第12話 僕、狙われているみたい
深夜、誰もが寝静まっているであろう時間に僕は目を覚ます。
夕食を口に入れることなく空腹で目が覚めたのだ。
何かすぐに食べられるようなものはないかと空間に意識を向ける。ただ、そうしていてもベッドに寝転がり目を閉じている状態だ。
それを知ってか知らずかドアが音を立てずに開かれた。しかし、今の僕にとって音を立てなくとも誰かが入ってきたことくらいはわかる。
もしかして起きたのに気付いたのかな?
そう思って体を起き上がらせ、眠気の残る目を擦りながら焦点を定める。そして開かれた扉へと目をやると、そこに立っていたのは目を見開いた見知らぬ男性が数人立っていた。
彼らはこそこそと小さな声で話し合い、何がしかの結論を出したのか足を踏み入れる。
近くまで来た彼らを見て思わず目を見開いた。
そこに立っていたのは継承権を持った3人だったのだ。何をしに来たんだろう?と思っていると、相手側からおもむろに口を開いた。
「お前は、龍王をなりに来たのか?」
質問の意味が分からず首を捻ると、彼らは僕に聞こえない程度の声で再度話し合いをして、別れを口にして部屋から出ていった。
「本当に、なんだったんだろう?」
その呟きは夜闇に包まれた部屋の中に、響くことなく静かに消え去った。
夜が明け、世話役が部屋に入ってくる。
もう、この生活には慣れたものだ。言われるがまま、なされるがままにして朝食に向かう。
一つ違うのは世話役の人数が増えたことくらいだろうか。
僕が国民に知れ渡ったことで本当に正式な継承者となったのだろう、とあたりをつける。
「おっす」
食堂に入るとヴィヴィットが挨拶をする。それを返しながら、深夜にあった出来事は現実だったのだろうか、夢ではなかったのかという思いが込み上げる。
それから続いていつも通りに挨拶が交わされるものだから、油断していた。
「んぅ!?」
食事を口に運んだ瞬間、口の中が途端に痺れる。
すぐに口に含んだ物を吐き出して咳きこんでいると、他の継承者たちはチラリと様子を窺っていたけれど僕のことを意に介さずに食事を続けている。
彼らの食事には何もなかったのか?
その疑問は虚空へ消え去り、世話役が慌てて別の食事を持ってきて今度は毒見をしてくれる。
今まで毒見なんて誰もしていなかったから本当に油断していたと言っていい。他の継承者たちは皆毒見をしてから食べているというのに。
そんなことがありながらも無事に食事を終えた。
毒を食べても平気だったのは龍飽をしていたからだろう。これが龍飽の効果なのか、と安心してこれからも過ごせそうだ。
それにしても、誰がこんなことをしたのかという疑問が沸き上がる。
このようなことがあるのは王位継承に繋がることなのだろうけど、継承者たちとはそれなりにうまくやっているつもりだし、そもそも狙われる理由なんてないはずだ。
僕を手に入れれば龍王になれるというのだからむしろ、囲い込みに来るのでは?と。
その日から少しずつ歯車は狂っていった。
朝食、昼食、夕食のうちいずれかで毒が含まれたものを食べさせられる。それも、毒見をしているのにも関わらずだ。おかしい、何のための毒見なのか。一度毒見役を入れ替えてみたこともあるし、他の継承者たちに先に食べてもらったものまでもが毒を含んでいることがあった。
一体全体、どうなっているのか。僕の頭は混乱の極みに落ちていった。
毒では殺せないと思ったのか刺客が送られるようになるのに、そう時間はかからなかった。
誰が僕を殺そうとしているのかわからない以上、どうすればいいのかわからない。
仕方なく放置して様子を見て、刺客を捕まえてみても口を割らないし割らせ方も知らない。
そうして2週間が経った頃、パタリと毒と刺客による攻撃はなくなった。
突然安全な状態になったことに逆に不安に駆られ、いつも以上に警戒心を増す。
びくびくして朝食を済ませ、震える膝にむち打ち日課となってしまったイルミナスさんへのお願い。
転移魔法を教えてもらうためにだ。
しかし、いつもは断っていたにも関わらずこれまた急に教えてくれることとなった。いつもであれば世間話を小一時間して別れるというものだったのに。
幸い、転移魔法は案外簡単で1週間とかからず習得出来た。魔法陣は必要だったけれど、その魔法陣も龍脈の力で描けばいいらしいのでどこでも発動できる。
これでいつでも帰れるというわけだ。
折角だし、リヴィと龍王くらいには挨拶をしておこうと探して見るも見当たらない。
転移魔法は人を座標とするものではないので人探しに使うことは出来ないという。
それに加えていったことのあるところにしか行けないらしい。まぁ、これは予想通りだったので驚きはしなかった。
だけど、リヴィとはもう2週間以上会っていないのだ。何かあったのかとても心配だ。何気に僕のことを大切に思ってくれているし、一緒に魔王と戦った仲だ。
仕方なく今日は諦めて過ごす。
そしてリヴィと龍王が行方不明になったと連絡があったのはそれから数日のことだった。
最近起こる出来事が意味不明なことが連続していて頭がこんがらがる。早く帰らなくてはならないのに、帰ってはいけないと心の奥底で言われているような。
それからまた数日が経ち、リヴィと龍王が行方不明になってから1週間経った。
継承者が全員集められ、急きょ代理の龍王と宰相を決めることとなる。継承者は一番強い者がなり、宰相は3番目だ。
本気を出さずに手を抜いてやればやればいいだろう。
そう思っていた時期が僕にもありました。




