第12話 僕、起きたみたい
目が覚めるとこの2年で見慣れた天蓋付きベッドの天蓋部分が視界いっぱいに広がっていた。
体のあちこちが痛むけれど、その痛みをなんとか耐えて身体を起こす。
「部屋……」
ポツリとこぼした言葉に聞き耳を立てている者がいた。
「リステリア様!起きられたのですね……」
それはあの時の侍女だった。
ベッドの脇で僕が起きるのを待っていてくれたらしく、気がついたら寝てしまっていたとのことだ。
「申し訳ありません」
「君が謝ることじゃないよ。それより、皆は?」
気になるのはあの後のことだ。
この侍女の人の名前はアリアナさんと言うらしい。
「私はここでリステリア様のことを見ておくように言われ……その後のことはわからないのです」
申し訳ありません、と再度誤った彼女に手を振って問題ないと伝える。
城の中は嫌に静かで、僕が破壊したところなどは全て修復されていた。
ベッドから降りるとハラリと髪の毛が体を擦っているような感覚がある。
ふと下を見てみると、何も来ていなかった……。
「え、ちょ、どうして……?」
「リステリア様が着ていらしたものはダメになってしまい……リステリア様の魔法によって衣装箪笥も破壊されてしまったので、急ぎ作っているところです」
な……。
もう少し威力を押さえておけばよかった。どう考えてもあそこまでの高威力魔法は必要なかった。
やってしまったものは仕方がないので掛け布団のなるだけ薄いものを選び、龍脈の力を通して身体に巻き付ける。
下着も付けていないので少し擦れるけれど、なんだか途轍もなく大変なことが起こっている気がするので、慌ただしく転移魔法を起動した。
アリアナさんにはできるだけ早く戻るとだけ伝えておくことを忘れない。
転移した先は来希たちの自宅。
そこに勇者たちは居なかった。
続いて王の私室へと転移すると、勇者5人と王が何か話をしていたようで、突然現れた僕に対して警戒するも一瞬でそれを解く。
「リステリア!なんだその格好!」
「そんなことより、国王、あれはどういうことかな」
流石に僕も、あれだけの不意打ちを受けてストレスが溜まらないわけがない。心の奥底ではマグマがふつふつと煮立っている。
来希を無視して国王に視線を向けると、小さな声で「すまん」と謝った。
自分がやったことは理解していて何よりだけれど、僕は本気で怒っている。命に危険があったのだから。
「それで、何か言い残すことは?」
龍脈の力を刀の形状に収縮させて国王の首筋に当てる。それだけで国王は真っ青な表情となり体を強張らせた。
「リステリア、落ち着け!」
来希に後ろから羽交い締めにされ、文句を言うために顔だけ向けると不意に口がふさがれた。
来希の唇に塞がれた僕はあたふたとして全身が熱くなっている感覚に陥る。
ぷはぁっ
「もう!こんな時に何やってるの!」
離れた瞬間文句を言ってやると来希は困ったような笑みを浮かべた。
「ごめん、ごめんな。俺がちゃんと確認してから送っていればこんなことには……」
優しく抱擁され、荒ぶっていた心が落ちていく。ストンと正気を取り戻した時、
ドォォォーーーーーン
轟音が鳴り響いた。
王都全域を揺るがすようなその威力は空に向かって放たれたようで、国王の私室に窓がないため皆廊下へ出て、その姿を確認する。
「ケフリネータさん……」
窓から様子を見てみると、龍化状態で正気を失いかけているケフリネータさんとその部下たち数千人。
「まずい!」
龍脈の力がケフリネータさんに集まり始め、その膨大な量に思わず目眩がする。
僕はそれを止めるために、龍脈の力を練っていく。練って練って練って、ソフトボールほどの球体が目の前に現れた。
それにどんどん龍脈の力を注ぎ込んでいき、更に練り合わせていく。
その魔法が完成した時、大きさは変わらないけれどその質量が問題だった。打つ方向を間違えれば龍族も人族とひとたまりも無い。
だけど、龍族皆の攻撃を防ぐにはこれしかないのだ。
ケフリネータさんが龍の口を開く。その喉から溢れ出そうだった龍脈の力がブレスとなって放射された。
それに合わせてソフトボールほどの球体を放つ。
ブレスは超高速でこちらに向かい、球体はゆったりとした動きで、けれど歪みなどがない完全な力の塊がブレスに衝突する。
その瞬間、龍脈の力の操作を完全に解除して魔力を練り、王都全域に防御するための風の壁と魔力障壁を作り出した。
風の壁で音や衝撃が届かないようにして、魔力障壁で龍脈の力の影響を受けないようにする。
指向性を持っていた球体はブレスにぶつかった時、上空へ全ての力を拡散させた。
きっと外は轟音がなっていることだろうけれど、風の壁に守られているため音は届かない。
油断なくその光景を眺め、ふとケフリネータさんと視線が交錯する。
僕に気付いたケフリネータさんは全員に戦闘態勢を解除させて1人でゆっくりとこちらに近づいてきた。
「帰りましょう、リステリア姫」




