100話〜一騎打ち〜
漸く100話を迎える事が出来ました。
1時間後……
練兵場の真ん中には2つの人影のみがある。
2つの人影は互いに模擬剣を構え向かい合っている。
その二人を囲む様に騎士や兵士達が円状に配置している。
2つの人影の内一人は青髪青眼の逞しい身体つきをした騎士シュピッツである。
もう一人は金髪碧眼の爽やかな顔立ちをしたクヴァルムである。
その二人の元へ騎士団長であるビジランが審判役として進み出る。
「双方準備は良いか?相手が降参又は戦闘不能に陥ったと判断した場合其処で終了だ。魔法やスキルの使用は相手を殺傷しない威力に抑える事。良いな?」
ビジランは二人の顔を交互に見て準備が整ったかを確認する。
二人は頷き準備が出来た事を知らせる。
◆◆◆
「メリア。何方が勝つと思う?」
「そうですね。経験などはハンケル卿の方が一日の長があるかと。ただこの前の対軍演習を見た感じですとクヴァルム殿の方が能力は高そうに思いました」
「そうか。………ホルセはどう思う?」
「ハッ。私が思いますに確かにドゥーエ卿は団長が最初から第一部隊に配属を認めた事からも実力は高いと思いますが、殆ど人間との実戦は少ないと聞いて居ります。殆どが魔物の相手でありますので其処で足元を掬われる可能性も無きにしもあらずかと。対してシュピッツは確かに頭に血が上りやすく短気な感は否めませんが、いざ実戦となると冷静に対処する事が可能にする集中力があります。まあ、集中力が短いのが欠点ですので如何に集中力が持続している間に勝負を決めれるかが、鍵になるかと」
「そうか。わかったのじゃ」
それきり会話は無くなりビジランの合図を静かに待つ。
◇◇◇
「では、始め!」
ビジランの開始の合図と同時にシュピッツは自身最速の突きをクヴァルムに向けて放つ。
クヴァルムはステータスが上がる事で手に入れた驚異的な動体視力で見切り突きを交わす動作に合わせて下から模擬剣を振り上げる。
シュピッツは突きを交わされたことに焦らずに下から振り上げるクヴァルムの模擬剣を突きの動作から振り下ろしに変えて迎え撃つ。
だが、圧倒的な開きがあるステータス差によりシュピッツは何とか模擬剣を手放さずに数メートル先に弾き飛ばされる。
これには周りて二人の戦いを見守っていた騎士や兵士達が「おお!!」と驚きの声を上げるほどだ。
例えレベルが同じでも才能の差によりステータスに開きがある事は珍しい事ではないのでそこまで驚きではないが。
だが、現在のシュピッツは鎧姿なのでその分重量も加算される。
そのシュピッツも数メートルも弾き飛ばしたという事は思ったよりもステータスに開きがある証明となる。
弾き飛ばされたシュピッツ本人は驚愕を露わにしていたが、気を引き締め直して構え直す。
弾き飛ばした当のクヴァルム自身も軽く飛ばす程度に力を込めたつもりがまさか彼処まで飛ぶとは思っていなく内心では驚いていた。
だが、それを顔には出さずに平静を装う。
しかし平静を装うのが精一杯で追撃の事が頭から抜け落ちていたのが痛い。
先程追撃をしていたら驚愕に固まっていたシュピッツから一本取る事は容易であっただろうからだ。
現在のシュピッツは驚愕から立ち直り新たに気持ちを作り直しているので先程みたいに弾き飛ばされてもすぐさまに態勢を整えるだろう。
ふぅ。と1つ深呼吸してから静かにクヴァルムは模擬剣を正眼に構えて一歩ずつ距離を詰めて行く。
シュピッツも先程みたいに猪突猛進するではなく慎重に隙を伺いつつ距離を詰めて行きお互いの距離が2メートル程になった所でお互いに止まり円を描く様に時計回りに回り始めた。
シュピッツは模擬剣を上段に構え力負けしない様に遠心力を利用する事で対抗しようとする。
それに対してクヴァルムは中段に構え対処する構えだ。
どのくらいの時間が経っただろうか?
5分?10分はたまた数十秒しか経って居ないのだろうか?
まるで無限に思える体感時間の中で遂にシュピッツが切り込む。
模擬剣を振り下ろす様に見せかけて肩で体当たりをして来てクヴァルムの体勢を崩すのが狙いの様だ。
しかしまるで巨大な木に体当たりしたかの様にクヴァルムは不動を保ち逆にシュピッツがたたらを踏んでしまう。
その隙を突いてクヴァルムの模擬剣が喉元にピタッと突き付けられる。
そしてシュピッツは悔しそうに「……降参だ」と降伏を口にした。
「それまで!勝者ドゥーエ!」
審判のビジランの勝敗の決着を告げられ静かだった練兵場に歓声が響く。
「「おお!!」」
口々に流石は殿下がお認めになった騎士だ。やシュピッツも善戦した。
あの怪力はどうやって鍛え上げたものだ。
などなど近くの同僚と意見交換する。
シュピッツはクヴァルムに近付き「お前の実力を疑って悪かったな。これからよろしく頼む」と素直にクヴァルムを認めた。
これなはクヴァルムは驚き呆けた顔をしているとムッとした表情をしながらシュピッツが「負けを素直に認められないほど落ちぶれちゃあいない。初めは気に食わなかったがそれほどの実力を見せつけられては認める他ない。だが、まだ人間性などの部分はわかってないからこれからもしっかり見張っているぞ」と照れ隠しの様に言いながら手を差し出す。
それにクヴァルムも応えてしっかりと握手を交わして「ああ、貴殿にとちゃんと認められる騎士になって見せるよ」
「ふん。それと俺の事はシュピッツで良い」
「ならば私の事もクヴァルムと呼んでくれ」
「ああ、わかった。これからよろしく頼むクヴァルム」
「こちらこそよろしく頼むシュピッツ」
二人の握手する光景を見ながらシャルロットは隣にいるホルセに「これで彼奴の事は皆が認めるじゃろう」
「そうですね。そうだと思います」
こうして顔合わせは一波乱あったが、無事に終わった。
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