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第17話 僕、聖龍と契約するみたい

 目が覚めると朝になっていた。

 この前勘違いした時のようにまた同じ勘違いはしない。太陽が山の間から出てきたから今回は間違いなく朝だ。夕方なら山の間に消えていくはず。



 記憶が朧げで少し魔力を使いすぎたみたいだ。ドラゴンと戦ったところまでは記憶があるけどそれからの記憶がまだ鮮明に思い出せない。


「でも生きてるってことは勝った…ってことかな」


 一人つぶやきを零す。周囲には誰もいないと思ってのこと。

 しかし、予期せぬ返事が返ってきた。


『そうなるのぉ。汝は強い。儂と契約してくれぬか?』


 ばっと声のした方を振り向くと、そこには光り輝く毛に覆われたドラゴンがいた。

 怪我は全て治っていたけど毛が一部切られている。おそらく戦いの中で切れたのだろう。


「どうして…!あの時止めを刺したはず!」


 そうだ、思い出した。

 昨日の最後の一撃。あれは僕の持てる全てを注ぎ込んだものだ。生きているなんておかしい。


『あれには驚いたが…儂の生命力を持ってすれば少しの体が残っていれば再生が可能じゃの』


 つまり、このドラゴンは「儂を殺すなら全身を一撃で薙ぎ払え」って言っているのだと思う。そんな無茶なこと言わないでほしい。

 だって、僕の最大の攻撃を食らったにも関わらずピンピンしているのだから。


「…それで、契約っていうのは?」


 さっきこのドラゴンは契約して欲しいと言っていた。どのようなものかは聞いておく価値がある。もしメリットがあれば契約をしてもいい。


『儂と契約すれば、汝は儂の魔力も使うことが出来る。汝が望めば共闘することも可能だ。この契約は誇り高き血統を重んじる聖龍の一族に伝わりしもの。勝者とは契約をしてその一生を共に過ごすという太古の盟約がある』


 ドラゴンはやはり聖龍だった。これだけ光り輝いてたらそうだろうな、と思っていたけど、実際に言われて見ると妙に納得させられる。

 そういえば、このドラゴンからは敵意が消えている。


「なるほど。わかった、じゃあ契約しよう」


 僕はミスティが起きる前に契約を済ませてしまおうと思い、聖龍を促した。


『では、「太古の盟約に従い、汝は我と共に道を歩み生涯を共にすることを誓え。我が血を糧に神聖なる龍族に伝わりし『礎の儀(いしずえのぎ)』を行い給え」と言うのじゃ』


 ただ言うだけで良いのかな、と思ったので一応心を込めて唱えて見る。何事も真剣味が大切だ。



『太古の盟約に従い、汝は我と共に道を歩み生涯を共にすることを誓え』


 一言一句漏らさずに唱える。心の奥底から言葉を出すように暖かい言葉をイメージして。


『我が血を糧に神聖なる龍族に伝わりし礎の儀を行い給え』


 最後まで言い切ったことに安堵したところに、急激に魔力が減る感覚に陥った。全体の半分ほどの魔力が持って行かれてしまった。


 その代わり、おそらくこの聖龍のものだと思う魔力が体に入り込んできた。聖龍の魔力は僕と似たような感じだ。魔力総量も同じくらいらしく、体に入り込んだ魔力は僕が持って行かれたものとほぼ同量。


『これで契約は完了じゃ。しかし、予想はしておったがまさか本当じゃったとは。まぁ良い。これからは念話で会話ができてどこでも儂を召喚することが可能じゃ。召喚には魔力を消費しないから安心せい。では、達者でな』


 一方的に別れを告げた聖龍が一瞬にしてその姿を消した。召喚魔法があるんだしきっと空間魔法的な転移魔法もあるんだろう。実際、ちょっとした転移ならできるし。



 太陽が完全に昇り、ミスティが起きた。

 ミスティには本当に世話になった。あれだけの怪我を治したってことは秘術を使ったはずだ。


「おはよ、ミスティ。怪我、ありがとう」


「おはよ、お姉ちゃん。どういたしまして」


 ミスティが僕に笑いかけてくれた。ミスティは僕の天使だと常々思っている。ミスティを嫁にしたければ僕を倒していけ、と言いたいくらいだ。


「じゃ、朝ごはん食べて行こっか、クラッセンに!」


「うん!」


 朝ごはんを用意すると「やっぱりお姉ちゃんの作るご飯はおいしいね」と泣き始めてしまい、収拾するのに少し時間がかかった。


 何か、忘れているようなことがある気がする。でも、忘れていいようなことをわざわざ思い出すまでもない、と結論付けた。



 二日後、僕たちは観光地として有名な街・クラッセンに辿り着いた。


 クラッセンは噂通りのところで、人が溢れている。


「(人がゴミのよ…いや、パクリはよくないよね)」


 それにしても、既に夜になっているのにこれだけの人がいるのは凄いと思う。流石観光地だ。


「第二の街よりも人多いよ!凄い!」


 ミスティが今にと走り出しそうな勢いではしゃいでいるのでその手綱を握る。


「まずは宿だよ、ミスティ」


「うぅ…そうだね。明日いっぱい見ればいいんだよね」


 ぶつぶつと自分に暗示をかけるようにつぶやいているのが気になるけど、おかしくならない程度ならいいかな。




 無事宿を取ることが出来て旅の疲れを癒すために深い眠りについた。


 朝になると、いつもより騒がしい街の喧騒に叩き起こされ、微妙に寝不足だ。


 ミスティと一緒に朝食を済ませて宿を出た先には、昨日の夜よりも増えている大勢の人の波に攫われた。

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