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第14話 僕、龍人族の誓いを知るみたい

 どれくらい眠っただろう。

 まだ戦いの疲れが抜けきっていないけだるさを感じる体を起こす。

 ふと、隣を見ると一緒に寝ていたはずのミスティがいなかった。

 何か起こったのかと思い勢いよく立ち上がり、そのまま入ってきた扉を開く。その先にあったのはミスティと勇者一向が戯れている光景があった。

 あぁ、とこの部屋に入ったときのことを思い出して状況に納得した。


「ミスティ〜、続き読むよ〜」


「あ!待ってお姉ちゃん、すぐ行く!」


 まだ眠気を感じつつミスティに軽く手を振り、また部屋の台座のあるところに戻っていく。


 しばらくしてミスティが戻ってきた。

 僕が起きるまで時間が結構あったらしく、それなりに長い間遊んでいたみたいだ。


「次は2章だね」


 と言い、1章の最後のページを捲る。

 そこには早くも「龍人族の誓い」というタイトルが書かれてあった。

 ぱらぱらと捲っていくと、残りのページの半分くらいが誓いについてだとわかった。


 気を取り戻し、誓いの1ページに目を向けた。

 すると、そもそも龍人族とは何か、ということが書かれている。

 龍人族の説明はさっきのやつで終わったんじゃないの?と思ったけど、書いてあるということはもっと重要なことをこっちに書いてあるのかもしれない。


 この2章によると、龍人族はこういうものらしい。



 龍人族とは、龍と人の間に生まれる子で魔力と龍脈を扱うことが出来る。しかし、それだけではない。

 確かに、魔力と龍脈を織り交ぜた10種の魔法は格別の強さだ。

 ただ、龍人族にはもっと別の意味で強い技がある。

 龍人族の血には龍王と人の王の血が流れている。故に、その血には龍も人も、例え王であろうと逆らうことは出来ない。

 血を糧に言葉を発することを言霊と呼び、言霊は誰であろうと逆らうことのできない絶対的な命令となる。


 そして、龍と人の子の間に最初に出来た初代龍人族は本家と呼ばれ、それ以外は分家と呼ばれる。最も王の血が濃い本家は里の名を持たない。逆に、分家は名を必ずつけねばならない。



 と、10数ページに渡って長々と書かれていた。

 本当に古代文字は長いし古い言葉は言い回しが難しいからか極端に文章が長くなる。その癖文字は大きいので無駄に場所をとるのだ。

 まるでどこかの世界の貴族の手紙のようだ。


 ただ、僕たちが本家の龍人族だということが判明したのは良好だ。これでもし分家だったら中途半端すぎる転生になっていたところ。


 僕は言霊を使う気はない。

 でも、危なくなったら使ってしまうかもしれないね。

 人か龍なら問題ないみたいだし。


 さて、と一度気持ちを切り替える。

 ここからが本番なのだ。龍人族の誓いは。



 龍人族の誓い。

 それは龍と人の間で結ばれた盟約を元に作られている。

 龍と人。本来ならば力関係は明らかでとても対等にはなれやしない。

 だが、龍は人と歩むことを決めた。その道は決して最良とは言えない。何故なら、人を絶滅させる方が確実だからだ。

 確かに、龍にも少なからず被害が出るだろう。それでも、これからの安寧の為ならば皆喜んで命を差し出していたはずだ。

 それが何故、共生することになったのか。


 龍族は安寧を求めている。

 時の人の王はそれを聞きつけ、龍王の前に頭を垂れると「我々人族は、我が一族が王である限り龍族に一切手を出さないことを誓いましょう。ただ、その対価として龍族の後ろ盾と我々にも安寧をくださることを望みます」と言い放った。

 そして、時の龍王はそれを了承した。


 龍族が人族の王に送ったのは一つの指輪。人と龍が共生する意味を込めた指輪。

 支え合うのではなく助け合う間柄。

 服従では無く対等な友人として。


 人族の王が龍族に送ったのは見目麗しい王の血を引く王女。

 良く言えば和の証。

 悪く言えば生け贄。


 そして、贈られる王女はいつの時代も正妃が生んだ第1王女だった。



 しかし、時が流れるに連れその盟約の存在は薄くなった。

 ある時代の正妃が「どうして私の可愛い娘を龍なんてものに贈らないといけないの?私の娘は誰にも渡さない。龍なんてどうせ人の多さに恐れなしているだけだわ」と言い放ち、龍族への贈り物を途絶えさせた。


 それを不審に思った2代目龍王は人の姿を模して地上に降り立った。

 そして、2代目龍王は人族の王へ謁見をした時、驚愕と絶望。また、耐えられぬ憤怒に囚われた。


 初代龍王が人族の王へ与えたという指輪。

 時の人族の王はそれを代々の王に必ず嵌めさせると確約したはずだった。

 しかし、今それは嵌められていない。


 故に2代目龍王は人族の王に問うた。


「何故、指輪をしていないのか」


 非常に簡単な質問。しかし、その声色は憤怒に染められており、その時の人族の王は震えながらもこう言った。


「我ら人族が龍族に脅かされる時代は終わった!これからは我らの時代!龍族は我らが滅ぼさん!いかな龍族と言えど我らには魔法がある」


 2代目龍王は最後まで聞くこと無く、その首を落とした。


「我ら龍族と時の人族の王との誓いは破られた。人族よ、龍族の総力を持ってお前達をこの世から消し去る。覚悟しておけ」


 その1週間後、王家は滅び、国もほぼ壊滅。

 人は文化を失い太古の暮らしへと戻ってしまうこととなった。


 これが龍人暦3000年台のこと。

 龍人暦元年は龍族と人族の王が誓いを交わした年。


 そして今、龍人暦5万年を超えている。



 2代目龍王は人族に鉄槌を下すと、龍人族に絶対破れぬ誓いを立てさせた。


 これが龍人族の誓いとなる。


 その1、龍族に対して牙を向けないこと。

 その2、龍族が先制した場合はその限りではない。

 その3、龍王には逆らわないこと。

 その4、人族との接触はなるべく避けること。

 その5、全ての龍人族は本家を守り、その命令を絶対のものとすること。

 その6、本家は龍族の決定に異議を唱えないこと。

 その7、龍人族と龍族は互いに争わないこと。


 この7つを絶対のものとし、血に刻ませた。

 血に刻まれた誓いは決して破ることはできない。血に刻む誓いはある種の呪い。

 しかし、そこまでしなくてはならないほど龍族は信用というものを信じなくなった。



 ふぅ、と一旦息を吐く。

 とても長かった。

 特に歴史。

 歴史が大半で結局誓いの部分は最初と最後にしか書いてなかった。

 速読術の最初と最後だけ読むやつね、あれこの世界でも使えそうだよ。


 ふと、横にいるはずのミスティが視界の端から消えていることに気付き、周りを見まわそうと足を動かすと、ごそっと何かが崩れた音がした。


「ミスティ!?…寝てるだけなのか、脅かさないでよ…」


 僕にもたれ掛かっていたミスティが地面に寝転がり、すやすやと寝息を立てている。

 まぁ、僕が寝ている間遊んでいたのなら疲れていて当然だろう。それに、ミスティにとってはこの本はおもしろくなかったのかもしれない。

 僕的にはいろいろ知れて満足したけどね。


 あと2章の次は何が書いてあるのか、と思ってタイトルを見てみた。

 すると、


「現在の龍人族、本家と分家」


 という見出しがある。


 これも非常に気になる内容だ。ミスティは興味ないということなので、寝ている間に読んでしまおう。


 そう思い、次のページをまた一つ捲る音が静かな部屋に微かに響き渡った。

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