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第18話 僕、生首を受け取るみたい

 来希の呟きにどう答えれば良いのかわからず、僕は無言のまま空挺の甲板に移動する。

 来希たちの遊園地も凄いと思うのだけど、そう言っても技術力の進歩という意味ではこちらの方が上であるし、これから切磋琢磨していけばいいと思う。

 上空の冷たい空気に晒されつつも、空挺の旅は終わりを告げた。

 リビアンさんの街におよそ5時間ほどかけて到着したのだ。


「ここが、今日の宿泊地だよ」


「それにしても、随分太い道だな」


「あ〜それは、ねぇ、ちょっといろいろあったの」


 頭をかきながら言うと、来希は「そうか」と言って降りていく。

 空挺に乗り込んでから、いや、それよりも前から来希の反応が薄い。

 何かあったのだろうか?もしかして、僕が嫌なことでもしたとか……そんなことないと思いたいけれど、知らないところでやってしまう時もあるはずだから否定できない。


 まして、僕は元魔王の、人殺しなのだから……。


 リビアンさんの館に着くと、リビアンさんが迎えてくれる。

 国王たちがその美しさに見惚れている間に、僕はそそくさと館の中に入り込んだ。

 館の中の部屋数は80部屋ほどで、もし街で何かあった場合に館の中に避難できるような広さになっている。

 それでも全ての人を入れることは出来ないけれど、一時的な避難などであれば問題ない。


「リビアンさん、今日と明日はよろしくね」


「任せてください」


 この街で一泊し、明日の夕方にここを出立する予定だ。

 リビアンさんに頼むと快く受諾してくれたので、安心して任せることにする。


 この日、初めて箸を使う人が続出して昼食と夕食を満足に食べられない人がいたとかいなかったとか……。


 リビアンさんの街でのおもてなしは街の散歩だけだ。

 でも、それだけだけれど存分に楽しめてもらえている。僕の作った魔道具の数々が彼らの目を引き、目新しい物であるので他のことに気が向かないのだ。


「リステリア、この技術を人族にも譲ってくれないだろうか」


 話しかけてきたのは国王だった。

 他の兵士や冒険者たちは街ではしゃいでいるけれど、国王の守りを固める4人はこちらに来ている。

 譲ってあげたいのだけど、安易に譲ってはならないと言われている。

 国王も無償で譲り受けることが出来るなんて思っていないだろう。


「街灯は一つ銀貨20枚。道路自動洗浄システムは白金貨8枚と金貨6枚、ただしこれは整備が必要だから資料だけ」


「んな……」


 値段を言うと、国王はあんぐりと口を開けた。護衛の4人も驚いているのでそれなりに高いのだろう。

 ただ、龍王国での値段を王国での値段に変えるとこうなってしまう。


「で、ではあの空挺とやらを買おうとすればいくらになる?」


「あれは非売品だね。量産もしてないし、本音言うと今日のために作った奴だから」


 国王は項垂れた様子でそうかと言うと、ピンと何か思いついたような顔をした。


「あれの作り方を教えてくれ!」


 それは構わないけれど、もちろんお金は取る。それに教えたとしても王国の職人が理解できるかがわからない。

 季節の魔術式なんて、説明が難し過ぎて龍族でも難色を示したのだから。


 そんな油断の出来ない交渉の末、街灯の作り方を白金貨1枚と金貨4枚で売ることになった。

 高いのでは、と思うかもしれないけれど、実物を売るのではなく作り方を売るのでは値段が違う。

 街灯一つにつき銀貨20枚となれば、5個作れば金貨1枚になる。白金貨1枚と金貨4枚と言うと、70個の街灯を作れるのだ。

 70個の街灯、それは一つの街に設置している数だ。

 この街灯は明かりが強いので、とても離れて設置されているから、この少なさで済んでいる。


 国王と話している間は、護衛の4人が僕のことを抜け目なく観察していた。あまりいい気分ではなかったけれど、怒るほどのことでもない。


 彼らが来てから二日目の夕方、初日よりもゆっくりとした空の旅が始まった。

 今夜は空挺でお泊りで、来希も人族の空挺に乗っている。

 僕は空の旅が飽きてきたので、龍王城に転移した。

 誰か用があれば伝えにくるだろう。皆が転移を使えるのだから。


 夕食を済ませた後はいつもの天蓋付きベッドに潜り込み、寝息を立て始めた。



 それから2日間何事もなく、無事に龍王城のところまで移動してきた。今日は5日目で、龍王城の城下町はあまりおもしろい物はないので、空中大陸に案内する予定だ。


「リステリア様、以前あった贈り物の件で話があるそうです。謁見の間へお越しください」


 キースさんに促され、僕は謁見の間の控え室に移動する。

 贈り物の件というと、オーバーキルになってしまったあの箱のことだろう。


 謁見の間にケフリネータさんが先に入室し、遅れて僕が入室する。玉座には意匠の施された巧みの技術で作れた椅子があり、その右隣にケフリネータさんが、左隣にヴィヴィットが付いた。

 それなりの服に身を包み、その椅子に座る。

 座ると真正面には用意された椅子に座っている国王と、それからその護衛の4人がいる。

 この謁見の間にいるのは僕たち7人だけで、他の人は誰1人入室を許可していないらしい。


「これが、今回の首謀者の首だ」


 言われて差し出された箱をケフリネータさんが受け取り、僕に手渡す。

 これは僕に見ろと言っているのだろうか?

 心臓がバクバクと飛び跳ねて、鼓動が早くなる。

 どうしたらいいのかわからない。頭が真っ白になる。

 ふと視線を箱から外して国王を見ると真剣な目で見つめていた。

 すると少し冷静になることができて、自分の役割を思い出す。

 僕は恐る恐る、人の生首が入っている箱の蓋を開帳した。

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