幕間2
--冒険者マイク--
マイクは冷静にハウンドウルフと彼我の戦力差を分析した。
馬はハウンドウルフが現れて吠えた事により恐慌状態になり荷馬車に体当たりして固定具を壊して逃走した。
普段通りのちゃんと躾けた馬なら今のことぐらいでは恐慌状態にならないはずだ。
途中の街に立ち寄った時に馬が急死しそこで買った馬だったことから嵌められたと思った。
急死した時は詳しくは調べられなかった。
その馬小屋の主人が病気がうつると大変だからと、調べさせてはくれず新しい馬をタダでやるから勘弁してくれと言われたから、訝しつつも出来るだけ早くウラカに着きたかったため承諾したのがいけなかった。
ハウンドウルフは本来この辺りには生息していない魔物だ。
一体や二体ならはぐれかと思うが群れ単位なら何故だと疑問がてでくる
始めは縄張り争いに敗れて逃れてきた線もあるが見る限り傷らしい傷もないし
餌を求めて流れてきた感じでもないな
そういうと残る候補は魔物使いか!?
たが魔物使いは希少な職業だ。
こんな街道で盗賊紛いに俺たちを襲わなくても充分に食べていける
貴族や軍に重宝される職業だ。
ただしアルデラ神国を除く。
彼の国はアルデラ教が広く信仰され魔物等の悪しき存在や下等種と見下す亜人等強く拒絶するため、魔物使いは悪魔の手先などと言い神の名の下にと裁かれることが度々ある為、あの国では魔物使いは生きてはいけない為だ寄り付かない。
という事は誰かに依頼されたのか確かに魔物使いならば例えこんな事をしてもただ単に魔物に襲われた様に偽装するのは、簡単なことだ何故なら襲うのは魔物で本人は森の中からなどに隠れていれば特定される事もない。
この事から誰かの差し金だと結論付けた。
ん!あれなハウンドハイウルフか!?
あんなのまでいるのかよ!
こっちは漸く駆け出しから抜け出す半人前が4人に俺1人これは分が悪すぎるぜ。
どうする逃げるにしても奴らは足が速えすぐに追いつかれて後ろから襲われるだけだ。
まだ街からも遠いから救援は望めそうもねぇ
奴らの内枠はハウンドウルフ17体にハウンドハイウルフ1体か
ぬ!動くか!
「オメェらくるぞルッツ、ダイノの前衛2人は盾を構えて奴らの攻撃を防げ!バットはみんなに支援魔法をそれで適宜回復魔法、ガイは荷馬車の上から弓で援護しろ!」
マイクの号令に一斉に動き出した。
「ロベルトさんはそこから動かねぇでじっとしててくれ」
そう告げ自身も背中からバトルアックス引き抜き構える。
そのタイミングでハウンドウルフたちは三手に分かれて襲ってきた。
ハウンドハイウルフに引き連れた中央8体に左右に5体ずつ分かれて迫ってきた。
ちっ!分かれたか「ルッツは左、ダイノは右の奴らを受け止めろ!」
まず先頭を走ってくるハウンドウルフ達に向かってアーツ(アーツとは職業が戦士等の前衛系の職業が自身のスキルのレベルごとに覚える技である)
「オラァァ![ショクウェーブ]」
マイクの体から赤い闘気がでそれが武器に纏わりつきそこから前方に向かって衝撃波を放った。
ハウンドハイウルフは素早く反応して横に交わしたが、その後ろを疾走する3体がまともに受け後ろに大きく吹き飛び残りの4体は辛うじて交わしたが、完全には避けきれず衝撃でふらついている。
その隙をマイクが見逃すはずが無く素早く手前の一体に近づきバトルアックスで首を刎ねた。
その後すぐさま横にいたもう一体の頭を刎ねたところで、ハウンドハイウルフが接近してきたので素早く身を翻して距離を置いた。
チラリとその後方を見ると先ほど吹き飛ばした3体も戻ってきた。
その3体の内1体は口から血を流していることから内蔵を痛めた様だ。
もう2体は左のほうが右前足を引きずっていることからどうやら折れているらしい。
最後の1体は軽く頬に擦り傷がある程度だ。
後の2体もどうやら回復した様だもうふらついた様子はない。
油断無く見据えていると突如斜め後ろから悲鳴が聞こえた「グァァァ」
その後に「「「ルッツゥゥ」」」と叫び声が聞こえたのでルッツに何かあった様だ
一瞬後ろを振り向いた瞬間ハウンドハイウルフが飛び出し、牙を剥き出して噛み付いてきたので咄嗟にバトルアックスを盾にして難を逃れた。
そして今度はもう少し距離をとり充分に注意を払い後ろを振り返ると、ルッツが首から血を流して倒れていた。
その近くには腹を切り裂かれた倒れているハウンドウルフがいることからどうやら相打ちしたらしい、残りの4体の内2体は矢による攻撃で死んでいて残りの2体がガイに向かって駆け出していた。
ガイは焦りからか狙いを大きく外している。
それを見たダイノが堪らず助けに駆け寄ろうとするとそれを邪魔する様に、ダイノの進路上にハウンドウルフが走り出し道を塞いだ。
ちっ助けに行きたいのは山々だがこいつらが邪魔で行こうにも行けねぇ
マイクは次第に焦りだした。
バットはガイに接近するハウンドウルフを邪魔しようと初級魔法を放ち牽制している。
ダイノは邪魔するハウンドウルフの内1体をなんとか斬り伏せたがまだ4体も残っていて身体のあちこちから血を流している。
「バット回復魔法をかけてくれ!」
「わかった!」
ダイノに向かって回復魔法をかけようとするバットに向かって先ほどまでガイに向かっていたハウンドウルフが進路をかえ迫った。
「バット後ろからハウンドウルフがきてるぞ!」
ガイは必死に矢を放ちながらバットに忠告したが時既に遅くもうバットに飛びかかる寸前だった。
バットは咄嗟に懐からダガーを引き抜き飛びかかるハウンドウルフの喉を切り裂き、もう一体はガイの矢が目に突き刺さり仕留める事に成功したが、ダイノに回復魔法を施す事が出来ずダイノは倒れ伏した。
「「ダイノォォ」」
その後残った4体がバットに襲いかかった。
ガイは矢が尽きたのか弓を放り投げ腰に差している短剣を抜きバットに向かって駆け出した。
マイクも助けに行きたいが目の前のハウンドウルフとハウンドハイウルフで手一杯だった。
マイクは傷だらけになりながら2体をその後倒し包囲網を突破し、ガイとバットの助けに向かったが時既に遅く2人は倒れ伏していた。
その後孤軍奮闘したが後数体倒したところで力尽き最後はハウンドハイウルフの手によって倒れ伏した。
--ロベルト--
ロベルトは荷馬車の物陰からマイクが倒れ伏したのを見て次は自分の番だと恐怖した。
残るハウンドウルフ5体とハウンドハイウルフが此方に向かって歩を進めて来た。
ここまでかと思った時1人の冒険者風の男が助けに現れた。
ここら辺では珍しい黒髪黒目の青年がやってきた。
ハウンドウルフは何かに反応した様に移動した時その場所が突如爆発した。
青年が何か魔法を使った様だ。
残りのハウンドウルフ5体の内その爆発で2体が死んだ様だ。
残りの3体も大小様々な怪我を負った様だ。
青年が此方を向き「おい!あんた今の内に逃げろ!」と呼びかけて来た。
私はさっきの馬の件で荷馬車の車軸が折れていて動こうにも動かせず、更に荷物にはとても大事な物が積んであり置いて逃げることもできないので、素直にその事を伝えると荷馬車の上にいろと言われたので従った。
その後はあっという間にハウンドウルフとハウンドハイウルフを仕留めた青年が近寄ってきた。
お互い自己紹介をした名前はユウマと言うらしく、その後暫く談笑して護衛の事を頼み引き受けてもらう事が出来てほっとした。
これが私はロベルトと不思議な青年ユウマとの出会いだった。
次からはユウマ視点に戻ります。