108話
もう少し早く更新予定でしたが、体調を崩して更新が遅れました。
まだ万全ではないので、また暫く更新が遅くなるかもしれません。
王城の中でも、一番豪華絢爛な会場がパーティー会場として選ばれた。
これは勇者一行が居るからである。
もし居なければ、最低限の礼節を弁えた程度の会場であっただろう。
集まった貴族も、勇者と親睦を深める為であり、ルパメント聖王国側とは交流する気さえない。
それ程までにオルトメルガ王国はルパメント聖王国を敵視して居る証左である。
まあ、俺もルパメント聖王国は嫌いである。
早く力を付けたい。
そして早くアゲハと会いたいものだ。
◆◆◆
時は数ヶ月前に遡る。
ルパメント聖王国の大神殿で勇者召喚の儀式が行われた。
各地から奴隷を集めて、その命を捧げる事で足りない魔力を強引に規定量まで届かせたのである。
そうでもしないと、必要な魔力が圧倒的に足りなかったのである。
この事は勿論隠されて徹底的に隠蔽された。
ルパメント聖王国の住民は皆ルパメント教の信者である事もあり、隠蔽は成功したのである。
召喚された勇者は30名前後であった。
文献ではもっと少なかったが、多いに越した事はないので誰も気にしなかった。
そうして召喚された勇者達は国賓の様に丁寧に扱った。
そして少しずつ、少しずつ此方に都合の良い情報を与えて行く。
それから数ヶ月が経つ頃には、全員は無理だったが半数は完全に抱き込む事に成功した。
彼らはまだ若く未熟であり、欲しいものを与えてその欲望を刺激すれば、すぐに落ちた。
まあ、中にはそれでも堕落しない精神の持ち主達は居たが、そちらの対処は後回しにするしか無かった。
近頃、近隣諸国や遠方の国から非難声明が届いて居た。
理由は勇者の勝手な召喚である。
なので五月蝿い他国を黙らせる為に、勇者の派遣を決定した。
勇者が完全に此方側に居ることを証明する為にだ。
近隣諸国には完全に抱き込んだ者達を向かわせて、遠方の国々には完全に此方側の者とそれ以外の者達を混ぜて送った。
そして護衛の名目で監視要員付きである。
こうして各国へと勇者は次々と派遣されて行った。
◆◆◆
シャルロットが会場に行く道すがら、ホルセは最終確認を行う。
「さて、我々第一部隊の今回の役割は身辺での警護に当たる。他の部隊員も近辺に配置されて居るが、その中でも我々の部隊が1番近くに配置される予定だ。なので、より一層いつもより警戒を厳に行動する様に、何か不審なことがあればすぐに報告をする事、何より姫様の身の安全を第一に考えて行動する様に、例えこの中の誰かが危機的状況に陥っても、姫様を優先するように」
口調はいつもと変わらないが、目が真剣そのものであった。
皆頷き覚悟を固める。
それほどルパメント聖王国はぶっ飛んだ国なのだろうか?
疑問に思ったが、一応覚悟は決めておく。
いよいよ会場の前に着いた。
この扉の先に勇者らや、ルパメント聖王国の者達が待って居るのだろう。
扉が開かれて中へと入る。
俺たち護衛騎士団は壁際で待機する。
………
……
…
パーティーは問題なく進み一旦小休止を挟む。
その間に少しだけトイレと言い抜ける。
パーティー会場から少し歩いた部屋の中へと入る。
そこにはクヴァルムが呼んだ魔導人形が居た。
その傍らには気絶したルパメント聖王国の関係者が横たわって居る。
「御苦労。よく捕らえてくれた」
労いの言葉を掛ける。
「いえ、ありがとうございます」
静かに隠密型の魔導人形は頭を下げる。
「では、時間もあまり無い事だし。手早く済ませるとしようか」
使役のスキルが上がり、遂に人にも効果を及ばす迄になって居た。
一人だけにしか効果は無いが、完全に使役する事が可能になった。
勿論レベル差なども関係があるので、そこまでレベルが高くなく、ステータスも極普通のルパメント聖王国の人間を選んで拉致した。
横たわっている男に使役を使用する。
するとパスが繋がった感覚が出来る。
どうやら問題なく使役出来る様だ。
しれっと男をパーティーに戻す。
男は使役されている自覚は無く、通常通りに振る舞う。
それを確認してからクヴァルムも護衛としてパーティー会場に戻る。
その後パーティーは恙無く終了した。
残念ながら勇者四人とは接触する事は出来なかった。
だが、焦っては功を為損じると言う。
じっくりと機会を待つ。
まだ此方の準備は完全には進んでは居ない。
これが終わったら、武者修行の旅に出ないと行けないな。
今の実力ではルパメント聖王国に向かう事は出来ない。
護衛騎士団にはローテーションで休みが与えられる事になった。




