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第15話 僕、ドラゴンに勝ったみたい

 炎に包まれたドラゴンは少し焦げた匂いを発している。その匂いを嗅いでいられたのも束の間。


 ドラゴンが攻撃の予兆を見せた。


「グガァァアアアァァァ!!」


 咆哮と共に辺り一面を焼き尽くそうかと言うほどのブレスが僕に押し迫る。しかし、僕を焼き払うことは叶わない。


 僕は被害を最小限に抑えるために同規模の似た魔法を行使した。


『烈風』


 この魔法は先ほどの烈火を風で再現したもの。違うところがあるとすれば、烈風は前面に放出し続けることが出来るということ。その気になれば口から出すことも出来る。


 ブレスと烈風が拮抗し、烈風の威力を弱くならないことを確認したドラゴンがブレスを解除して空を飛んだ。


 僅かにその体には身体強化が施されているのがわかった。


 そして、ドラゴンが光を帯び始める。

 その光は魔力が残滓となって空に漂っている現象だ。これでドラゴンはようやく本気を出すということになる。


 ドラゴンが本気になると圧倒的な膨大過ぎる魔力を魔法に変換できずに空に漂う現象が起こる。


『下等種族たる人の子よ。その力、どこで手に入れた』


 空を飛んでいる…翼を動かしていないから浮いているというほうが正しいかもしれない。ドラゴンが突然話しかけてきた。やはり、ドラゴンは知能が高いんだな、と思う。


「結晶を取り込んじゃったんだよね」


 僕がそう言うと、ドラゴンの顔に厭らしい笑顔が張り付いた。小声でぶつぶつと何か言っているけど、僕には聞こえない。


『そろそろ本気で行かせてもらうぞ』


 ドラゴンが前足を使って空を切り裂いた。その魔法は僕のところまで瞬時に到達し、一瞬動くのが遅れた僕に命中した。


「うぐっぁ…」


 身体強化によって切り飛ばされはしなかったけど、右腕を深く抉られた。


 出来る限りその腕を見ずに痛みを誤魔化し、僕はドラゴンと同じ魔法を使った。


『エアカッター』


 左手を横一線に払うと空を切り裂く斬撃が解き放たれた。その威力も速さもドラゴンとは比較にならないほどのものだ。

 それでも、ドラゴンの毛はものともしなかった。

 かきん、と音が鳴り響きその威力にドラゴンが後退することになったけど傷は入っていない。


 このままでは拉致があかないと思い、僕は徹底抗戦することにした。


『エアハンマー』『横薙ぎ』『身体強化・改』『メテオ』『雷撃』『一閃』『氷結』『烈・風林火山』


 僕はドラゴンに攻撃をさせないように絶え間なく魔法を繰り出した。


 エアハンマーは距離を無視して上から地面に叩きつけることが出来る魔法。これは空を飛ぶ魔物相手への対策だ。地上にいてくれた方がやりやすい。

 ドラゴンも例に漏れず、その30mはあろうかという巨体を地面に叩きつけた。


 そこに横薙ぎを放つ。

 横薙ぎはエアカッターの上位互換で先ほどよりも鋭さを増し、1本の斬撃だったものが5本になりドラゴンへ迫った。

 その斬撃は毛を切ることに成功し、ドラゴンが激昂してしまった。


「ガァァアアアアアア!!!」


 怒りに満ちた咆哮が大地を揺らし、大気をも揺らす。

 ドラコンが僕に対抗して強力な魔法を繰り出してきた。

 でも、そのどれもが遠距離攻撃で発動から到達まで0コンマ秒かかっている。

 僕は身体強化・改をかけてそれをひたすら躱し、全ての魔法を避け切った後メテオを発動する。


 ミスティが放ったものとは違い、その威力は本物の隕石のようにドラゴンへと到達し大地が唸りを上げた。


「グゥゥゥ…」


 ドラコンが顔を顰めたのを見て、効いていることを確認する。

 ドラコンの中には魔法が効かない奴がいると言われているからだ。


 僕はメテオを発動し続けながら雷撃を行使する。

 そのままの意味でただの落雷だ。されど落雷で、その落雷は必中する。そして落雷は体を中身から燃やしてくれるのだ。

 ドラゴンに命中した雷撃はドラゴンの体中を焼き付ける。ドラゴンは唸り声を上げることも叶わず、僕は一閃を使った。


 極限まで引き上げられた身体能力に加え、魔力で作り出した禍々しい刀剣を左手に居合の動作でドラゴンの横を通り過ぎる。


 かちん、と魔力で作り出した鞘に刀剣をしまうとドラゴンがいる空間が切り裂かれた。


 ドラゴンは体を二分され、表情には驚愕と怒りが混じっている。


 それでも死なないのがドラゴンで、切断面から光の糸が現れ現代日本の医療のように縫い付けていく。


「えっ…なにそれあり?」


 思わず呆けた声が出てしまい、その隙をドラゴンが見逃すはずがなかった。


 ドラゴンが僕に向かいあったまま何かを唱えたと思った時、ドラゴンの周囲に無数の光球が現れた。


 そして、無数の光線が僕に襲いかかった。


 僕はひたすら躱す。

 しかし、数が多すぎて躱しきれなくなっていき、始めに左肩を撃ち抜かれた。

 一度撃ち抜かれると集中力が落ちて更なる傷を増やす。

 左肩に続いて右太もも。それに続き左足の脛。そして脇腹にも食らった。

 それぞれの箇所から血が溢れている。


「ウァァァァアアアア!!」


 あまりの痛みに思わず悲鳴をあげてしまい、兵士たちを安全なところへ連れて行っていたミスティがぼろぼろと涙を流すところが見えてしまった。


「(ここで負けるとミスティが…絶対に負けられない)」


 僕は氷結を行使してドラゴンの動きを一瞬だけ止める。

 その時間で僕は魔力を練り、最大質量の魔法を使った。


『烈・風林火山』


 この魔法はファイアートルネードに土属性も追加し、ドラゴンを覆い尽くすほどの巨大なものとなる。


 3属性による合成魔法に打ち付けられたドラゴンは傷だらけになり、息も絶え絶えになっていた。

 僕もドラゴンも満身創痍で、よく戦っていられるな、と自分でも思う。


 僕は残りの魔力全てを練り、とっておきの魔法を繰り出した。


零・弓核(ぜろ・きゅうかく)


 前世で習っていた弓道の要領で傷付く体には鞭打ち構えた。


 その直後、僕の前に5つの矢が出現した。

 火・水・土・風・闇の属性を持った矢だ。それらを線で繋ぎ合わせ、5芒星を作り出す。


 僕は弦を放った。


 

 瞬間、5芒星となった矢は光速を超えてドラゴンに命中し、その巨体に大穴を開けた。

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