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ゴーレム使い  作者: 灰色 人生
第2章〜王都へ〜
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87話

遅れました。

 ◆◆◆◆◆



 対軍演習3日目の朝



 定宿にしている部屋で起き洗面所で顔を洗っていると、部屋の扉がノックされた。


 アールが対応するとどうやらロナテロからの朝食の誘いと今日の全体的な作戦について話し合いたいと言われたので服を着替えて指定された飯屋にアールとリーゼを伴い向かう。




 指定された飯屋に到着する。


 見る限り何処にでもある飯屋だ。


 てっきりまた高級な場所に招待されたかと思っていたので予想が外れた形だ。


 まあ、飯屋と言われた時点でこの可能性は予期していたが。


 中に入りロナテロの姿を探すと直ぐに見つける事が出来たので近寄って行く。


 するとこちらに気付いたロナテロが手を振りながら「こっちだ。こっち。態々呼び出してすまないね。お詫びと言っては何だけどここの料金は僕が支払うよ」


「それはどうも。しかし意外ですね。てっきりもっと高価なレストランなどだと思っていましたよ」


「はは、僕はこう言った庶民向けの方が落ち着いて好きだよ。ああいうお高い所は気取った感じがして肩肘張って疲れるからね。その分此処はそう言う気をあまり使わなくて良くていいものだよ」


 と、パンを食べながら説明する。



「クヴァルム君も頼みなよ」と言われたので給仕を呼び注文をする。


「それで今回は今日の作戦についてのお話だとか?」


「まあ、そうだけど今回は単純な力押しかな?この二日間の両軍の被害を比較して見ると東軍の方が被害数が少ないから此処は下手に奇策などをせずに真っ向から西軍を打ち破る腹積もりだよ。数は東軍が二千弱で西軍が一千強ぐらいかな」



「ならば態々呼び出さなくても文の一通や言伝で用が済んだのではないですか?」


「確かにね。だが、僕は西軍がそう簡単に正面戦闘だけで破れるとは思っていないんだよ。君の部隊には僕の差配で最初から戦列から外れてもらう。文句は出ないさ。何人かは君達を傭兵とバカにして同じ戦列に加わることを未だに嫌っている者達もいるから喜んで僕の提案に乗ってくれるさ」


「それでロナテロさんの狙いは?」


「もちろん東軍の勝利と貴族至上主義者達の目を覚まさねばならないからね。これからの時代は有能な者は貴族、平民関係なくその能力に応じた役職に就くべきだと僕は考えている」先程までの飄々とした態度から一変真剣な表情でロナテロは語る。



「それでクヴァルム君達は大きく戦場を迂回して敵の後方に回って欲しい」


「だが、自分の部隊は僅かに53騎ばかりですが?」


「わかってる。大丈夫だよ。君達に加えてカロラーナさんの騎兵部隊200騎を加えてた253騎だよ」


 それでも少ないと思うが逆にこれ以上多くだと迂回に気付かれる恐れもあるか。



「わかりましたよ」


「了承してくれて良かったよ」


「では、そろそろ会場となる郊外に向かうとしようか?」


「そうですね。リーゼ部隊を郊外に移動させといてくれ」


「受け賜わりました」





 ◆◆◆◆◆



 演習場に移動後………



 演習場には既に幾つかの部隊が到着していた。


「では、僕は行くよ」


「ええ、わかりました」


 ロナテロはガリバルス将軍達、上級将校達が集まっている場所に歩いて行った。




 手持ち無沙汰になったクヴァルムは演習場の地図を広げて今日の戦場の場所の予想をロナテロから教えられておりその迂回路(出来るだけ気付かれず安全に行ける道)を模索し始めた。



 アールとリーゼにも意見を聞き最適な場所を探し幾つかピックアップして行く。


 そんなクヴァルム達にカロラーナが近付いてくる。


「おはよークヴァルム君」


「おはようございます。カロラーナさん。今日は珍しく遅刻せずに来られましたね」


「私だっていつ迄も遅刻している訳ではないのだよ」


「何が《私だって》ですか隊長!私が起こさなければまだ寝てたでしょう!」とカロラーナの後ろから付いて来ていた一人の少女と呼べるほどに幼い女性が付いて来ていた。


「まあまあラクシーちゃん。そう怒らない可愛い顔が台無しと言うものだよ?」


「子供扱いしないで下さい!こう見えてもちゃんと成人してカロラーナ隊長よりも年上なんですから!」


 その言葉にクヴァルムは目を見開いて吃驚する。


 どう見ても12.3歳にしか見えない外見をしている。


「わかってるよラクシー副官殿」とおちゃらけた様子で告げるとラクシーは頰を膨らませて「馬鹿にしてますね。いいんですか?そう言う態度ですよ隊長が隠している秘蔵の酒がいつの間にか消えている事になりますよ?」


「な、何故その事を!?」


「何故って隊長が寝言で言っていましたよ?」


「えっ!?そうなの?」


「はい。それと隊長が水分補給の時に使用している水筒の中身が何かも知っていますよ?それに好きな小説のこととか……」


 カロラーナは目にも留まらぬ速さでラクシーの前で土下座した。


「すいませんでした!!!ラクシー様どうか、どうかお許しを!」


 悪戯な笑みを浮かべて「あ〜あ肩が最近凝っているなぁ〜」とわざとらしい態度をすると「良ければお揉み致しますよ」とカロラーナが低姿勢で近付きラクシーの肩を揉み始める。



「う〜ん。あまり上手くありませんね〜」


「す、すいません。頑張りますのでどうか、どうかお許しを」


「まあ、これに懲りたら私の事を馬鹿にしない事ですね」


「ははぁ!」



 何だこの茶番は?


 クヴァルムは呆れた視線を二人に向けていた。



 近くを通る騎士達は生暖かい視線を向けていることから何時もの事らしい。



「あ、あの」と声をかけるとゴホン!と咳払いして何でもない様に装い出した。


 ツッコムと面倒そうなのでスルーする事にする。





「それで何をして居たのかな?」


「ああ、今回の作戦についての最適路を確認して居たのですよ」


「ああ、そう言えば私達は別働隊だったなぁ」


「隊長?」とラクシーが咎める声を上げると「わ、忘れてた訳ではないよ!そのうっかりしてただけだ!」とことさら忘れていなかったと主張するカロラーナ。


 それを呆れを含んだ視線で見つめるラクシー。このままでは埒があかないとクヴァルムは咳払いする。


「ンッンッ」


「そうだ。今はこの後の作戦についての話をしないとね」と元気にそう宣言するカロラーナ。


 ラクシーは溜息をしたあと「そうですね。私は規定人数内に部隊数を絞って来ます」


「そうだね。それが良いと思うよラクシー」と嬉しそうに告げるカロラーナを睨みながらラクシーは去って行く。



「ふぅ。これで厄介な奴は居なくなったよクヴァルム君。では、作戦についての話し合おうじゃないか」と朗らかな笑顔で告げる。



 心の中で溜息をつきながらも作戦について話し合う。




 ◆◆◆◆◆




 十数分後………


「では、この様に動きましょう。良いですか?」


「うん、そうだね。これで行こう」と作戦が決まり配置位置に移動する事にする。


 その頃にはラクシーも部隊を纏めて此方にやって来ていた。



「演習開始時刻まで後一時間を切りました。作戦の最終確認の為にカロラーナ隊長とクヴァルム殿も本部に呼ばれております」とラクシーが告げたので本部に行き最終確認をした後所定の位置に移動する。








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