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第12話 僕、封印魔法を作ったみたい



 宿から出ると朝焼けが視界いっぱいに広がった。

 これから騒ぎ出すであろう冒険者、これから店を開くであろう店主、それら以外の仕事に赴く者。


 そんな中、僕は気付いた。


「ミスティ、もう一回寝よっか」


 これは夕焼けだ。朝焼けではない。

 よく街を見てみると、街の外から歩いてくる数多の冒険者、冒険者ギルドから出てくる満足気な一般人と冒険者、これから閉じる準備をしている店主、買い物は終わったとばかりに早足で帰っていく者たち。


 僕たちは完全に寝過ごしたらしい。


 ミスティが首をかしげた後、そう説明してやると瞬く間に顔が真っ赤に染まり、夕陽との相性が抜群だ。


「お姉ちゃん、お腹すいた」


 それは僕も思っている。ので、宿で何か出してもらおうと思っていた。


 そう言おうとしていたけど、ミスティの視線の先を見て何が言いたいのかを理解する。


「あれを食べたいんだね、いいよ。行こっか」


 ミスティの視線の先にあったのは一つの露店。

 その露店で売っているのはこの世界での焼きそば、ウルタンだ。ミスティの好物の一つで2週間に一度は食べたいらしく、それに加えて超の付くグルメ家だ。そのグルメ家曰く、「お姉ちゃんのウルタンに勝る者はないよ!」だそうだ。

 僕の作るウルタン、もとい焼きそばはもちろん日本でよくある味を再現したもの。この世界での焼きそばソックリだけど使われている調味料が違う。


 それでも、ウルタンは大好きなので2週間に一度、多いときは3食続けてなんてこともある。


「おじさん!ウルタン3つください!」


「あいよ!お嬢ちゃん可愛いから一つ負けてやるよ。代金は2つ分でいい」


「ありがとうございます!」


 ミスティは自分のサイフから銅貨50枚を取り出す。

 ウルタンは銅貨25枚という庶民的な料理でもあるのだ。

 僕は一つしか食べないから、ミスティが二つ食べることになる。これもいつものことで育ち盛りの食欲は有り余っている。



「〜っ!お姉ちゃんの方が美味しいけど、やっぱりウルタンは最高だよ!」


 宿に戻ってからミスティのテンションはうなぎ登りで、一口食べる毎にテンションが上がっている。


「王都に行ったらもっと美味しいウルタンあるのかなぁ?」


 食べ終わった直後、目を輝かせて天に祈る格好を取り出した。確かに王都には美味しいものがありそうだけど、庶民的な料理の代表であるウルタンはどうだろうか。


「あんまり期待しちゃダメだよ?なかった時辛くなっちゃうからね」


「うぅ…。お姉ちゃん、早く王都行きたい!」


 それは僕も同じだ。だけど、第二の街から馬車で寄り道せずに1日も休まずに移動しても一ヶ月かかるのだ。

 僕たちはまだ、第二の街から一歩しか踏み出していない。


「じゃあ明日にでもこの街出ようか?依頼が無くてもお金は困らないし」


「うん!そうしよ!朝出発ね!」


 ミスティはそのままベッドに潜り、すやすやと寝息を立て始めた。

 僕は本当に寝ているかどうかを確認して、自分の内に集中する。


「(なんだか妙に魔力が増え続けてるんだよね。いつ止まるんだろ?う〜ん…)」


 鉱山から帰ってきてから睡眠を取った分だけ魔力が増えていた。寝たら増える魔力は魅力的だけど正直もう要らない。昨日器合わせをしたばかりなのにすでにミスティの魔力の1.5倍になっている。


 ミスティの魔力は僕と違って感じることのできる魔力だった。心配はしていなかったけど、それでも少しは気にかけていたので良かったと思う。実力者になればなるほど戦うことを躊躇うはずだ。


 ひとまず、今夜中に封印の魔法を作ることにした。




 小鳥の囀りが聞こえ、もうじきミスティも起きるかもしれないと思っていると遂に完成した。


 名前は「刻限(こくげん)

 これは6つの魔法から成り立つ。

 一つ目は、僕の魔力を整える魔法。

 二つ目は、僕の魔力を制御する魔法。

 三つ目は、僕の魔力を中和させる魔法。

 四つ目は、僕の魔力にミスティが干渉出来る魔法。

 五つ目は、僕とミスティの魔力をリンクさせる魔法。

 六つ目は、僕の魔力に制限をつける魔法。


 そして、これらは僕の心臓を中心に据えることで初めて機能する魔法。


 僕自身がこの魔法を使えない以上、四つ目の魔法は必要不可欠。

 五つ目の魔法は、もしミスティの魔力が枯渇しても僕の魔力を使うことが出来る魔法。


 僕一人でこの魔法を実行出来て、ミスティが居なければ4つの魔法で済んでいた。でも、ミスティは大切なたった一人の血の繋がる姉妹。僕は絶対に見捨てるようなことはしないだろう。


 この封印は他の人が感じることの出来ないというところは同じだ。でも、これは人並みまでの魔力しか引き出せないようにするもの。

 魔力は増え続けていくと思うけど。


 次の街にでも着いたら、ミスティにこの魔法を使ってくれるようにお願いしてみよう。

 地図で見た限りでは、次の街まで村を2つ経由して2泊3日のはずだ。


 お願いを聞き届けてもらいやすくなるように、朝早くから宿を出て魔物を狩りに街を出る。

 この辺りの魔物の肉は上質だから家畜よりも数段美味しい。この肉を使って2泊3日の旅の食事事情を解決してみよう。

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