第10話 僕、パーティ戦闘するみたい
「それじゃあ、視界のこの辺にある奴を押してくれ。そこにチュートリアルの他にエリアが11個あるだろ?」
言われて操作すると、本当にあった。
というか、こんな右上の隅っこにあるなんて普通気付けないよ。
内心で文句を垂れまくり、僕はフォックスさんの指示に従っていった。
「まずはエリア1を押してもらえるか?押したら視界が切り替わるからな」
「よし、じゃあパーティ申請を教えるから……」
視界が切り替わった後、小さなアイコンやパーティに入るために必要なことなど、細々としたことを教わった。
無事にパーティに加入出来たらしく、僕のHP、稼働時間、熱量のバーの下に新しく名前次のHPバーが出現する。
そのトップにはフォックスさんの名前があり、その下は見覚えのない名前ばかりだ。
フォックスさんの名前の左側には☆マークがついていて、これが先ほど説明されたリーダーのマークなのだと思う。
「おっす」
軽い声をかけて【Lied】という人が、続けて【Oreng】という人が出てきた。
「俺はライドって呼んでくれ」
「俺はオレンジで頼む」
「僕はリステリアって呼んでください」
互いに挨拶を交わし、けれど後一人いないとおかしい。HPバーの数と合わない。
僕の下にあるHPバーは4本。あと来ていないのは……【Senjin】って人だ。
先人?戦人?戦いが好きだから、こんな名前ということかな。
その予想は大いに間違っていた。いや、間違ってはいない。だけど、その人を見た瞬間に思い浮かんだ言葉は……
「すまん、遅くなった」
渋い枯れた声にその容姿が合わさり、一つの結論が導き出される。
この人は仙人に違いない、と。
仙人の読み方を少し変えて【Senjin】にしたのだとはっきりわかる。
逆に、他の人たちは全くわからない。唯一オレンジって人はオレンジ色のアバターをしていて気持ち悪い。
「遅かったな、仙人」
「さて、それじゃ行くか」
皆、装備を整え始めた。
機体は甲板に全員分でていて、パーティになるとパーティメンバーのものも見えるようになるらしい。
そして、ここは待機室のようなところ。というより、チャンネルとして考えたほうがいいだろう。
だけど武器を購入出来るのはチュートリアルエリアだけだ。
他のエリアにはNPCはいるけれど、修理などでしか使えないみたいなのだ。
「誰だよこのボロいやつ〜」
はい、僕です。
おずおずと挙手すると、ライドさんが笑うのをやめて引きつった笑みを浮かべた。
「いや〜あっはっは!たまにはこういう時もあるさ!」
背中をバンバン叩かれ若干前のめりになる。
変な意味はない。
ついでに言っておくと、僕の機体の修理時間は28時間と表示されていたので、このままの状態で行くことになった。
HPバーが減少しても戦いに支障が出ることはないので問題ないだろうとのこと。
【出陣】
乗り込むとそれが出てきたので、押して待っておく。
パーティメンバーが全員押したのを確認してからリーダーが押すらしいので、できるだけ早く押したほうがいい。
そして、視界がまた切り替わった。
「エリア1なんて久しぶりだな」
「ばっか、まだ1週間経ってないだろ?」
ライドさんとオレンジさんとフォックスさんはふざけあっていて、入る隙がない。更に仙人さんがこちらをガン見していて正直怖い。
このゲーム、フレンドリーファイアが出来るから洒落にならないのだ。
僕は背後に十全に気を配り、不意打ちを受けてもHPが無くならないよう逃げる体勢も整えておく。
「行くぞ」
『応ッ!』
フォックスさんの掛け声で全員が返事をして、ヘリコプリオンへと向かった。
初速から加速し、僕は一気にトップスピードに乗る。
チラチラと熱量と稼働時間を見てみると、両方ともまだまだ余裕があるようだった。
修理に出さなくても、冷却と稼働時間リセット……つまりガソリンの補給のようなものはできるので、こうして動かせるわけだ。
そして、気付いた時には孤立していた。
「あれ?」
目の前には無数の敵、周囲に味方の姿はない。
ハメられたっ!!
「おい!前に出過ぎだ!」
そんなことはなかった。
ただ単に、僕が前に出過ぎらしい。
ふと振り向くと、ガード型のフォックスさんは素早さが100で防御力が200なので、元々遅いのもあって一番後方にいた。と思っていたら、そこに陣取る気らしい。
フォックスさんとの距離メーターには13キロと表示されているので随分と離れている。
次に遠いのはオレンジさんだ。
オレンジさんもガード型らしいけれど、離れている距離は3キロと短い。それでも十分遠いのだけど、戦闘になると一瞬に詰められる距離だと思う。
そしてライドさんが2キロのところにいる。彼はバランス型らしく、機体は僕のものより大きいけれど、防御型であるフォックスさんとオレンジさんよりも小さい。
その二人の機体よりも大きいのが、仙人さんだ。
仙人さんは僕の機体の少なく見積もっても2倍はある。その機体は攻撃型。ステータス的にはおそらく素早さが150で火力が200なのだろう。
けれど、仙人さんは僕の数百メートルの近場にいた。
本気で僕を殺す気なのではないだろうか……。
「いつまでこっち見てるんだ!前見ろ、前!」
怒鳴り声を上げて言われて振り向くと、チュートリアルで稀に出てくるタイプのヘリコプリオンがいた。どうやらこのエリア1ではそれが標準らしい。
僕は瞬時に後退し、停止モーションもなく刀を抜き放った直後に前方へ駆け抜けた。
その刀身にはヘリコプリオンの体液がぬめりとついており、少しの間をおいて後方で、すれ違いざまに斬ったヘリコプリオンが爆散した。
あの時、刀が折れた時はショックだったけれど、この刀なら刃が通る。
刀を見て満足していると、後方から援護射撃がきた。
それは機体の横を通り過ぎて近いきていたヘリコプリオンに命中した。
その後も何度かの狙撃を経て何体ものヘリコプリオンを倒していくパーティ。
だけど、仙人さんは動かない。僕の動きをじっと見ているようなのだ。
ふと、仙人さんが刀の柄をチャッと持ち上げた。
そして僕の頭上に向かって高速飛翔し、一閃。
上を見上げると死角から回り込んでいたのか、ヘリコプリオンの死骸が僕の機体に落下する。
「うわぁ……」
なんだろう、この気持ち。助かったのはいいけれど、この死骸本当に気持ち悪い。というより、どうして爆散しないのかな?
そう思って目を凝らして見るとHPバーが僅かに残っていた。ほんの数ドットだ。
え?どうするの、これ。たぶん攻撃されないと思う。だけどこちらからも攻撃できない。したら自爆だ。
すると、フォックスさんが小口径のスナイパーライフルに変えところが見えた。
瞬間、背筋がビシィ!と凍りついた。
これはあれだ。頭に乗せた缶にボールを当てるとか、狙撃するとか、家の中にあるゴミ箱にボールを入れるだとか、そういう類のやつだ。
「や、やめて!それだけは!」
死ぬから!
パシュッ!
そんな気の抜けた音とともに弾丸が近付いてくる。咄嗟にそれを回避した。
ヘリコプリオンにだけ当てられるとは、考えにくい。
「なに避けてるんだ!?ていうか避けられるものなのか!?」
「だって機体に当たっちゃう」
「大丈夫だから、次は避けるなよ」
そう言われて、だが断る、と内心で豪語する。
後方からの小口径から放たれる小さな弾丸を勘だけで交わしながら、敵対生物であるヘリコプリオンの襲撃にも対応し斬り裂いていく。
急所を斬れなかったヘリコプリオンは生き残り、僕に向かってくる。これではまずい。
そう思い、僕は封印したはずの限界突破を始めた。




