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第9話 僕、レールガンを見つけるみたい

 遠くから、何かがとぐろを巻くかのようにこちらへ飛来してきている。その速さは凄まじく、目視してからは一瞬にして目前に迫った。

 間一髪で躱すも、指先が間に合わなかったのか、そこだけ蒸発していた。これが、ディスペのレーザー攻撃なのだろうか。とは言え、戦い等に影響はなさそうだ。

 だけど、これはあまりにも飛距離が長すぎる。

 何か仕掛けがあるはずだ、と考えて、レーザー攻撃が来た方向へ飛び始めた。

 飛び続けて、数分。

 レールガンはおろか、機体の残骸すら見当たらない区域まで来てしまったのか、普通の宇宙が広がっている。開発されていない惑星ばかりで、さらにその先へ向かった。

 さらに数分が経過して、ようやくレーダーの端に赤点の敵表示を捉える。

 レーダーの端と言うと、10km先。補給基地までは9000kmと表示が出ていて、この機体の最大速度は秒速32kmらしいから、およそ280秒――5分弱で戻れる計算となる。けれど、ここまで警戒しながら来たため、最大速度を出してなんかいない。


「これは……」


 さらに速度を落として近づいて行くと、赤点は無数に増え続けた。

 まるで本拠地と言わんばかりの数で、レーダー機能を用いても数を数えられないほど多い。

 それでも、レーダーは数えようとしてくれている。どんどん数が上がっていき、今、1万を超えた。


「――っ、また」


 ――刹那、とぐろを巻くかのようにして、レーザー攻撃がやってくる。

 嫌な感じがした瞬間から回避行動を取っていたため、今度は問題なく対処出来たことに、ホッと胸をなで下ろす。

 これ以上近付くのは危険だと本能が叫んだ。

 足を止め、先を見据える。

 ひとまずレーダーにマーカーを打つと、余計な動きを見せてくる前に退避することに決めた。

 これ以上ここにいても、危険が膨らむだけだ。

 補給基地へ向けて、最大速度で移動し始める。


 その途中、運良くレールガンを発見した。

 レールガンの他に、近くには30mもあるレールガンとは違って、5m程度のアンの装備が落ちている。それも拾って、持ち帰ることにした。

 ずっと見つからなかったものがこんなにも簡単に見つかるなんて、と思わずにいられない。


「ラルフマン……」


 そうだった。

 ラルフマンが一人で、あのヌェープを押さえつけているのだ。

 しかも、離れる最中にはディスペたちの大群もあった。おそらく、僕が見つけた本拠地のようなものから援軍として駆り出されたのだろう。

 それだけの数が、ラルフマンを潰す。

 あれを止められる人は、単独ではいない。

 例えランキング1位と言っていたフォックスさんでさえ、不可能だろう。そのことは、長らく相棒を務めていた僕だからこそわかるというもの。

 とは言え、いくらラルフマンと言えど既に補給基地に戻って、待機しているはずのみんなと敵を待ち構えていると思われる。

 最大速度である秒速32kmを出して――と思いきや、重量オーバーなのか、宇宙にそんなもの関係あるのかと思いながら、秒速26kmで補給基地へ急行した。




 〜ラルフマン視点〜



 クソ野郎がッ!

 あいつ、まさか逃げたのか?

 レールガンを探しに行って、勝手に補給基地まで戻るのは簡単なことだ。単に、この場を迂回していけば見つかることがない。レーダーに映らないように移動するのも、ランキング上位なら余裕でできるだろう。


「――なっ! 意味わかんねぇ! ディスペがこんな……」


 いや、それだけではない。

 ヌェープもいるし、ヘリコプリオンもいる。

 どうする――。

 答えは、出ていた。


「逃げるッ!」


 こんなものを相手にしていたら、確実に死ぬ。

 相手にしていたヌェープへ背を向けて、一気に駆け抜ける。足の速いヘリコプリオンはヌェープやディスペに移動速度を合わせているから、追いつかれることはない。

 ――そう、思っていた。


「なん――!?」


 ディスペの大群の中にいたヘリコプリオンが4体程度、こちらへ一直線に突き進んでくる。その速度はこれまでとは比にならないものであり、到底回避しきれない。

 これを全て回避しようなどと考えるのは、奈緒くらいだろう。


「ちぃっ! あいつ、マジでどこ行ってんだよぉ!?」


 遅い。

 既に10分は経過していて、予定ではとっくに戻っているはずだ。多少遅れた場合であれば、今くらいの時間で姿を見せるはず――だが、影すら見えない。すぅっと目を窄めてみても、変わることなく敵のみがこちらへ向かってきている。

 いったい、どこまで行ったというのか。


「くっ――!」


 ヘリコプリオンの突進攻撃を危なげなく躱す。

 右から、左から、上下から。

 これまで戦ったものとは違い、こいつらは連携しているように感じた。どうしてか、隙が見えない。――否、見せない!

 間一髪のところで回避し続けているところへ、もう1体のヘリコプリオンが援護に回って来た。

 合わせて5体も相手取るのは、正直きつい。

 あいつは難なくやってのけていたが、こんなことを平然としてのける奈緒は、やっぱり人間離れしているのだろう。


「一旦逃げるしかねぇのに、逃げる隙すらねぇ!」


 逃げようと背を向けようものなら、すぐにでも追いつかれそうだ。

 俺は世界連合軍の人間だったから裏事情も全て知っているが――、ゲームに出てくる機体は全て4種類に統一されており、こうなることを見越して製造され続けていた機体のスペック通りにプログラムが組まれていた。

 俺の機体は、尻尾を覗けばバランサーと言われるもの。

 種類としては、攻撃型アタッカー防御型ディフェンサー速度型スピードスター万能型バランサーとなっている。

 あいつは確か、スピードスターだったはずだ。最大秒速32kmであり、全機体中最速を誇っている機種。俺の機体と比べれば、動きが段違いとなる。だからこそ、レールガンを探しに行かせたというのもあるのだが。


「――ん?」


 敵の停止していた大群が、徐々に左右へ広がっていく。

 その様子に注意しながらも、猛然と攻撃を繰り返すヘリコプオンたちをいなし、躱し、時にいらない部位でガードして、機体に欠損表示が出てきたり。


 ――刹那、俺の視界が白一色に染まった。

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