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第2話 勇者の凱旋

 -国王視点-


 私はこの世界に一つしかない国、王国の国王である。

 私たち王族にはある言い伝えがあるが…その中の一つに魔王に関してのこともあった。


 魔王はこの地の憎しみを糧に現れると言われている。

 残念なことに、バカな貴族どもの所為で憎しみは増え続け盗賊に蹂躙される村民などの憎しみも計り知れないものだ。

 しかし、それらの憎しみをもってしても数百年から数千年に一度しか現れないと言い伝えられている。

 だから私は、私が生きている間に魔王が現れないことを祈っていた。だが、その祈りは届かなかったようだ。


 魔王発生は魔王の城という、北にある荒野を北上し続ければあるらしいところに突如として現れ、そこから魔物を従え攻めこんでくると言われている。

 そんな魔王をどうやって認知しているのか、疑問に思うかもしれないが、これは龍族によって解消された。

 魔王が現れる時、同時に異世界というところから勇者というものが現れるらしい。これは1人の天才と呼ばれる龍族が作り出した『召喚転移門』という魔法…ではなく龍脈の力によって可能にしているらしい。

 現れる場所が毎回玉座らしく、900年前の王も突然現れた勇者に対して厳戒態勢をとる兵たちを宥めるのに苦労していたらしい。私も例に漏れなかった。

 そして、これは王族しか知らないことであるが、というよりも王族以外に伝えることが龍脈の力とやらによって出来ないことであるのだが、龍族は元々人間だったらしい。

 自分でも何をバカな…と思っている。しかし王族にのみ伝わる伝承はこれ以外にも多数あり、秘密に包まれている。

 例えば、この国を南下していった先にある山脈を超えると龍族が大量に住んでいるというものがあるのだ。

 あの山脈を超えることが出来るとは思えないが、もしそうなると龍人族も伝説上の存在ではなく、私たちのご先祖様である過去の王族が龍族と交わした盟約も実際に存在しているのかもしれない。


 そう考えると、龍族の存在は軽視できない。


「そういえば…龍を発見したと村から連絡があったことで派遣した隊はどうした?」


 私は隣で控えている宰相、私の腹心に話しかけた。


「それが…隊長と副隊長は発見されたのですが、自我が無くまるで赤子のようでして…処分に困っているところです」


 やはり、龍族に手を出すべきではなかったか…と今更ながら思う。

 元は人間だったというのだから話し合いが出来るはずなのだから、討伐隊を派遣せずに話し合いの場を設けるべきだった。


 だが…貴族のバカどもを説得できたかはわからんな。



 宰相と政治について話し合いをしていると1人の伝令が慌てた様子でこちらに向かってきていた。


(もう少し落ち着かんか…ここは王城内だぞ)


「失礼します!勇者様方からの通信より、魔王を討伐したとのこと!」


「おぉぉぉ!!そうか!そうか!」


 咄嗟に立ち上がってしまい、伝令よりも興奮してしまったようで宰相に睨まれた。

 そのような目で見ないでほしいものだ。魔王が討伐されたということは世界が救われたと同義なのだ。


「ゴホンっ、では凱旋の用意と王国中に報せを」


 咳払いして誤魔化してみたが…どうやらダメだったらしい。この後の宰相の説教を思い浮かべると首筋が冷えてしまう。


「では陛下。一度この話は区切り勇者様方の凱旋の方へ力を注ぎましょう」


 くっ…この声色!この宰相も十分興奮しているではないか。

 まぁ良いが。私の一番信頼できる人間だからこの程度のこと、許してやるとしよう。


「ふぅ。なら会議室に行くか、ギル」


「そのような呼び方はしないようにと申し上げたはずですが…」


「細かいことは気にするな。折角の嬉しい報せ。今宵は学友として過ごそうではないか」


「はぁ…わかりました。敬語もやめるぞ、ジーギヌス」


 私と宰相であるギルは魔法聖学園の学友だった。

 小さいころから知っているからこそ信頼出来るし裏切らないということもわかっている。

 もし、ギルが裏切ることがあれば私が力不足だったのであろう。




 -玲視点-


「ようやく王都に着いたな。ここまで2か月くらいだったか?」


「そうだね。普通に来たら3か月かかってたんだから早いんだろうけど…電車とかほしいよね」


 明菜の言い分ももっともだ。俺もそう思う。


 この世界の移動手段と言えば馬車や馬しかない。科学技術なんてほぼ何もないから移動一つとるだけでも大変だ。

 だが、それはそれでおもしろいこともある。

 日本では人力車に乗ることは出来るけど馬車なんてものは乗れない。その日本でも乗れないものに乗れるということに関して言えば興奮を抑えきれない。今となっては尻が痛くて乗りたくないと誰もが思っているはずだけど。



 魔王を倒した後、俺たちは個人携帯用の通信機で王都にある固定通信機へ状況を伝えた。

 ここまで長かったようで短かったように感じる。

 死の危険を感じたこともあったがリステリアとミスティに随分と助けられた。

 特にリステリアは何故か日本にしかないようなものを持っていたり風呂なんていうこの世界ではあまり普及していないものを常備していたりと驚かされてばかりだった。

 でも、それも懐かしい。

 今ではたった2か月でも時間が過ぎるのが早く感じてしまう。それはどうしてなのだろうか?

 この魔王との戦いが終わると日本に返してくれると言っていたからか?

 真と有本は日本に帰れないと思っておいた方がいいと言っていたけど、本当はどうなっているのだろうか。

 確かに戻るのは難しいとは思っている。しかし、龍脈の力とやらで転移できたのであればリステリアであれば転移できるのではないか?

 もちろん確証はない。だが、そこらへんのことを考慮してもリステリアには早く目覚めてほしいと思っている。


 それにしても、来季がリステリアに惚れた時は驚いた。


「そういえば来希は日本に帰るのか?」


「ばっか!帰るわけねえだろ!?」


「それはやっぱり、リステリアがいるからか?リステリアを日本に呼べばいいんじゃないか?」


 俺の提案に「なるほど!」とばかりにポンと手を叩き、その後真に現実を突きつけられた。


「日本に帰るためにはリステリアちゃんが必要ならリステリアちゃんは行けないんじゃない?それに、こっちに大切な人がいるかもしれないし、連れて行っても文明の違いで倒れちゃうかもしれないでしょ」


 俺と来希は二人揃って「そうだな」と溜め息を吐いた。



「そろそろ皆顔を上げて」


 そういえばそうだった。

 今から王都に凱旋するんだ。俺たちが倒したわけじゃないから変な気分だけど、リステリアは封印されているしミスティは付きっ切りだから参加できない。


 これも勇者の務めだと思い顔を上げてこれからの最後のイベントへ足を踏み入れた。

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