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第6話 僕、初代王に会うみたい

 ドクン、ドクン、と力強く脈打つ心臓は透明のショーケースに入れられている。アクリル板や、ガラス板のような透明度だ。

 汚れは一切なく、ケースには傷一つとして入っていない。


 ズン、とそんな音が聞こえたかと思うほど一気に力を吸い取られた。突然力が減少し、倦怠感が僕を襲う。

 まさか、と思い自分の力の流れを確認してみると、メリエルさんと同じく心臓に吸われ続けられていた。


「どういうことなんだ……?どうしてこんなものがここに……」


 僕の力もまた、回復と吸収が釣り合っていない。僅かに吸収の方が大きく、このままだといずれ……いつになるか予想はできないけれど、枯渇状態になる。


「ここにはこれだけしかないのか」


 周りを見ても、何かあるわけでもない。

 明かりを減らして力の消費を減らし、心臓を見つめる。

 拳一つ分くらいの大きさだ。人間の心臓……だと思う。

 実際に見たことはないからなんとも言えないけれど、保健体育の授業で教わった通りの形状をしているし、間違いない。

 心臓に吸われた力がどこへ流れていくのかと思って、その力の先を見た。だけど、見れない。

 いや、見れないというのもおかしいかもしれない。

 なにせ、全方位に向かって放出されているのだから。


「メリエル様、そろそろ出ましょう」


「ああ……そうだな」


「ここのことは他言無用です。もしかしたら、国王様でも知らないかもしれません」


 そんなことはないだろう。

 国王なら、絶対に知っている。そう言い切れる。だけど、ここに僕が踏み入ったと知られるのはダメだ。

 ……明らかに、国家秘密っぽいんだもん。


「そ、そうだな。ここのことは誰にも言わない。うん、いっても信じられないだろうしな」


 確かに、実際にここに来た人でなければこの部屋の存在は信じられないかもしれない。

 僕なら、興味本位で来てしまいそうだ。そして、この状況に陥るのだ。


 本当に僕は成長していないな、とつくづく思う。


 少し油断していた。

 この世界の最強はスコール11でも、人はスコール8までしかいない。

 その攻撃が、本気ではないにしろあの程度だったのだ。本気ではなくてもある程度の実力を測ることが可能だから、この世界でも僕が1番強いと判断してしまった。

 その判断は間違いでもなければ、正解でもなかったというわけだ。


 螺旋階段を登りきり、廊下に出るとマネキンを元の位置に戻す。

 そこで初めて、マネキンのあった場所のタイルを踏んだのだと知った。扉はマネキンに隠れるようになっている。

 マネキンを元の位置に戻した途端、ゴゴゴ……と音が鳴り最初の状態に戻った。


「戻りますよ」


 メリエルさんの手を引っ張り、乱れる呼吸になりながらもメリエルさんの自室へ戻ってきた。メリエルさんの自室だけど、今は僕の自室でもある。護衛をするなら一緒の部屋の方がしやすいというのと、メリエルさんが強く言ってきたことに起因している。

 お風呂は部屋の外だし、襲われても魔法でどうにかできる。


『開け』


 扉の前でビクビクしながら呟くと、扉は開いてくれた。

 あの扉が特別だったのかもしれない。

 なら、王族にしか開けられない扉ということなのか。


「ふぅー……」


 部屋に入るなり、メリエルさんは長い息を吐く。

 僕も一度落ち着くために深呼吸をして、心を落ち着かせる。

 意外と長時間出かけていたらしく、窓から見える陽は沈みかけている。そろそろ夕飯のために呼ばれる頃合いだ。


「失礼します。夕飯の支度が整いました」


 メリエルさんのメイドが呼びに来て、僕たちは食堂へと向かう。このお城は大きいけれど、王族が使う部分はそれほど広くない。ほとんどが研究室となっているからだ。


 食事を終えて、入浴も済ませるとあとは寝るだけだ。

 僕はメリエルさんが寝たのを確認し、


『閉じろ』


 と扉に向かって言い放つ。

 するとガチャリと音がなって鍵がかかった。

 ベッドの中に入って、夢の世界へと誘われた。



「ここは……」


 夢にしては感覚がハッキリしている。本当に夢だったなら、こんな思考をした途端に目が覚めているはずだ。

 例えるなら、神の世界に行った時と似ている。


『扉を開けし者、今こそ力を継承するか?』


 ……ちょっと展開が急すぎてついていけない。

 どこからともなく聞こえた声に警戒しながら、問いかける。


「君は誰?力の継承って、なに?」


 すると、目の前の空間が歪み、姿を現した。

 深淵を思わせるつんつん頭の黒髪と、真っ赤な瞳。その瞳の瞳孔は丸ではなく縦に細長い。

 がっしりとした体格のお爺さんだ。そのお爺さんがまるで無表情の状態で、僕の質問に答えた。


『我は初代王、オデュッセウス・ヴァンパイア。我が力、血脈けつみゃくにより受け継げられし血気解放けっきかいほうである』



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