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第13話 僕、野営組を回るみたい

 完全に朝日が昇り、外から小鳥の囀りと木々のざわめきが聞こえる。

 僕たちはまず朝食を食べることになり、米の他に置いてあった食パンを焼いてマーガリンを塗って食べた。

 質素な食事だけど、それを口にする者は少ない。

 初めて遺体を見たからか、同じ生徒が殺されたことに対して思うところがあって喉が通らないからか。

 どちらにしても、犯人を早く見つけないに越したことはない。


「この後、僕と真央と……翔の3人で島にいる生徒に話をしてくる。それから、ついでに楠くんと同じ班の子にもいろいろ聞いてくるよ。皆はできるだけ一緒に行動して……できるだけ人数は多い方がいいから、女子と男子で別れて行動してもいいよ。トイレに行くのだって、最低2人で行動してね」


「お前らは3人なのに、俺たちはここで待ってるだけなのか?」


 そうくると思ってたよ。

 だけど、僕には魔法があるし、翔は肉弾戦闘なら相当強いし、真央は魔王が危険を知らせてくれるはずだ。少なくとも、悪意を持って近づいてきた場合は。

 けれど、この中で説明できるのは翔のことしかない。それでは納得しないだろう。

 何か良い言い訳はないかな……。


「お前らは動物にも立ち向かえないんだから、ここでじっとしてれば良いんだよ」


 ナイトが挑発するように言った。

 木村くんが放置されたことを相当怒っているようだ。

 僕だって、もし真央が置いて行かれたりすればナイトのように怒っている。……魔王と入れ替われば問題ないだろうけれど。


「……っ」


「お前らはもう行っていいぞ。こいつらのお守りは任せとけ」


 ナイトの怒りはとどまるところを知らないらしい。

 ……というか、挑発し過ぎじゃないかな?


 何故、彼らが誰一人動物を倒していないのかわかるかと言うと、このリビングの隣には調理部屋がある。

 調理部屋は動物の解体もできるほど広く、そこを使ったのが僕たちのイノシシが初めてのようなのだ。

 そして、ナイトと翔が二人で木村くんを襲っていた鹿を持ち帰ってきた時に他の動物の肉がなかった。

 動物丸ごと一体も食べられるわけがなく、内臓が捨てられた形跡もないことから、彼らが動物を一体も持ち帰っていないことがハッキリしているのだ。


「じゃ、行ってくるよ。気を付けてね。絶対一人で行動しないように」


「わかった。動物ならここに入ってこないだろうしな」


 僕たちは外に出る。

 すると、まずはこの周辺から注意喚起して行こう。

 人が殺されたとだけ伝えて、誰が死んだのかは言わない方がいい。それは帰ってからでも十分だ。

 それに……と、そこまで考えてから地図を広げて位置関係を確認していく。

 まず初めに行くのはここからほど近い3個の野営地。

 そこが同じクラスの子たちのいるところでもある。

 一つの野営地につき4班まで入ることが出来て、野営地は全部で12個ある。

 それぞれ館のほど近いところに3個ずつあるのだ。

 因みに、館に泊まれるのは1クラス3班まで。


「まずはこの3つからだな。B組の奴らは基本的に東の館付近に多いから、そっち周りで行った方がいいな」


「そうすると……時計回りだね」


「時計まわ……?まぁいいか。とりあえず右回りで行くぞ」


 ……はい?

 時計回りを知らない……!?

 まさか……いや、でも確かにこの腕時計型携帯電話はデジタル表記だ。

 そう言えば、丸い時計をこの時代に来てから見てないかもしれない。

 こんなところに弊害が……。

 今度から気を付けよう、と心に決めた。


「元気でやってるか?」


 翔が率先して朝食をしている野営組に声をかける。

 それに反応し、彼らは一斉にこちらを向いた。

 朝食を食べているという事は、動物を狩ったということに他ならない。


「お前らは動物殺せるのか」


「やりたくないけど……そうしないと死んじゃうから。死ぬのは嫌だ」


 そりゃそうだ。


「で、何しに来たんだよ?」


「あぁ……、言いにくいんだけど、一人B組の奴が同じ生徒の誰かに殺されたんだ。だからお前らにも注意するようにってな」


 な、とこちらへ同意を求める。


「そうだね。ここが最初だけどね」


 翔と話していた篠崎くんは目を瞑っていたかと思うと、そうか、とだけ言って終えた朝食の片付けをしにいく。

 案外素っ気ないな、と思いながら他のメンバーを見ると、あまり気にしていないようだ。

 同じクラスではなにからか、今は生き抜くことを重視しているからか。


 とは言え、穏便に話が進むならそれに越したことはない。

 ここで暴れられることも予想していたので、拍子抜けではあった。

 ふと、見回してみると15人しかいないことに気付いた。


「……まさか、一人死んだの?」


 篠崎くんにもう一度声をかけると面倒臭そうに振り返る。


「あ〜錦城はトイレだよ。毎朝長いんだよ全く」


 ガシガシと頭を掻いて、はぁ、とため息を吐いた。

 錦城くんと言えば太っていてオタク感満載な子だ。

 対して、篠崎くんはテニス部に所属していて次鋒をするほどに強いんだとか聞いたことがある。

 運動部は肝が据わった人が多いのかなぁ……。

 そんなことを思いながら、他の野営地を見て回った。

 その結果、やっぱり篠崎くんたちの反応が異常だった。他の野営組は皆驚いて騒ぎ立てたりして、とても大変なことになったとだけ言っておく。


 そうこうしながら、僕たちは昼になる前には東の館に到着した。

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