリの独白〜

 

 この世界に来てからもう数ヶ月経ったのか。


 与えられた自室のベランダに出て、アカリは星空を眺めて居た。



 前の世界は大気汚染などにより、星は全くと言えるほど見えなくなっていた。


 だが、この世界はそんな事はなくとても綺麗である。


 まあ、星図が全然違うがそこは仕方がないだろう。地球と違う惑星なのだから。


 最初のうちはいきなり呼び出されて困惑したが、事態が飲み込めていくうちに恐怖よりも興奮が優った。


 皆まるでゲームの様なこの世界に来て楽しんでいたのだ。


 かく言う私も友達もよくオンラインゲームで遊んでいたので、いつかこんな世界に行けたらな。と思った事は一度や二度ではない。



 先生や一部の生徒は、何とか元の世界に戻れないから色々と調べていたが、私はそんな事よりも今を楽しみたかった。



 召喚された国はルパメント聖王国と言って、宗教色の強い国だったが、私達は勇者と呼ばれるこの世界の人類の希望らしくて、皆敬ってくれた。


 普段敬えられたりした事は無いので、新鮮で心地良かった。


 魔物という人類の敵も、ゲームのモンスターの様で最初はそれほど怖くなかった。


 実戦もダンジョンと呼ばれる場所で行った。


 倒された魔物の遺骸は残らず、アイテムだけがその場に残る。


 時々何も残さない時もあるが、大体はその魔物に特有のアイテムが残る。


 私は槍の適性があり、上達が早く前衛職として活躍した。



 レベルと言う概念があり、レベルが上がる毎に目に見えて強化されて行くのでとても楽しかった。




 地球ではどんなに頑張ってもすぐに効果は実感出来ないので、中々長続きしなかった私だけどここならば頑張れそうな気がしていた。


 そんな私に親友はルパメント聖王国はあまり信用出来ない。と注意して来たけどその時は聞く耳を持たなかった。



 でも、召喚されてから2ヶ月後私は此処がゲームでは無く、現実世界だと思い知る出来事が起こった。



 それは迷宮内での冒険者による襲撃であった。


 迷宮内と言う閉鎖空間では、度々タチの悪い盗賊と変わらない者たちが襲って来る話は聞いていた。


 だけど私達は勇者一行であり、更には聖騎士が護衛に付いて居てくれたので襲われる事は無かった。


 でもある日それは起こったのだ。



 いつも通りのメンバーで迷宮での鍛錬に向かった日。


 護衛の聖騎士の提案により、いつもよりも今回は一階層下の階層に潜る事にした。


 ある程度実力も付いて来ており、今の階層の魔物は十分に余裕を持って討伐出来る、実力は備えて居たので誰も反対派しなかった。



 そして下の階層で魔物を倒しながら、順調に進んで十字路に差し掛かった時に、何やら甘ったるい匂いがした。


 それを嗅いだ瞬間聖騎士達の顔は険しくなり、あたりを警戒し始めた。



 理由を聞くと「これは魔香と呼ばれる特殊な香です。魔物を引き寄せる効果があります。この魔香の使い方は、罠を張った場所に魔物を招き寄せて一網打尽にする為に当初は開発されましたが、悪用する者が後を絶たず禁物扱いされて、その製法は秘匿されました。現在でも持っているだけでも重罪になる、第一級指定危険物として扱われて居ます」と聖騎士は語った。



 その説明だけで全てを察した。


 何者かが私達に魔物を嗾けているのだと。



 そして左右の十字路から魔物が迫って来たので、急いで引き返そうと踵を返したが、そちらからも魔物が溢れ出して来た。


 前を向くとそちらからも魔物が押し寄せて来る。


 全ての道から魔物がやって来て、退路を断たれた状態に陥る。



 その後の戦いはまさに、命がけの生き延びる為の戦いであった。



 何とか魔物の大群から生き延びた私達だったが、皆少なくない傷を負い疲労困憊状態であった。


 そこへ武装集団が襲いかかって来た。



 警戒心が薄れた隙を突いて襲って来たので、対応が遅れた。


 護衛の聖騎士の一人が頸動脈を斬られて、そのまま倒れ伏した。


 私はパニックに陥った。


 今まで目の前で人が死んだのを見た事がなかったからだ。


 更に命の危険も感じていたので尚更だ。



 その後の事はよく覚えていない。


 無我夢中で槍を振り回した事だけ覚えている。


 気がつくと全身返り血塗れであった。


 その時初めて、此処が現実の世界だと実感できた。


 その後は無くなった聖騎士の葬儀を粛々と行う。


 後で聞いた話だと、襲ってきた彼らは迷宮を専門にする冒険者で、以前から素行が悪いと言われていた様だ。



 向こうは何度か迷宮で他の冒険者を襲っていた事が、生き残りを尋問……拷問して吐かせた様だ。



 あの事件の後、私に擦り寄ってくる神官達が胡散臭く思えた。


 今まではチヤホヤされて嬉しかったが、彼らの瞳が良く見れば欲望に濁っている事がわかった。



 私が次第に彼らから距離を取り始めると、ルパメント聖王国の者達も次第に態度が変わり始めた。


 それとなく周囲を見回すと、必ず監視の目が向けられている事に気付いた。


 私は今まで何て愚かだったのだろうと思った。


 この国は嘘と欲望にまみれた醜い国である。


 人類史上主義を掲げて、他の種族の人達を虐げている。


 私はこれまで気付かなかった。


 ……いや、見て見ぬ振りをしていたのだろう。



 私は親友のアゲハに素直に謝った。


 今まで何度となく忠告をしてくれていたのに、次第にそれが煩わしく思い、距離を取っていたのだ。


 アゲハはこんな私を笑顔で許してくれた。


 もう道は誤らない。と固く心に誓った。


 そして迷宮事件から2ヶ月後。


 私達勇者に各地へ出向く様に言われた。


 表向きは勇者のお披露目であるが、実際にはルパメント聖王国の影響力を増やす算段だろう。


 本当に薄汚い国だ。



 今回私が派遣される国は、差別も無く住み易い国だと聞いた。




 とても楽しみである。

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