第12話 僕、順位が決まるみたい
ログアウトすると、僕は結構遅めだったようで、部屋の中央にある100枚のモニターに映る戦闘状態の人たちは少なかった。10人も残っていない。
モニターを見れば、そこは違う、とか思う人もいるのかもしれないと思いながら、どんな人がいてどんな戦い方をするのか、観戦する。
けれど、そのどれもが時間切れで終わってしまった。
決着が付いたのは僕が最後の一人。
しかも、途中までは様子見をしていたのだし……最初から本気で戦っていればもう少し早かったかもしれない。
今更言っても、ただの言い訳でしかないのだけど。
リアムさんが中央のモニターの真下にある、台座のようなところに出て来た。
「では、結果発表を行う。
まずは、大将の諸君は随分とよく頑張った。精鋭を相手に、勝率は7割。精鋭の実力は、私自らが相手をしてよく知っている。諸君らのその強さは、とても頼もしく思う」
勝率が7割……中将たちの勝率は0.0○%だと思われるから、随分と高い。それほどに、実力が乖離しているのだろうか。
「順位は、1位から順に発表する。明日正式なものを端末に送るが、それでは今夜眠れないだろう。
……1位、浜中航平。2位、ヘンリー・セグワーズ。3位…………87位、鈴木奈緒………」
それから200位まで呼ばれ、それ以降に順位はないということだった。
僕は中途半端な87位。
本当に、どうせなら100位ぴったりとかにして欲しい。こんな順位だとすぐに忘れてしまいそうだ。
けれど、1位が日本人だなんて思わなかった。だって、運動神経とかは外国人の方が圧倒的に高いし、前世においても外国人はとても有利だったから。もしこれが、運動神経の関係するものであれば、日本人が上位10位の中に6人も、ということにはならなかっただろう。
ゲーム大国だからこそ、というのがあるかもしれない。
「200位に入らなかった者は、200位に入れるよう努力を重ねてもらい、200位に入った者は、蹴落とされないよう実力を伸ばしてもらう。
それに、200位という区切りで給与も変動する。後は討伐数や討伐難度が関係してくるが、そちらはボーナスのようなものだ。是非とも、多くの敵を討ち取ってほしい。
最後になったが、今日はもう休んでもらって構わない。明日は部隊編成をし、明後日には前線へ出てもらうことになる。しっかりと体を休め、戦いに備えよ」
『はっ!』
ビシィッと、体をピンと張り、敬礼をする人が僕の周りで少しだけみられた。本当に少ない人しかいない。きっと、世界連合軍の人たちだ。
リアムさんが最後に解散と言うと、僕のところに人が集まってくる。
「凄かったぜぇ?あんなに熱いもんは久しぶりだぁ」
この、ちょっとうざったい話し方は覚えがある。
「……さっき戦った人、ですか?」
「それ以外ねぇだろうがよぉ。俺ぁラルフマンだ」
「僕は、鈴木奈緒です」
「日本人っつーのは確かぁ、名前が後だったかぁぁぁ?」
「……はい」
「よぉし、奈緒、俺がコンビ組んでやるぜぇえ?」
――コンビ?
「何かわかってねぇってかぁ?あっちゃぁぁああ!」
……関わらない方がいいかな。もう、遅いかな。今からでも無視して……いいのかな。
「コンビっつーのはよぉ、宇宙で戦うのはツーマンセルだからぁ、それっつーわけよぉ」
「あー……」
ここでも、ツーマンセルか。
ツーマンセルなら、相性抜群のフォックスさんがいいな。あの人なら安心して背中を預けられる。
「そういうことなら、お断りします。ツーマンセルで行動するなら、相性がいい人がいるので」
「そう……そうかぁぁぁ……」
がっくりと項垂れ、名前も知らない狂人がとぼとぼ離れていく。
それと同じくして、僕たちの会話が終わるのを待っていたのであろう人たちも離れていった。もしかしなくても、ツーマンセルとやらのお誘いだろうか?
だけど、そんなの初めて聞いた。何かメッセージでも来ているのかな、と思って確認してみても、何もない。
ツーマンセルのことは謎に包まれたまま、僕はここまで来るまでに知り合ったケインと話しながら、自室へ向かう。
ケインは別のゲームの人で、母艦を巧みに操る凄腕らしい。ゲーム内ランキングではトップ3から漏れ出たことがないのだとか。
「じゃあ奈緒は、そのフォックスって人とツーマンセルを組みたいんだね」
「そうなんだよね。でも、ここに来てるかわからなくて……どうしたらわかるのかなぁ」
「それなら、良いものがある」
「良いもの?」
「そう。俺たち母艦の操縦士には、搭乗員の名簿が渡されている。本名さえ分かれば、部屋も突き止められる」
「ほんと?……あ、でも本名知らないしなぁ」
「そっか。それは流石に……いや、ちょっと待って!奈緒はその人とロボ戦で会ったんだよね?」
「そうだよ。同じクランの、リーダーやってる」
「じゃあ、可能性はまだあるよ。俺の部屋に来て、少し待ってもらえればわかるかもしれない」
「え、いいの?」
「いいのいいの。じゃあ、行こうか」
とは言いつつも、僕たちの部屋は近い。僕の部屋は女性専用のJ地区、ということらしく、隣のI地区にケインは居て、現在この場にいる女性は10人程度しかいないし、部屋も余っているから、1部屋離れて別の人の部屋、といった感じ。
だからか、ケインはマンションの違う階層のご近所さんのような感じで、接しやすい。女性たちとは若干離れているせいで、逆に接しにくいのだ。元々、女性と話すのは得意ではないし。
ケインの部屋に入ると、ケインはベッドに腰掛けてホログラムでパソコンのようなものを映し出して、次々操作していく。
それを眺めつつ、部屋を見る。僕の部屋と大差なく、床に直接座った。




