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第15話 僕、ライブをしたみたい

「遅れてすみません!」


 既に揃っていたようで、僕が最後の一人だった。

 因みに一般の入場は11時となっていて、真央はこの近くにあるゲーセンで時間を潰すと言っていた。

 この時間に開いているのか気になったけれど、真央がそういうなら開いてるのだと思う。


「大丈夫だよ。まだ余裕はあるからね」


 緋室さんに言われて、そう言えばと思い出す。


 ……入場ゲートが開くのは9時だった。


 あと30分くらい遅刻していても、間に合っていたということだ。

 でも、この場には僕たち以外の参加者が勢ぞろいしていて、9時前に着くようなこと、恥ずかしくてできない。

 そのあと、4人に散々なことを言われながら緋室さんとの打ち合わせだとかしていると、あっという間に9時になった。


「中に入ったらまず受付に行くからね」


 緋室さんが先導し、そのあとに続く。


「はい、次の方」


 並んでいると、呼ばれたようで受付の方に歩いていく。


「絆driveです」


 緋室さんは活動名を告げ、受付の人がその項目に線を引いた。


「では、絆driveの皆様は控え室18になります」


 もっとここにもハイテクを導入すればいいのに、なんて思っとのは一度や二度ではなく、他のところでもよく思うときがある。

 案内板をダウンロードして、ドーム内マップを手に入れると控え室18というのがどこにあるのかすぐにわかった。

 そこに行くと、扉のところには絆driveと張り紙がされている。

 緋室さんが扉を開き、中に入るとそれに続いた。

 それほど広くはなく、ダンスの練習が出来るかどうか、といった広さだ。


 僕たちのアイドル活動名は緋室さんが決めた。

 僕たちは無関係で、そこにセンスがあろうとなかろうとこれからの僕たちの名前になるわけで……出来ればみんなで一緒に考えたかった。


「それじゃ、最後に確認だけしようか」




「うん、いい感じだね。これなら恥はかかないはずだよ」


 それは裏を返せば、印象に残らないということなのでは……。

 最低限のことだけしても意味がない。

 かと言って、これから急激に上達するわけでもないし、どうしようもない。


 時間を見てみると、もう既に12時に迫っている。

 一般の入場が11時で、始まるのが12時。終わるのが夕方18時だ。


『会場にお越しの皆様〜!ようやくこの日がやって参りました!第4回アイドルフェスティバルの開会宣言を致します!』


『ぅおぉぉぉーー!!』


 どわっと会場が沸き起こる。

 それが、控え室にいる僕たちのところにまで届いてきた。

 始まるんだ、やっと。

 スカウトされてから短かったけれど、アイドルとしてのデビューがすぐそこで待ってる。

 心臓が高鳴り、聖龍と初めて戦った時の殺し合いを彷彿させる。

 あの時、初めて命の危機を感じた。

 今は、違う。

 でも、確かにあの時のような緊張感、緊迫感が感じられる。


「奈緒、大丈夫?」


 柚が顔を覗き込みながら聞いてきた。

 だけど、そう言ってる柚だって汗が出てる。

 他の3人も緊張していて、手に汗を握っている状態だ。

 初めてが東京ドームだなんて、誰が想像しただろう。

 たぶん誰も想像していない。緋室さんでさえ、想定外なはずだ。


「絆driveの皆様、次ですので準備をお願いします」


 僕たちは控え室18。

 18というのは18番目という意味だ。

 前座と言っても、初ライブの組が他に17個もあるらしい。

 緋室さんの先輩の融通で最後にしてもらったのだとか。

 最初と最後だけは嫌だったなぁ……なんて遠い目をしていると、腕を引かれる。


「ほら、何ボサッてるの。早く行くわよ」


 何かと柚は面倒見がいい。

 腕を引いてくれた柚に感謝しつつ、入場前控え室に入る。

 もう出番は次。

 こんな大舞台で失敗なんてできない。


「緊張してきたね」


「もうずっとしてるじゃない」


「そうだけど……なんか、うまくできるか心配になってきた」


 柚と彩華がひそひそ声で話すけれど、たぶんみんなにきこえている。


「失敗するつもりでやればいいんだよ。お客さんをカボチャだと思って。カボチャがダメなら別の野菜でもなんでもいい。失敗を恐れずに行こう」


 自分に言い聞かせるように言うと、4人が笑い出した。

 あの感情を見せない愛花でさえ笑っている。

 変なこと言ったかな?


「奈緒は変わってるね」


「お客さんをカボチャなんて……ふふ」


 この時代ではそんな例えないのだろうか……。

 少しの間呆然としていると、緋室さんが声をかけてきた。


「はい!緊張もほぐれたみたいだし、時間だからいくよ」


 緋室さんはここでお別れらしく、5人で案内役の人について行き大きな扉の前に行く。


『は〜い、それでは、前座最後のアイドル、絆driveの皆様です〜!』


 会場の声が聞こえたかと思うと扉が自動的に開いた。

 ここで近未来技術を持ってくるとか卑怯だよ……心臓が縮み込んだ。

 歓声はないまま、僕たちは中央にある台座に向かって歩いていく。

 打ち合わせ通り到着すると、司会進行の人とその他の人に「がんばってね」と言われながら台座の上に立った。

 すべての座席が埋まっているわけではなさそうだ。

 それでも、人が多すぎる。


『初めまして、絆driveです。一曲目は「星降る夜」二曲目は「絆」です』


 代表して彩乃が言った。

 そして、曲が流れ始める。

 サイリウムなどが見えるなんてことはない。

 初めて聞く曲なのだから、そう言った振り付けもまだ出来ていない。

 出来れば嬉しい。

 だけど、と意識を戻す。


 今は全力でやりきらないと。

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