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第13話 僕、リウドを離れるみたい

 ミスティが起きないようにそっと布団に潜り込んでいかにも、今起きましたという雰囲気を取り繕う。


「おはよ、ミスティ」


「ぅ〜、おはようお姉ちゃん」


 朝の支度を済ませて冒険者ギルドへと向かう。

 さっき通った時よりも人が増えていて活気が少しずつ姿を見せ始めた。


 冒険者ギルドに着き、僕たちは護衛依頼を探す。

 第二の都市へ行く護衛依頼ばかりでなかなか見つからない。僕は探すのは諦めて職員に聞くことにした。


「あの、クラッセンに行く護衛依頼ってありませんか?」


 次に行く街の名前はクラッセン。

 この街は王都に続き2番目に美しいと呼ばれる街で観光地として有名だ。

 そんな街行く商人は多いはずなので護衛依頼はたくさんあると思っていた。


「今はありませんね。最近街の中で何か起こったようで向かう商人も減っています。商人が行かないもんだから情報も入りにくくなっています」


 ミスティの反応を見ると、今にも泣きそうな顔で「行かないの?」と震える声で聞いてきた。

 王都に続き2番目の美しさを誇る観光地には僕も是非行ってみたい。でも、今は情報がなく何が起こっているのかわからない。そこそこ危険な観光地になっているかもしれないので、僕は少し時期をずらそうかと思ったけどミスティを見て行くことに決める。


「じゃあ依頼なくても行けるしとりあえず行ってみよう」


 少し考えていた僕の言葉を聞いてミスティは顔を綻ばせて元気よく頷いている。


「では、戻ってくるようなことがあればどのようなことがあったのかお伝えください」


「わかりました」




 僕たちは冒険者ギルドを出ると、そのままクラッセンの方角にある門に向かう。


 この世界の村と街の違いの基準は至極簡単だ。

 街は煉瓦造りの塀があって門がある。村は木造の柵があって門ではなく扉がある。見分け方がとても簡単なのだ。


「おい、そこの二人。クラッセンに行くのか?」


 門を通ろうとした時、一人の冒険者が駆け寄ってきた。


「そうですよ。護衛依頼が無かったので仕方なく」


「そうか。俺も一緒に行っていいか?一人だと心細くてな…一人だと何か起こった時の対処も出来ないかもしれない」


 僕はミスティさえよければいいと思う。この男からは嫌な感じがしないから。もし何かあってもミスティは結界を張れるし僕は普通に対処できる。何も問題はない。


 ミスティを横目で見ると小さく頷いたのが見えた。きっと「いいよ」って言っているのだと思う。


「僕はリステリア。こっちは妹のミスティです」


 名乗ると、冒険者の男は驚きに目を見開いた。僕も同じ状況なら驚くだろう。こんな小さな子二人が会ったばかりの20台ほどの男性と一緒に旅をすると言うのだから。


「信用してくれんだな。俺はヒースだ、よろしくな」


 その後、ヒースさんの冒険者ランクはBとわかり、僕たちもBだと答えたら「こんな子が俺と同ランク…?」と小声で呟いていた。ミスティには聞こえていないようので調整したと思っていた聴力が不完全だったみたいだ。




「あんまり進まなかったな」


「そうですね。今日はここで野宿で明日は村を素通りでまた野宿をした方がいいでしょう」


 ヒースさんの言う通り、リウドの街からそれなりに歩いたはずなのに村が見当たらない。リウドの街からクラッセンの街まで2泊3日と言われているので、僕たちのペースは相当遅いのかもしれない。


「じゃあミスティはテントとタープね。僕は夕飯作るから」


 ある程度視界の開けた位置に陣を取り、そこにテントとタープを張る。

 初めて見るヒースさんは声に出ない感嘆の声を上げている。このテントは『設営』というテントとタープを建てるためだけの魔法で建てることが出来る。

 だって、こんな子ども二人じゃ普通に建てることは不可能だから。


 いつものようにタープの周りに結界を貼り終えたミスティが、夕飯の準備をしている僕のところに駆け寄ってきた。


「お姉ちゃん!あっちから人いっぱい来てるよ!」


 ミスティに言われて、そっちに探知魔法を一点集中すると確かに数十人の人がこちらに向かってきている。

 こちらに、というよりもリウドの街に向かっているのかもしれない。この方角はクラッセンに行く道だ。


 探知魔法は人によって精度が変わる。

 ミスティは半径10kmという広さを把握出来るけど、地形や人の数、魔物の数はわからない。だから、目潰しをされるとミスティは戦うことができない。


 僕の場合は半径3km。これでも十分広いと思っているけど、ミスティと比べると足りなさ過ぎる。今は、探知をミスティに任せてミスティが気になったものは僕が一点集中の探知魔法をを使って確認する。

 僕の探知魔法は、地形や人の数、魔物の数までわかる。半径5mにまで絞れば人の顔の形まで読み取ることが出来る。一点集中の最大距離はミスティの広範囲と同じ10kmだ。


「確かに来てるね。相当慌ててるみたいだし、全員が武装してる。というかあれ、たぶんクラッセンの兵士じゃないかなぁ?リウドの兵士と同じような武器と防具だよ」


 こちらに向かってきているクラッセンの兵士は総勢50名。全員が馬に跨がり全力疾走していた。


 僕たちの異変に気付いたヒースさんが何事かと聞いてきた。


「僕とミスティの探知魔法で見たらクラッセンの方から兵士50人がリウドの街に向かってるみたいです。おそらくここを通ると思うので待っていれば事情を聞けると思いますよ」


 僕の言葉を信じるか否か迷っているみたいで「本当か?」「いやしかし」「噂通りなら」と独り言をぶつぶつ言っている。


「君たちの名前、どこがで聞いたことがあると思っていたんだがもしかして『氷の舞姫』と『癒しの歌姫』か?」


 どうやら結論が出たみたいだ。

 僕はこくりと頷いた。


「そうか…なら本当なんだろうな。じっくり待つとしよう」


 僕は念のため五感のレベルを上げておく。10kmは流石に無理だけど5kmなら感じることが出来るだろう。


「夕飯作るね」


 僕がそう言った直後、大地が唸りを挙げた。


『グォォオオオオオオオ!!!』


 僕の人ならざる耳が捉えたものは人の声ではない。今までの魔物でもこんな声をしたやつはいなかった。

 それに、まだ10kmとは言わないけど5kmの範囲に入っていないはずだ。僕が慌ててクラッセンに向き直ると同時にミスティが探知魔法で捉えたみたいだった。顔が真っ青になっている。


「お姉ちゃん…あれドラゴンだよ…」


 この世の終わりだと言わんばかりに目尻に涙を浮かべ始めたミスティを抱きかかえ、僕も探知魔法をもう一度展開した。

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