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第23話 僕、魔王と対峙するみたい

 今日はとても天気がいい。

 朝起きてすぐにそう思った。それほどの良い天気だ。

 朝にも関わらずぽかぽかと暖かい日差しが体を照り付ける。

 思わず伸びをすると体の芯から気持ちを一新することができたと感じた。


 皆が起きてから朝食を済ませて、まずは作戦会議。


「前衛は俺と来希で後衛は明菜と有本、真は怪我をしたら回復魔法を頼む。それで…」


 玲が司会進行をしてフォーメーションまで決まった。

 後は僕とミスティの身の振り方だろう。


 ちらっと目線を寄越してきたので、前々から言っていたことをここでも口酸っぱくして言っておく。


「ミスティは参加していいよ。ただ、僕は参加しないからね」


 僕はミスティより魔力総量が多い。と言っても1,5倍くらい。

 魔力の質がミスティの10分の1ということを考えると使える魔法はミスティの方が多い。

 だから、パーティ戦闘ならミスティの方が使えると言う方が正しい。僕はあくまでオマケみたいなものだ。

 ソロ戦闘なら僕が一番だと思うけどね。


「ミスティは参加させていいのか?こっちとしては助けるけどさ…」


「いいよ。ミスティがいいならね」


 ミスティに確認をとると了承の返事が返ってきた。

 魔王vs勇者5人&ミスティという構図になる。

 実際、どんな戦いになるのか楽しみだ。魔王が期待外れでなければいいんだけど…。

 魔王が強すぎるのも困るけど弱かったらつまらない。僕も少しは戦いたい。


 ここまでの道のりで僕はほとんど戦わせてもらっていないから体が訛っている可能性も考慮すべきだと思っているけど、毎日訓練しているから問題ないとも思っている。




 訓練しているときにふとした発見があった。

 それは、龍脈を使うときに目の色が変わるということ。

 普段の瞳の色は僕もミスティもお母さんと同じ蒼。

 でも、龍脈を使うときに限って瞳の色はお父さんと同じ薄い黄色に変わる。

 ここから、僕なりに推測した…というより正解だと思っている。


 お母さんは商人の子どもだ。

 対してお父さんは龍人族の末裔。

 僕の記憶が確かなら、薄い黄色の瞳の人がほとんどでそれ以外の瞳の色は物凄く少なかった。

 もともと、龍人族は薄い黄色の瞳を持っている。でも、他民族の血が混ざることによって瞳の色がそちらを引き継ぐ。

 そして、薄い黄色の瞳が龍人族が龍脈を使う条件の一つだとした場合、この変化はわかりやすいだろう。

 薄い黄色の瞳は街でも全く見かけなかった。濃い黄色の瞳は見かけたけど、黄色の本当に薄い薄い黄色の色をした瞳の持ち主はいない。

 龍脈を扱うために変化しているのか、龍脈を扱っているから変化しているのかはわからないけど、これは良い発見だったと思う。


 たまたま、ミスティが様子を見に来てくれたことが功を奏したみたいだ。

 それからはミスティと一緒に訓練をした。龍脈を扱うのは大変だったけど、今までは本当に扱えているのか、魔力を扱っているような感覚に酷似していて感じ分けにくいからとても気になっていた。

 だからこの発見は訓練を促進させた。それまでの成長率と比べると比較にならないほど着々と進んでいる。

 瞳の色が変わっていれば龍脈を扱っている証拠だから感覚を覚えやすい、ということになる。

 ミスティも少しだけ龍脈を扱えるようになったし、もう有本にも負けないだろう。

 龍脈を使うと魔法の威力が桁違いになるから、敵は龍人族くらいだと思う。かと言って他にも生き残りがいるのかと言われるとわからない。

 生き残っていればいいと思うけど、可能性は著しく低い。だって、伝説になっているからね。

 もし生き残っていれば伝説になんてならないと思う。




「よし、じゃあそろそろ行こうか」


「「「「おう!!」」」」


 いつの間にか作戦会議が終了し、いつの間にか出発している。

 これまでの道程に思いを馳せていては置いて行かれそうだ。と笑みを零す。


「お姉ちゃん、早く~!」


 まるで遠足にでも行くかのような軽い足取り。

 ミスティのそれにつられてついついスキップでもしそうな勢いになった。

 スキップなんてこの場にはそぐわない。かといって我慢できなかったので結局してしまうことになった。




「遠目で見るより大きいな…」


「そうね。でも目的はお城じゃなくて魔王よ?」


 玲のぽろっとしたつぶやきに僕も相槌を打つ。

 昨日見たのは結構離れていたみたいだ。それなりの大きさに見えたからそれなりに近づいていたのかと思ったけど、まさかこれほどだったとは。


 想像をするならマッキンリーを登る予定がいつの間にかエベレストになっていた、という感じだ。



 僕たちはお城の門をくぐる。

 この城に着いてからは魔物の気配は全くない。探知魔法にも引っかからない。ついでに言うと魔王の存在も感じ取れないのだ。まさかこれを勇者にいうわけにもいかないので黙っている。

 それに、もしかすると探知魔法を無効化する技術があるのかもしれない。警戒は必要で油断は禁物だ。



「行くぞ」


 玲の低く思い言葉に皆が顔を見合わせて頷いた。それを確認してそっと扉は開かれていった。


 その部屋には一つの玉座。

 ただ、部屋の主はいないようだ。探知魔法通りの結果にほっと息を吐く。そうなると魔王はどこに行ったのか。何故いないのか、よりもどこに行ったのか、ということの方が大切だ。

 街の方に向かっているならすぐにでも向かって援軍をしたいし他の街でも同様だ。


 それぞれが警戒していた剣幕を取り払い、鎮座する玉座へと視線を向けた。その視線には「座ってみたい」という気持ちがこもっているように思えた。


 しかし、その幻想は見事に打ち砕かれた。



 魔王の登場によって。




「お前たちが今代の勇者か。ふんっ、そんなもので俺を倒せると思っているのか?」


 唐突に空間に声が行き渡り、勇者一行に僕とミスティも心のベルトをもう一度締めた。


 少しして、玉座がある空間が歪み、一人の男性が現れた。

 それと同時に、強者の風格を持った強い威圧を放たれた。

 その威圧に僕以外全員が縮み込んでしまった。




 彼らは本能的に「勝てない」ことを悟ったのだ。


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