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第4話 僕、街を出るみたい

 Bランク冒険者になってから早くも数日が経過した。

 僕とミスティは無理にAランクの依頼を受けようとはせずに、ここ数日はBランクの依頼を着実にこなしてきたのだ。

 そして、今日は記念すべきAランクの依頼を受諾する日でもある。

 この6ヵ月の間にミスティを冒険者登録させるというようなことはなく、変わらずに単独で受諾出来る依頼ばかりしていた。

 どの道二人以上という指定の依頼はなく、大抵が4人以上となっている。こういった「パーティ」での依頼は報酬額は段違いとなっているのだけど、今のところは困っていないのでよしとしている。

 そのAランク依頼というのは、強力な魔物や倒すために条件が必要となってくる厄介な魔物などの討伐系依頼に加えて滅多に出ないけれど盗賊の討伐依頼などがある。

 もう一つ、Aランク依頼には種類があり、その一つが今回受ける予定の物で護衛依頼となる。

 護衛対象は商人や要人警護など多岐に渡る。


「お姉ちゃん。これなんてどう?」


 早朝からAランクの依頼板で護衛依頼を探していると、ミスティが一つの依頼書を手に取った。

 依頼板は彼女の身長からすると高い位置にあるので、見かねた職員が台を持ってきてくれている。


「うん。じゃあそれにしよう」


 手に取っていた依頼書の内容は隣街までの護衛依頼だった。

 内容は護衛を5人募集しているもので、内4人は既に決定しているらしい依頼だった。5人というところに横線が引かれていて、その上に1と書かれているので間違いないと思う。


「護衛依頼ですか⋯⋯街から出て行くのですね」


 この6ヵ月もの間お世話になった職員の女性や男性たちが寂しそうな視線を向けてくる。

 でも、僕たちが街を出ることは決定事項なのだ。


「はい。またいずれ帰ってくる可能性もあるにはあると思いますが」


 苦笑いを浮かべて言う。

 依頼書を受け取った女性の職員が手続きを手早く済ませた。


「お元気で」


「そっちこそ元気でね!」


 親しみやすく言うと周囲にいた冒険者たちからも別れの挨拶が飛んでくる。それらに軽く手を振ってギルドの建物を出て行く。

 少し、アイドルになった気分だ。

 ギルドを出た後、僕たちは駆け足気味に街の門へと向かう。護衛依頼の日付がちょうど今日で、時間もギリギリだったのだ。

 すると、門のところには既に商人と思われる人と4人の冒険者。それに馬車が2台だった。


「すみません、遅れました!」


 僕が頭を下げるとミスティも同じように頭を下げた。

 商人と思われる女性は「いいよ」と笑って許してもらうことが出来た。


「もうこのまま出発しようと思ってたところだからね。私がこの商店の店長ミラよ。明日までよろしくね」


「はい。僕はリステリアでこっちは妹のミスティです」


「あら、じゃあ今噂の舞姫ちゃんと歌姫ちゃんかしら?」


 ミラさんがそう言ってにこりと微笑む。

 僕は笑みを返して4人の冒険者に向き直った。


「よろしくおねがいします」


「ああ。こっちこそ頼むよ。俺はこのパーティのリーダーのレルフだ。今回は俺が護衛のリーダーをするから、指示には従ってもらうぞ」


「はい。問題ないです」


 レルフさんは背中に大剣を背負っていて、他の二人は腰に細剣や両刃の剣をを刺していて残った一人は大槌を背負っている。魔法使いはいないのかな?

 因みに、弓はこの世界にない。弓の代わりと言ってはなんだけれど魔法があるので長距離武器はいらないのだ。


「それって、もしかして刀か?」


 出発の最終点検をしているミラさんたちを眺めていると不意に声をかけられる。

 声をかけてきたのはレルフさんのパーティの大槌使いと呼ばれるベルトシュさんだった。


「そうです。かっこいいでしょう?」


 鞘から刀身を少しだけ見せて自慢する。あれから刀は2回ほど買い替え、今の刀は最高に使い勝手もいいし相変わらず手に馴染み体が自然に動く。

 僕には刀の技能がちょっとチートがあるのかもしれない。


「刀なんて使う奴は大抵初心者でなぁ、かっこいいのはかっこいいんだが、結局両方に刃がついてるこういう剣の方が良いって言う結論になるんだ」


 僕は豆知識を軽く聞き流して刀身を鞘に仕舞う。


「まぁ、武器は何を使おうがいいけどよ、俺が聞きたいのはそういうことじゃない。リステリアは魔法を使うんじゃなかったのか?」


 なるほど、と頷いた。

 氷の舞姫という二つ名がついたのは魔法を使っていたからだったなぁと遅まきながら思い出す。

 つまり何故杖ではなく刀を装備しているのか、ということを聞きたいのだろう。


「魔法はもう十分すぎるほど使えるから、近接戦闘も鍛えておきたいのですよ」


 そう言うと、ベルトシュさんは乾いた笑みを浮かべた。


「魔法はもういいのか⋯⋯だからと言って刀なのか⋯⋯いや、だが⋯⋯」


 小声すぎてところどころしか聞こえなくなってしまったので、視線をミラさんに戻した。

 するとタイミングよく準備が整ったようで、出発の合図を出した。


「それじゃ、出発!」


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