第4話 僕、聖龍と再会するみたい
野宿するための道具を全て片付け、出発準備が整った僕は空飛ぶ絨毯を虚空から取り出した。そして、全員が乗り込んだ時懐かしい声と共にその姿を現した。
『待て。リステリアよ』
懐かしいその姿は以前とは違い力が弱く感じられた。
「聖龍!?」
僕は思わず叫んでしまい、口をぱっと押えた。でも、体は小刻みに打ち震え目からは涙がホロリと頬を伝っていく。
どうして聖龍がここにいるの?聖龍はあの時に死んだはず⋯。
『儂は死んでおらぬよ。いろいろわけがあるのだが、それを今話すのは少々憚られるな』
聖龍はそう言い、ちらりと勇者一行の方を見た。それは言外に「龍人族や龍族以外には教えられないといった風だ。
「⋯そう。でもよかったぁ⋯ほんとに、聖龍が生きててくれて⋯」
聖龍がキチンと生きているということを認識した直後、体が熱くなり頬を伝う涙の量が増えていく。咄嗟に服の袖で涙を拭いているのだけど、涙は底を見せないようにボロボロと大量に流れて行く。その度に目をこするものだから目が赤くなったのは当然として目が痛い。
「お姉ちゃんっ、『ヒール』」
あれ?そんな魔法を教えたかな?と思っていると目から痛みが晴れていった。まぁ、回復魔法なら別にいいかと思いそれは放っておく。ヒールと言えばファンタジーで最初の回復魔法っぽいし!
『そろそろ聖龍ではなく名前で呼んでくれんかのぉ?』
しょんぼりとした様子で伝えてくるため、老龍だというのにその姿は小さい子が上目遣いでお願いをする時と同じだけの破壊力を持っていた。龍だけども。
「う、うん。そうだね⋯リヴィでいいかな?」
『おぉ!それはいいのぉ!うむうむ。そのような呼ばれ方は初めてじゃがいいじゃろう!今後はその呼び名で頼む』
「わかった、任せて!」
あだ名をつけられたことがないのか、心底嬉しそうに笑っている。その笑顔を見ていると僕もつられて笑ってしまった。それにつられて他のメンバーにも笑顔が零れ、なんだか楽しくなってくる。
「それで、リヴィはどうしてここに?」
『あぁ、リステリアを龍王国へ連れて行くためだな』
「僕を?」
龍王国というところは驚いたが、龍人族がたくさん住んでいる国なんだろうなと思う。
「あれ?でもこの世界に国は一つしか⋯」
そうだった。この世界には国が一つしかないはず。今いる国は王国だ。国名は他に国がないからいらないのだろう。そう考えると龍王国も他に龍人族が作った国がないのかな?そう言えば龍族なんてものもあったような気がする。
『山脈を越えた向こうにあるからのぉ。この国の人間は知らないじゃろう』
「へ?」
呆けたような声を出してしまったが、今まで通ってきた街や村のことを思い出してポンと手を打つ。これまで通った来たところに限って言えば王国以外に国があるということは誰も言っていなかった。
『龍王国へ行けるのはリステリアだけだ。他は連れていけぬ』
「「「え!?」」」
龍王国へ連れていける人数制限があるのかどうかわからないけれど、龍人族であるミスティも連れて行けないのはどういうことなのか?
『リステリア以外は魔力があるじゃろう?魔力がると魔力酔いを起こして最悪の場合死に至る。龍族の国である龍王国は龍脈の力が濃いから魔力も濃いのだ』
「「「死!?」」」
僕は龍族の国というところに興味を魅かれたけれど他の人は違ったらしい。
『うむ。というわけじゃ。これは龍王が決定したこと、抗うことは許されない。リステリアならばわかるであろう?』
僕は静かに頷いた。あの古文書に書かれていたことが本当だとすれば僕たち龍人族は龍王の命令に服従しなければならない。そうしないと龍人族が消えてしまうかもしれないのだ。あの古文書を読んだかぎりだと本家と書かれていたから分家も当然いるはず。そして本家は名のない里ということだから僕とミスティが生まれたところは本家ということになるのだ。
つまり、あの里自体が本家であり、全員が初代龍王の血を受け継いでいるということだ。分家はおそらく龍王以外の龍と人間の間に出来た子どもなのだろう。
僕は正直知らない分家のことはいいのだけれど、ミスティが含まれるとあっては困る。龍族がどれだけ強いのかわからない以上敵対することは避けた方がいいだろう。
「⋯わかった」
「お姉ちゃん!?」
「ミスティは寝ちゃったから知らないか⋯」
あの時、僕が読んでいた時ミスティは寝てしまっていたから内容を知らないはずだ。だから心配なのだろう。
「大丈夫だよ。3ヶ月後までに帰れる?」
『それはリステリア次第じゃな』
「そっか⋯。じゃあミスティ、離れるのは心苦しいけど、ちゃんとご飯食べてよく寝るんだよ?絶対帰ってくるから」
僕の言ったことを納得できないのか、ミスティは首を横に振っている。ミスティは龍人族の力の部分を一緒に読んだから力でどうにかできると思っているのかな?でも龍族ってことは僕たちよりも強いはずだから勝てないと思う。
「お姉ちゃん⋯」
あぁ、そうか。僕はついさっき起きたばかりなのだ。体が本調子じゃないとか考えていたり、魔力がなくなっていることも不安にさせている材料の一つだろうけれど、一番の不安はまた僕と長い期間離れることにあるのだ。
僕はそれに気づき、ミスティの頭を撫でてやった。これで少しでも安心してくれるといいんだけど⋯そううまくはいかないかな?
「明菜さん、真さん、ミスティのことお願いします。玲、今度あんなことしたら殺すからね」
明菜と真にミスティを引き渡し、面倒を見てくれるようにお願いをしておく。そのついでに僕の空間に入っている料理に使うものを渡しておいた。僕は魔法で強引に作れるけれどミスティは出来ないし勇者一行もこれまでのことから出来ないだろうことはわかっている。だから、調味料などを渡しておいた。
そして、玲はダンジョンであんなことがあったから一言釘をさしておく。これがあるとないではだいぶ違うだろう。
僕の言葉を受けた玲はビクンと体を震わせ、恐る恐ると言った感じで僕の方を向いた。それに合わせて微笑んであげるだらだらと汗を流し始め、焦点が合わないのか虚ろな目をして「だ、大丈夫だ。何も、そう、何もしないから」と言っている。それを数回繰り返した後、倒れてしまったので少しやりすぎたかと反省。
他のメンバーは玲の異常すぎる状態に驚き、倒れるまでその場から動かず口も動かせずにいた。そして僕に全員の視線が集中する。なのでわざとらしく口笛を吹いた。
全員追及しても無駄だと悟ったのか玲を保護している。
「リヴィ、どうやっていくの?」
『もちろん転移じゃが?』
なにがもちろんなの!?それって凄すぎると思うんだけど⋯、移動が楽だからいいかと1人で納得する。それに戻ってくる時もこれで一瞬で帰れるだろう。なら折角だしギリギリまで観光をしてみるのもいいかもしれないと思い始めた。
リヴィはいつの間にか魔法陣を僕とリヴィの足元に浮かべた。
「えっ、はやっ!じゃあ、ミスティまたね!みんなも!」
皆も足元を見たのかお別れを言おうとしたけれどそれより先に魔法陣が発動した。




