第7話 僕、鉱山に行くみたい
宿で朝食を済ませ、早速冒険者ギルドに行く。
この街の冒険者ギルドは荘厳な雰囲気を保っていた。人の出入りが激しく、話し声も聞こえるけどあまり気にならない程度の声量だ。
この街は王都と第二の街であるお爺ちゃんの思い出の街の中間にあるライセンブルクの街までにある一つの街・リウドの街。
王都から第二の街は一直線でつながっており、ところどころ森や谷や山で迂回路をとったりする必要があるけど、基本的に一直線。その中間地点にある街が第三の街と呼ばれているライセンブルクの街となる。
これらは冒険者ギルドの職員に聞いたことだ。
このリウドの街の近く…とは言っても馬車で1日ほどの距離に鉱山がある。街ができた後に鉱山が確認されたから距離があるけど、鉱山の麓にはリウドの村という、リウドの第二の街となる。規模が足りず村という呼称になってしまっているけど。
依頼板の中に護衛依頼はなく、僕とミスティは代わりに別の依頼を受けることにした。
「お姉ちゃん、これおもしろそうだよ。『鉱山の奥の調査。奥には大きな結晶があるという噂があり、その確認をして欲しい』だってさ。私、結晶見てみたい!」
最近では、僕は依頼を選ばない。専らミスティの担当となりつつある。
「うん。僕も見てみたいから行こうか。ランクと人数は大丈夫?」
「大丈夫!Aランクで単独有りって書いてあるし、報酬額もかなり高めだよ!白銀貨1枚!」
白銀貨1枚とは銀貨50枚分である。これまで受けてきた中で一番高い依頼となる。
「単独有りってことは報酬額は白銀貨1枚一定かぁ、じゃあパーティは組まないほうが良いかな」
「うん。早く行こ!」
目を爛々と輝かせるミスティに促され、受付に座っていたおじいさん職員に依頼受諾を申し出る。
「うむ。では気をつけての、氷と癒しよ」
何故か略されていた。この街ではこれが普通なのだろうか。もしそうなら僕は中身も氷のように冷え切っている女だと思われているかもしれない。
「おっ、氷のリステリアと癒しのミスティが鉱山行くのか?俺も連れて行ってくれよ、報酬はいらないし邪魔もしないからさ。な?頼むよ」
受付近くで座っていた冒険者の男が行く手を阻む。
「えー…っと、どうしよう?ミスティ」
「私はいいよ?お金はあげなくてもいいんでしょ?」
「それもそうだね。わかりました!絶対に手を出さないでくださいね」
僕たちが一人の人を許可したからか、我も彼もがついてこようとし、最終的に15人という大所帯となってしまった。
僕は冒険者ギルドで例のごとく地図を購入する。
この世界に世界地図はないので各街の冒険者ギルドで販売している街の地図だけが頼りだ。僕はそれを購入し、間違いを見つけると添削して地図にないところはその地図に足していく。そしてそれを新しい紙に清書して縮尺も合わせておく。
これを王都の第二の街でもしていた。
ゆくゆくはこの国全土の地図を手に入れたいと思っている。
地図を確認した後、方角を確認してその方向に突き進む。
鉱山はよく行かれる場所なので街道のような道が出来ていて歩きやすい。流石に馬車を用意するわけにも行かないので徒歩となる。
僕たちは1日かけてリウドの村に到着した。
そこはリウドの街よりも活気に溢れ、夜だというのに騒がしさが消えない。村を照らしている火の魔法である光球が一つの原因でもあるだろう。何せ、日が変わるまで消えないのだから。
リウドの村には正確には宿は無く、元々この鉱山の麓に住んでいた人の家に居候するということになる。そのため、何かお土産が必要となるが、僕とミスティには必要ない。他の冒険者のことなど知らないのだ。
「ミスティ、あれ立てるよ」
「わかった!」
僕とミスティは村から少し離れたところに行き、テントを立てる。これは僕が作ったもので、前世の知識を元に作った。素材が悪いので丸々同じということではない。
それでも、このテントは5人用をイメージして作り上げたので僕とミスティの子ども2人だとだいぶ広い。そして、そのテントに被さるようにタープを立てる。タープは縦10m、横4mで縦長のものだ。タープに入ると少しの空間が広がっており、その先には大きめのテントがある。
その少しの空間に僕は調理器具と調理道具をを広げる。
そして、ミスティはタープの周囲に不可侵領域を発動させる。
ミスティが癒しの歌姫と呼ばれるのは訳があり、歌詞のような詠唱にメロディを付けてオリジナル曲の様に歌い、魔法を発動させるからだ。
ミスティの歌はいつ聞いても心が落ち着く。
僕はいつものように夕食を作り、ミスティと2人で食べる。
他の冒険者13名は村を出たところで一夜を越すといったところで解散している。それぞれが居候出来るところを探し、見つけ、既に就寝しているかまだ騒いでいるかのどちらかだろう。




