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第13話 僕、ルートを決めるみたい

 ケフリネータさんが頬に一縷の涙を流した。

 泣き顔なんて初めて見る……というか、これは泣き顔なのだろうか?

 まるで神に会ったかのような恍惚とした表情で涙を流していて、正直少し怖い。


「ケフリネータさん、帰るのはちょっと待ってね」


 そう言うとビックリしたように僕を見たけれど、視線で後ろを促すと何かを納得したかのように頷いた。


「なるほど、わかりました。では皆を連れてきましょう」


 さっきの敬語は聞き間違いではなかったのか……。

 突然敬語に変わってあたふたする。

 でもケフリネータさんの言葉を理解した時ハッとした。


「待って!大丈夫、僕は大丈夫だから、国を滅ぼすなんてことはしなくていいから」


「リステリア姫がそう言うのであれば……」


 ケフリネータさんは渋々納得し、人化して僕の左斜め後ろに移動する。


「じゃあ、君たちが来る日までに犯人の処刑が終わっていることを祈ってるよ」


「ああ、その日に滅ぼすか決めるというわけですね」


 少し違うのだけど、まぁそう言うことにしておこう。その言葉に軽く頷いてみせると国王はコクコクと何度も頭を縦にふった。

 よくよく考えてみれば、魔王と龍族の知識がある国王が僕にこんなことをするわけがないし、来希がやるなんてこともありえない。

 となると、国王からの依頼で用意した人が犯人となる。

 キチンとそう言うところはハッキリさせておかないと、後々自分の首を絞めることになったりしたら嫌だからね。


 ケフリネータさんのおかげで冷静になれた僕は来希たちにお別れを告げて龍族のいる上空へ転移した。それと同時に龍化も発動し朝方の空に翼をはためかせる。


『イルミナスさん、お願い』


『はい』


 イルミナスさんの転移で龍王城に帰還した僕たちは、それぞれ解散し今日一日の仕事は明日へ回されることとなった。

 ほぼ全国民が昨日の夜の騒ぎで起きてしまったので寝不足だそうで、今日は国そのものが機能しない日になる。

 僕も少し疲れたため、本日の龍王業務は無しにしよう。


 そして次の日、王国の王たちが来る二日前となった龍王国の会議室では、どこをどのように通るか、などが議論されていた。


「山脈からリステリア街道の真上を移動しここまで来させればいい」


「いや、それだと全行程が最低でも3日になるだろう。帰りは転移で良いとしても3日もの間この地に踏み込ませるのはな」


「だがあちらはこの国を見たいと言っているのだろう?ならば圧倒的な技術力の差を見せつければ良いのではないか?」


 会議が始まって早3時間、ヴィヴィットの提案にその場に出席していた人が「おぉ!」と声を揃える。


「ならば全行程7日にして技術の差を見せつけてやろうではないか」


「ふむ、それが良いだろう。細かいルートを決めるぞ」


 僕の許可を取らずに次々に進んでいく会議。


 僕はその光景を俯瞰しながら、


「(お腹すいたなぁ……)」


 と、時計を見れば13時に刺し迫ろうとしていた。



 この時計、ギリシャ数字を組み込んでいる。ギリシャ数字の方が格好良いからね。

 以前までであれば、時計はなく鐘の音で判断していた。でもそれだとやっぱり不便かな、と思ったので作ることにしたのだ。

 この時計も魔道具となっているため、時間が狂うことはない。

 前世と同じように24時間かな、と思っていたら22時間だった。



 白熱した議論が終わりを告げたのは、キースさんとナースさんの入室の時だった。扉が開いたことに気付けたのは僕だけだろう。


「リステリア様、遅いです……ね」


「あなた方はリステリア様に昼食を抜かせるつもりですか?」


 議論に集中していた全員が時計を確認すると、ハッとしたような顔になる。その時計の針は14時目前だ。


「申し訳ありません!リステリア様!」


「すまん……」


「気にしなくて良いよ。それよりご飯にしよう」


 もうお腹はぺこぺこだ。

 そう言うと、皆納得したように移動し始めた。龍王候補たちとケフリネータさんなどは僕の後ろに続き、食堂へ向かった。


 昼からは……昼食後は空挺の出来具合が気になるので大工房と呼ばれる、龍神城を作ったところへ転移する。

 龍神城を作る前までは名もない土地だったけれど、龍神城の建設地なのだから名前くらいはつけるべきだ。という話になり、そこら一帯の土地を大工房と名付けたのだ。

 大工房では忙しなく動く人が沢山いて、その中にフェールトさんを見つけたので摘まみ出す。


「フェールトさん、どんな感じですか?」


 工事中は危険なので、転移でフェールトさんのところまで行き、フェールトさんに触れてもう一度転移すると2人で工房の安全なところに来ていた。

 突然のことに驚いたフェールトさんだけれど、僕だとわかると恭しく頭をさげる。


「リステリア様、ようこそおいでくださいました」


 フェールトさんの敬語が日に日に上手くなっているような気がするのは気のせいだろうか……?


「今のところ、問題は発生しておりません。それに、魔道師とも連携しているので今日中に完成します。明日お披露目とさせていただきますので、是非楽しみにしていてください」


「うん、わかった。じゃあ後は頼んだよ」


「はい!」


 遠回しに今日はもう帰ってほしいと言われたので素直に帰ることにする。

 フェールトさんたちの邪魔をして完成予定を遅らせることもしたくないし、明日の楽しみに取っておくというのも悪くない。



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