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第14話 僕、ドラゴンと戦うみたい

「ドラゴンだと!?何故こんなところに!」


 ヒースさんが声を張り上げた。でも、僕もミスティも同じくそう思っている。


 ドラゴンは通常、自分の縄張りから出ないはずだ。縄張りを荒らしたりすれば別だと思うけど、ドラゴンが住んでいるところは人が生きるには過酷すぎる場所にある。

 そんなところに行っても何の得もないはずだ。


 なんにせよ、やり過ごす必要がある。


「ミスティ!全魔力遮断、隠密、隠蔽だ!」


「んっ!」


 ミスティが返事した直後、辺り一帯にあった魔力がミスティに吸い込まれていく。そして魔力が流れ込んでこないように壁を作り遮断する。ミスティは吸い込んだ魔力を糧にして『隠密』と『隠蔽』の魔法を行使した。


 全魔力遮断という魔法は、その名の通り、魔力を遮断する魔法。

 空気中に散らばっている魔力の残滓、そしてミスティ自身の魔力、それに加えて今ここにいるヒースさんの魔力。


 ヒースさんは魔法を使う人ではないけど、人は誰しも魔力を持って生まれる。それを無意識に魔力の効率が最もいい身体強化に振り分けられ強くなっていく。


 でも、人が感じることのできる他人の魔力は魔法を使う人ほどの魔力量でなくてはならない。


 本来は感じることのできない魔力の遮断。これはまさに神業と言っていいほど難しい。僕はそういうところは器用ではないからミスティにいつも任せている。


 僕も自分の全魔力遮断と隠密と隠蔽は既にしている。


 もう夜になっている。最初に探知した10km以内に入ってから2時間経っていた。


「グォォアアアアアアアアア!!!」


 暫くすると、今度はミスティとヒースさんにも聞こえるほど近くなった大音声のドラゴンの遠吠えに大気が震え、二人の膝が笑った。




「お前らぁぁあ!くたばるんじゃねぇぞぉぉおお!!」


 突然聞こえた大声に驚いたのはヒースさんだけだ。

 僕とミスティは探知魔法で直ぐそこまで来ていることに気づいていた。彼らの人数は最初に感じた50人から減って30人ほどになっている。


 彼らには見えていないことを確認してほっとすると同時に、圧倒的威圧感に思わず膝を地面に打ち付けた。

 全魔力遮断をすると威圧感に対応する術がなくなることだけが欠点だ。魔力による威圧の回避をすればなんともならないし、僕たちの魔力量ならドラゴン相手でも対等に向かい合えるだろう。威圧とは即ち、魔力の圧力なのだから。


 僕たちが唾を飲み込んで早く過ぎ去ってくれることを祈っていると、遂にドラゴンが姿を現した。


 それはまるで、絢爛と輝く星の瞬きの如き純粋な光を放ち、光を全て反射しているのではないかというほどの圧倒的反射率。

 そのドラゴンは聖龍だとか、光龍と言うのが一番似合う。


 目は爛々と鋭くその目を見たものは石化しても不思議ではない。ドラゴンに鱗は無く、触り心地の良さそうな真っ白な毛を生やしている。ただ、その毛に触れた木の葉は綺麗に切り裂かれたいた事から危険なものであると判断できる。



「は、はなせぇぇぇ!!」


 1人の兵士が口の中に放り込まれ、喉元をごくりと鳴らしたドラゴンから悲鳴が聞こえた。


 そして、また1人ドラゴンに踏めつけられ、また1人ドラゴンの毛に突き刺され、また1人また1人と犠牲者が増えていく。


 僕たちはその光景を見続け、残り隊長格であると判断できる装備をした男とその両隣にいる副隊長らしき女性。


 両手に花とはこの事を言うんだろうか。



「お姉…ちゃん!ミスティもう我慢できないよ!」


 僕が恐怖に打たれながらも呑気なことを思っていると、ミスティが信じられない行動に出た。


 ミスティは全魔力遮断と隠密と隠蔽を解除した。その勢いのまま、普段は抑えている魔力

 を解放する。


「ダメだ!ミスティ!」


 あと少しで回避出来そうだったのに、と口惜しく思う。でも、まだ9歳にも満たない子どもに見させる光景では無かった。どうせなら目隠しと耳栓もして完全に自由を奪っておくべきだったと後悔する。


 僕はミスティを助けるべく、全魔力遮断と隠密と隠蔽を解除する。

 ヒースさんは何がどうなっているのかわからないようで僕とミスティをちらちらと交互に見て深いため息を吐いた。


「…もうどうにでもなれ…」


 ヒースさんは敵わないとわかっているのか動きを見せず、僕たちの動きを注視していた。


『ファイアーレイン!』


 ミスティが高火力の魔法を行使した。

 この魔法は僕が教えた魔法で正式名称は『メテオ』という。


 隕石という言葉をどうにもうまく説明出来ず、ミスティもイメージがしにくかったみたいで雨と炎と岩をイメージした魔法になっている。


 ファイアーレインが地に降りそり注ぎ、その幾つかがドラゴンに命中する。

 それでも、ドラゴンはものともせず兵士たちを追いかけていく。


 そうはさせじとミスティは別の魔法を行使した。


『反転!』


 直後、ミスティとドラゴンの位置が逆転する。

 この魔法は位置を交換する魔法で転移魔法のようなものだ。でも、好きなところには行けないし目に見えているものとしか交換出来ない。


 そして今、僕の目の前にドラゴンがいる。


 ミスティの反転に驚いたのはドラゴンが僕の方を向いて雑魚を見るような目で見下してきた。

 それを意に介さず、僕は先ほどからミスティの魔法を霧散させている。

 先ほどから続け様に反転の魔法で僕と位置を交換しようとしているが、僕の『霧散』の前ではどんな魔法も使えない。


 僕はミスティに「そっちは任せる」と念話で伝えると、こくりと頷いたのが見えた。


 霧散を解除して僕はドラゴンと相対する。




 手始めに、こっそり作った魔法を発動させた。


『逆探知』


 すると、空気が一変し遠くにいたミスティでさえ震えている。


 この魔法は探知魔法を逆転させたもの。つまり、僕の魔力を曝け出す魔法だ。


 そのまま、続けて魔法を発動させる。


『烈火』


 これは単純な炎の魔法。

 但し、その威力は馬鹿にならない。

 ドラゴンを包み込むように燃え始め、初めは赤色の炎。次に青い炎に変わり、次第にその色は薄くなっていく。


「超高温の炎だ。存分に味わえ」


 言葉を出した直後に炎が無色になり、最高温度に達する。


 そして、無色の炎に包まれたドラゴンが目に真剣みを宿した。

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