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第8話 僕、学校案内してもらうみたい

 僕の機体が修復されるまであと1日。あと1日の我慢だ。

 そう思い、僕は体を起こす。

 リビングに行くと既に真央は起きていて、昨日の帰り道に話していた学校案内をしてくれるらしい。

 まだこちらに来てから日数も経っていないし、来希も部活動が忙しいらしくて遊べないみたいなので、真央に学校案内をしてもらうことになったのだ。

 この学校はとにかく広いので、どのくらい時間がかかるか……もしかしたら1日かかるかもしれない。


「奈緒〜、用意できたー?」


「もうすぐー」


 朝食を終え、最後にお茶を煽り玄関に行く。

 扉を開けて待っている真央に「お待たせ」と言って一緒に歩き始めた。


「奈緒って何もしてないのにそんなに綺麗なの?」


「あー……そうだよ。うん」


「いいなぁ。私なんて毎日手入れしないと大変なことになっちゃうのに」


 ぷくーっと頬を膨らませる真央は愛らしさを感じさせる。

 でも、真央。僕の髪の毛が常時綺麗なのはたぶん、チートなんじゃないかなぁ……。

 神様に要求したあのチート欄にそんなのはなかったけれど、こういうものは付属して付いてくるのだろうか?


「ここが私たちの教室!2年A組だよ」


 覚えた?と言われ、来た道を振り返る。


 うん、無理。


「ごめん……」


「あはは、そっかー、ダメかー」


 言いながら遠い目をする真央にもう一度心の中で謝っておき、僕は真剣に来た道を思い出す。

 だけど、何回も曲がっせいで思い出す事が出来ない。こうなったら魔力の道筋でも書いておこうか……これは魔法になるのかな。ならないよね?いいよね?


「とりあえず次行ってみよー」


 真央が唐突に明るくなり、先陣を切っていく。

 僕はそのあとに続いて歩き、体育館とプールが同じ建物まで行ったり、更衣室で戯れつつ、昼食時になった。


「そろそろお腹すいてきたね」


 お腹をさすってその言葉を強調させる。

 真央のピンと立っていたアホ毛は今や項垂れてしまっていて、お腹が空いているのだと確信を持って言えた。


「食堂はないけど、裏食堂があるから行こっか」


「え?」


 なにそれ、そんなのあるの?

 確かこの学校に食堂はなくて全部生徒それぞれが作らないといけなかったはずなのだけど。

 僕の心配を他所に、手を引きながらズンズンと知らない道を進んでいく。

 そこにあったのは古びた小屋。

 そして森の中である。

 森の中に入ってしまった。

 これ、出られる……?


「ほら、入るよ」


 更に強く手を引かれ、扉を開いた真央がそのまま中へ入り、僕は転がるように入った。

 明るい照明が僕たちを照らす。

 薄暗い森の中を歩いていたからか一瞬目が眩んだけれど、すぐに持ち直した。

 はっきりと映るようになった視界に広がる光景を見て僕は思った。これは間違いなくあれだ、と。

 厨房が店の奥にあり、その厨房には数人の同じ年頃の男の子がバンダナを巻き、客の注文を取っていた男の子から聞いたものを素早く作り上げていく。

 その手際に無駄は少なくさながらプロのようだ。


「「「いらっしゃいませー!」」」


 入店の鈴が鳴ったと同時に、おそらく店員だと思われる男の子3人から同時に発せられた元気のいい言葉。

 そのうちの、注文を受けていた男の子の一人が僕たちのところに寄ってきた。


「いらっしゃいませ!お二人様ですか?」


「はい」


「では、こちらのカウンター席へどうぞ」


 素早く席に案内された場所は店の端っこ。しかし、厨房の調理風景を見るのであれば絶好の場所だ。


「メニューはこちらになります」


 サッと差し出されたメニューには渦巻きが複数プリントされていて、やはりそうか、と僕の予想の的中が予感できた。

 ここはこの時代では全く見ない、ラーメン店。

 ラーメン店自体はたくさんあるけれど、この時代の飲食店はどこもかしこもテーブル席しかなく、更に調理風景は見えず出来物を運んでくるのはそれ専用のロボット。

 しかもメニューは全て電子データでホログラム透明されている。


 だけど、ここは違う。

 近未来技術を一切使わない2014年と変わらぬ風景がある。

 懐かしいものを見て、熱い涙が頬を伝っていくのが感じられた。


「奈緒……?泣いてるの?」


「えっ、いや、違うよ!目にゴミが入っただけ」


 慌ててとり繕う。

 こんなので泣くなんて、僕も涙脆くなったものだ。……いや、その辺りはよくわからないけれど。


 改めてメニューを見てみると、当店オススメ!と大きな見出しがされている絶品ラーメンがあった。


「ご注文はどうされますか?」


 ご注文はうさ○です。


「この絶品ラーメンのセットを一つください」


「私はこっちの味玉ラーメンで」


「かしこまりました。出来上がるまで、少々お待ちください」


 そう言って厨房に向けて指示を出す男の子。


 ラーメン店で働く人は今も昔も変わらずカッコいいんだなぁ……。




「美味しかったね」


「うん、また行きたい」


 味は学外にあるラーメン店より遥かに上で、その癖値段は三百円。学生でも手軽に手を出せる。

 なるほど、確かに裏食堂だ。


 その後、ラーメンのことばかり考えていて校内施設のほとんどを覚えられなかったのはご愛嬌だ。

 ちなみに、あの裏食堂は魔力でしっかりとマーキングしてあるので、これから一人でも行くことができるだろう。



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