第5話 僕、ラッキースケベみたい
迎えた翌朝、僕たちはまたリビングに集合していた。
と言っても、班のメンバーである僕含めた4人だけだ。
「これが俺たちの分でいいのか?」
ナイトが米袋を手に取っていう。
それは3キロと書かれた袋に入っている米だ。この米袋は4つだけで、おそらく1班1つだろう。
⋯⋯だけど、あまりにも少ない。
3キロは20合で、およそ20人前だからだ。
5泊6日である今回の修学旅行で必要になるのは、一日2食としても40人前は必要となる。
最終日である6日目は隣の島に移動する予定になっているから、6日目のことは考えなくていいかもしれない。
「少ないね」
「明らかに外に出ろって言ってるよな。言われなくても、俺は出るけど」
僕も、白米を調味料で食べ続けるのは嫌だ。
やっぱりお肉は必要だし、野菜も必要。サバイバルだからと言って栄養バランスに偏りが出るのは避けたいところだ。
しおりの地図にはきちんと何の野菜がどこで取れるか記載されているので、取りに行くのは容易となっている。
「まずはどの程度戦えるか、だな」
翔の提案により、僕たちは早速外に出ることになった。
外に出て肉を探しに来たのはいいけれど、この地図には出てくる動物の名前しか書かれていない。
各自武器を手に持って周囲を見渡す。
それぞれの館と船の発着場だけは、動物避けが施されているので安全なルートだけど、他のところでは普通に動物が出てくるらしい。
「っ出た!」
ナイトが大きな声を上げて僕たちは一斉に視線の先を見る。
そこにいたのは体高1mほどありそうな猪。猪の肉は食べられるけれど、僕は食べたことが無い。まぁ、魔物の肉よりはおいしく食べられるだろう。
「じゃあ、作戦通りに」
「「「了解!」」」
僕たちは館を出る前に作戦を考えてきている。
猪が僕たちを発見し、一直線に走ってくる。それを見た僕は、すかさず弓に矢を番え弦を引いた。
狙いすませて矢を放つ頃には、僕たちと猪の距離は10mあるかないかだった。
矢を放つと同時に、ナイトと翔は猪に向かって走っていく。
先に矢が猪の足元に刺さり、猪は進行を辞めざるを得ない。
矢を放った張本人である僕に双眸で見据える。だけど、それも長くは続かなかった。
猪の脳天に翔の拳が落ちる。
直後、猪が膝を折って地に伏す。翔がその場から離れると同時にナイトの槍が猪の頭を斬り飛ばす。
猪の頭はゴロンと転がり、血の匂いを撒き散らした。
血の匂いは久し振りだ。ただ、そんなところで笑みを浮かべてしまうと狂気以外の何物でもないので、堪える。
「案外うまくいったな」
翔が呟くと、皆がそれに同意した。
「それより、早く逆さまにして血抜きしないと」
そうじゃないと、臭くなる。
魔物も同じだったから、対処できなかった奴は全て捨てることにしていたくらいだ。
「詳しいね」
「そんなこと言ってないで手伝ってよ」
真央はふふっと笑って手をひらひらと振る。手伝ってくれないということだろう。
「わっ!」
その時、血だまりに足を滑らせてすっころんだ。
当然、服に血が付くわけで、そこから浸み込んできた血が皮膚に触れる。とても気持ち悪い。
「あぁ。奈緒ったらそんなに汚して⋯⋯」
半分は真央のせいだよ⋯⋯。
人の所為にしても血は消えない。魔法で洗浄することも可能なのだけど、するわけにはいかず、結局風呂に入ることにした。
こんな時間から入っている人なんていないだろうし。
幸い、館からそれほど離れているわけでもない。
血抜きと館への持ち帰りは3人に任せる。戦闘に関しても、あれなら問題ないだろう。
生き物を殺すことに躊躇いがあると思っていたら、全然違って正直拍子抜けした。
「ごめんね。先に戻ってるけど、ゆっくりでいいよ」
「そっちこそ、臭いは落として来いよ」
そんなこと言われなくてもわかっている。
北の館に戻って来た僕は着替えを持って早速風呂場に来ていた。
温泉のようになっているので脱衣所も無駄に広く、一人だと少し心細く感じる。
「にしても⋯⋯魔法、使いたいな。今なら誰も見てないし、ちょっとくらいいいよね」
龍脈の力を使う。
ここは東京都内よりも龍脈の力が濃いので、魔力に変換せずそのまま使うことにした。
髪色が銀髪に変わり、一瞬靡く。
「うん。これならいいでしょ」
すっかり綺麗になった服を見て頷く。
今の僕は全裸で、体もついでに綺麗にした。つまりお風呂に入る必要はないのだけど、入っていないと一目瞭然だから入ることにする。
扉に近づくと自動で開き、中に入る。湯気でよく周りが見えないけれど、たぶん誰もいない。と思う。
少なくともこんな昼前に入る人はいないだろう。
体は既に綺麗になっているので、そのまま湯船に浸かる。湯船に浸かる際、持ち込んだタオルは頭の上に鎮座させた。
だけど、入り口近くだともし誰かが入ってきた時逃げられないと思ったので、奥の方に移動することに決める。
そのまま奥まで行くと、人影が見える。
⋯⋯誰かいるのかな?
そう思って近づくと、向こうもこちらに気付いたようだ。ゆっくりと近づいてくる。
お互いに立ち上がり、だけど湯気が頑張っているのでまだ顔も体格も見えない。
「⋯⋯鈴木?」
不意に立川の声がした。僕の視力がいかによくとも、今世では慣れない湯気だからかよく見えなかったのだけど、相手は僕が誰かわかったらしい。
というか、その相手が問題だ。
「⋯⋯立川⋯⋯くん?」
たぶん嫌われているだろうから、くん付けにしておく。
お互いに視認出来る位置まで近づいた。
「なんでここに?」
それはこっちのセリフだよ。
どうしてここにいるんだよ。
まだ朝の11時前だ。
いい加減、そのぶらぶらさせているものをしまってほしいなぁ⋯⋯。
そう思いながら遠い目をする。
「ん⋯⋯?」
立川が僕の視線を追い、気付くと同時にバシャン!と水音が鳴った。
「そ、そんなにじろじろ見るな!」
ああ、確かに今の姿じゃ見られたくないのかも。
僕としては非常に見慣れたものだったから普通の態度になってしまった。
そして、立川の視線が外れてはこちらを向きが繰り返される。
あー⋯⋯これはあれか。
僕も立川の真似をしてバシャン!と音を立てて、だけど可愛らしく口元までお湯につける。
これ、女子力高いよね?




