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第4話 僕、目標が決まるみたい

 馬車の御者台に乗っていたお爺ちゃんの前まで行くと、声をかける前に気付かれ唐突に抱き着かれた。

 その顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになり、どれだけ心配をしてくれていたのかが窺えた。

 少し話してみると、もう助けられないと思ったらしく諦めていたとのこと。

 この世界に奴隷はいないことになっているけど、盗賊が小さな子を育ててはそういう趣味の人のところへ売り払ったりするのだそうだ。


「リステリア、ミスティ。よくぞ無事じゃった」


 同じようなことを何度も言われ僕とミスティのことを何度も何度も、力強くその存在を確かめるように抱きしめた。


「時に、その盗賊たちはどこじゃ?どうやって逃げてきたのじゃ?」


 お爺ちゃんには隠す必要はないだろうと思い、ここまでのことをありのまま伝えることにした。

 盗賊がやってきて村をめちゃくちゃにし、その盗賊に僕とミスティが一度攫われてしまったけれど、僕が魔法を使えるようになり見事に盗賊を檻の中に閉じ込めることが出来たこと。

 そこから塀が聳えるところへ向かうと途中にお爺ちゃんが居たこと。


「そうか⋯⋯。魔法を使えるようになったか。よくやった。お前たちが儂がいい子に育ててやる。一緒に暮らそう」


 僕はその優しい声に一も二も無く速攻で頷いた。

 身内に会えるとはなんと運のいいことか。これなら先のことはあまり心配しなくても構わないだろう。

 お爺ちゃんに頭を撫でられると自然と笑みが零れる。

 頭を撫でてくれる存在というものが子どもにとってどれだけ大切なのかがわかったような気がした。

 そう思っていると、前世で接した両親とは間違いなく短い間だったけれど、今世での両親も間違いなく「血の繋がった家族」なのだと確信する。

 前世では、僕は転生すれば転生後の家族なんて赤の他人だと思うに違いないと思っていた。でも違ったのだ。失って初めて気付く。

 そのことがひどくもどかしい。失ってからじゃ遅いんだ!


 いつしか高くそびえていた塀が目の前まで来ていて、今はそこの境界門と呼ばれるところでお爺ちゃんが手続きをしていた。

 名もない村だから村自体が登録されていないらしく、当然住民登録もされていないのでそれをするみたい。たまにこういうことがあるのか兵士は慣れた手つきでそれを済ませた。

 それが済んだら1枚のカードを渡された。


「それは身分証という物でとても大切なものじゃ。絶対無くしたらダメじゃよ」


 お爺ちゃんに注意され、ミスティの分は幼いためお爺ちゃんが持つことになり、僕は魔法で作り出した空間の中にそれをぽいっと放り込んでおいた。

 塀に囲まれた街はすごく大きいようだ。

 僕たちは馬車専用通路を行っているので人混みをかき分けて馬車が通るようなことはないけど、お爺ちゃんの家までで数十分も歩くことになったのだ。

 異世界の文明未発達な世界では大きい方ではないだろうか?

 お爺ちゃんに「広い⋯⋯」というつぶやきが拾われて帰ってきたのは、ここよりも王都の方が広いというものだった。

 他にもたくさん街はあるけれど、それはまた今度勉強しようという話になったので大きく頷いておいた。

 この世界のことを知っておいて損は無い。むしろ全てがプラスに働くだろう。

 知らないほうがいいこともあるというけど、そうは思わない。知っておいて損をすることはあまりにも少ないはずだから基本的には問題ないはず。


 お爺ちゃんの家の前に着くと、まずはその大きさに驚いた。

 前世の僕が住んでいた一軒家ほどの大きさがあったのだ。これなら子ども2人も養えると言うのも本当だろうと思い、お爺ちゃんの後に続いて入っていく。

 そして、やはりというべきか中も凄かった。

 一目で高級だとわかる作りをした飾り物がたくさんある。ミスティはこれがどのくらい凄いのかわからないようで割とおとなしい。

 僕だけが無邪気にはしゃいでいたようで途端に恥ずかしくなった。


 この家には一人、メイドがいる。

 その人はお爺ちゃんに雇われて家事やお爺ちゃんのサポートなどをしているらしい。


「儂は元貴族じゃからな。商人になったとはいえ最低でもこのくらいの生活はしておかねばならんのじゃ」


 やっぱり!これだけの家が平民の家だとおかしいもん。元貴族様だっていうなら納得だ。

 となると、僕は貴族様の孫ということになるんじゃないのかな?なんだかちょっぴり嬉しく感じた。


 *


 お爺ちゃんの家で過ごし始めて数か月が経った。

 まだ慣れないことが多く前世と比べると不便なところは多々あるけれど、村での生活を思えばとても改善された。

 それに刺激がとても多いのでここでの生活はとても楽しく思う。

 村がなくなったのはとても残念で、今でも何か出来ることがあったんじゃないかと思ったけど、済んだことを蒸し返すのもよくない。


 お爺ちゃんはとても良い人で、僕たちが2人でお使いに行くときは必ずメイドさんを尾行させている。

 気づいているけど気付ていない振りをしているのだ。

 商店街ではもう顔なじみがたくさんできて、御裾分けをくれる場合もある。


 お爺ちゃんに授業をしてもらう時間は午前中と決まっているので、毎日とても規則正しい生活が送れている。

 午後からは仕事に行くとかで毎日忙しそうだ。

 その午後の時間を使って、僕は毎日魔法の練習をしている。

 まず、基本的にどんな魔法も再現出来た。ただ、空を飛ぶことが出来なかったことが残念に思う。

 それにワープやテレポートなどといった瞬間移動系もできなかった。何故かはわからないけれど、某作品では座標指定の演算がどうこうと言っていた気がするのでそれのせいかもしれない。


 突然だけど、お爺ちゃんは元貴族様で現在は商人なので教養がとても良い。


 お爺ちゃんの授業をミスティも一緒に受けているけれど、よくうとうとしていて聞いているのかわかない。

 でも僕は真面目に聞いている。ここは前世と違って医療が発達していないことはわかっている。

 だから寿命もそれ相応だろう。まだ50代に見えるお爺ちゃんだけど、40代が寿命の国もあったはずなので油断できない。


 まず始めに教えてもらったのはこの世界の地理だった。ここは王都からそれなり⋯⋯では済まないほどの距離が離れた街で、王都の次に大きな街とのことだ。

 街は大陸の東西を真っ直ぐ一本の線で結べるような形になっていて、ここは左から3番目の街。王都は一番右端なのだそうで片道半年以上かかると言われた。


 次にこの世界のお金だ。

 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨10枚で白金貨1枚で、実は白銀貨なんてものがあるらしいけどあまり出回っていないらしい。

 銀貨50枚で白銀貨1枚となる。白銀貨なんてものは前世含めて初耳だけど、これが本物なのだと思うことにした。


 お金について知ったところで計算を教わることとなった。

 でも、計算は前世と比べると余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)でお爺ちゃんは驚いていたけど、次の瞬間には頭を撫でて褒めてくれたのだ。

 とても嬉しかったけど、ずるをしたみたいで罪悪感が少しだけ芽生えてしまった。


 最後はこの世界の雑学で、この世界には魔物が大量に跋扈している世界。

 冒険者という職業もあるのだと言われ、将来は絶対になろうと思った。魔族という存在はお爺ちゃんの口からは出なかったけれど、本当のところどうなのかわからないので他の人にも聞いてみる必要があるだろう。

 人が魔物化することもあるみたいで、魔物化すると知性が低くなり見た目も人とは違うのだそうだ。ただ、他の魔物よりも強いから気をつけなさいと言われた。

 そして、魔法聖学園というものがあるらしいことを知った。

 そこは12歳から通えるようになり3年間通うことが出来る。ここでは魔法に関することを主に学び、それ以外のことも教えてもらえるらしい。

 いつかはいってみたいな、とボソッと呟いてしまいそれを聞いたお爺ちゃんがにっこりと優しい笑みを浮かべて「魔法使えるリステリアなら行けるからのう」と頭を撫でてくれた。


 一先ずの目標は決まった。それは魔法聖学園に入学することだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なし [気になる点] 主人公が自分以外の全滅を希望した理由ってなんなんだろうか? 5歳で独り立ちしないといけなかったのか? 別にそれなら村から逃げるだけで良かったのにね。盗賊に壊滅より、運…
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