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第10話 僕、王様に監視されてたみたい

 僕たちはリウドの村に戻ると、僕は一人の冒険者に呼ばれた。


「すまんな。こんな夜更けに。悪く思わないでくれよ?俺はお前に配慮して他の奴らが寝静まった頃を狙ったんだ」


 この人は確かライズさんだったはずだ。緑の髪に翡翠の瞳。170センチほどの身長で歳は40台ほどのベテランAランク冒険者。そして、この人は魔法を使う人だ。剣や槍、弓と言った武器を使う冒険者たちは無意識下での身体強化や視力増強、推進力増加などをして戦いの技術を上げて行く。魔法を使う人は意識して魔力を操作して魔法を扱う。そのため、上位の魔法を使う人は魔力の感知に長けている人が多い。


「でしょうね。それで、何の用でしょう?」


「わかってるだろう?リステリア。君からは鉱山に、あの通路の奥に行く前までは確かに魔力が感じられた。だが出てきた時には魔力を感じることが出来なかった。どういうことだ?あの奥に何があった?」


 僕はやはり、と思う。この人はAランクの中でもトップレベルだ。そんな人が僕の異変に気付かないわけがなかった。ついて来ていたライズさん以外の冒険者の中にも魔法を使う人はいたけど、Bランクばかりだった。BランクとAランクの違いは魔力感知の有無という認識を持つ人もいるくらいだ。


「それはお答えできません。まだミスティにも言っていないことです。言うにしても、ミスティと相談してからとなります」


 この場にミスティはいない。ミスティにもまだ言っていないのだ。幸い、鉱山からの帰り道は魔物に襲われずに済んだから魔法を見せる機会がなかった。魔物が現れていたらミスティが真っ先に倒していただろうけど。


「そうか。どうしても言えないってんなら切り札を切らせてもらう」


 そう言って取り出されたのは1枚の紙。


「これはこの国の王から俺に向けられた命令書と、その先で何かあったときに王の名を借りて命令することができるものだ。俺はここでこの紙の王命を行使する」


 そう言って取り出した紙を僕の目の前に突き出してきた。


 その紙には、


 国王、ジーギヌス・ヴァン・ヴォイスレインの名において命令を処す。

 この者、宮廷魔法師師長ライズ・ヒルステインに王の代行者を命じる。

 この者に命令された者は速やかに行動を起こせ。命令を拒否した場合、もしくは規定の期間内にこの者が帰還しなかった場合は王国の敵と見なす。


 と書いてあった。

 その文章の下には国王のものと思われる直筆サインと指印がされている。

 とはいうものの、本物かどうかなんて僕にわかるわけがなく、そこらへんもライズさんはわかっているだろう。

 にも関わらず出してきたということは本物だということの証明としても受け取れる。


「宮廷魔法師師長…冒険者じゃなかったんですね」


「いや、元々冒険者だったところを拾われたんだ。たまに聞くだろう?冒険者が特定の個人と契約するということを」


 確かに、時々耳にすることがある。その誰もが凄腕の冒険者で個人契約を交わす貴族も中級以上ばかりで、中級の中でも上位の者くらいしかいない。


「まぁ、俺の場合は国と契約した感じだな。それはひとまず置いとこう。で、なんでだ?」


 僕は素直に答えるか非常に迷う。もしここで馬鹿正直に答えた場合、僕やミスティの身に危険が迫るかもしれない。あの鉱山が立ち入り禁止になったり、どこかで聞きつけた賊や貴族が真似事のようなことをしようとするだろう。

 そうなれば最終的に僕たちの元にたどり着き、危険が迫ってくる。

 ちらりとライズさんに目を向けると力強く頷いてくれた。この人はこういう時は頼りになる。信頼していいはずだ。


「実は…


 僕はありのまま語ることにした。けど、最終的に五感が鋭くなったことは伏せておく。他にも、あの壁をすり抜ける条件についても黙っておいた。

 きっと知れば魔力量を増加して行きたがる人間が溢れることになる。でも、この世界において魔力量の増加は先天的な魔力量と成長に伴って増やすことしかできない。

 つまり、意図的に増やすことが出来ている僕たちはイレギュラーだということ。もしこの方法がバレると確実に狙われることになってしまうのだ。


 ということです」


 ライズさんはおそらく、僕が隠している情報があることに気付いているだろう。それを追求してこないのは嬉しいことだ。ライズさんの株が僕の中でぐっと上がった。


「なるほどな…確かに結晶は無かったことにしておいた方がいいな。あの壁をすり抜ける条件は本当にわからないんだな?」


「はい。ミスティ以上の魔力量を持っていれば壊すことが出来ますけど、そもそもミスティ以上であれば壊す必要がありません」


 ミスティならば壊すことが出来る。これはとても魅力的だろう、深く考えないものからすればの話だけど。


「それもそうだな。こんな夜更けに済まなかった。もういいぞ。俺はリウドの街に着いたあとすぐに発つ。元気でな」


「ライズさんも、お元気で」


 今生の別れではないのだ。いずれまた会えるだろう。


 ライズさんと別れ、僕は布団にうずくまった。


 ライズさんがただの冒険者ではなく宮廷魔法師だということに驚いたけど、これまでのことを思い返すと頷けるものがあった。


 ライズさんの使う魔法はただのAランク冒険者にしては質が良すぎていた。それに魔物への対処も的確でどの魔物にはどの魔法程度で事足りる。ということがわかっていた。



 今日はあまりにも濃密な1日だった。

 明日、街に戻ったらゆっくりしながらミスティと話し合おう。

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