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人生はいつも波乱万丈  作者: んみふり
第一章 異世界転移
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アリアの過去

「やぁ、アリアちゃん。今日もお疲れ様。」

「ぁ、……どうもです。」

トネの村の入り口と思われる場所で、悠真とアリアは門番の男性に話しかけられていた。男性は30代半ば程の気さくな男性で、人当たりが良さそうな人間だと悠真は思った。しかし、先程まで普通に会話をしていたアリアは何故か歯切れが悪そうに、どこか申し訳なさそうにしている様子を見て、悠真は内心、首をかしげた。何かあるのかと思い、アリアに声をかけようとする。だが、その前に門番の男性が悠真に話しかけた。

「初めまして。俺はチェンバー。この村の門番をしている。見たところ、君は異世界人か?」

「えぇ、実は、つい先程この世界にやってきまして。」

「そうか……大変だったね。アリアちゃんに拾ってもらった……といったところかい?」

「……まぁそんな所です」

実際には死闘を繰り広げたといっても過言ではないのだが、余計な事を言うわけにもいかず、相手の話に乗る悠真。

「そうか……疲れただろう。今日は村で休みなさい。事情を説明すれば、泊めてくれる宿もあるだろう。」

「ありがとうございます。お心遣い、感謝します。」

そう言って、悠真とアリアは村の中に入って行くのだった。




「あー!アリアねぇちゃんおかえりなさーい!」


「あら、アリアちゃん、おかえり。うちでなんか食べてくかい?」


「よぉ〜‼︎嬢ちゃん‼︎いい野菜出来てるぜ!持ってくかい⁉︎」



村に入るやいなやアリアに多くの村人がアリアに話しかけてきた。子供が抱きつき、恰幅の良さそうなおばさんは茶菓子を勧め、農家のおじさんは野菜を勧めてくる。

(いい村なんだな………)

素直に、悠真は感心する。村人同士が、互いに支えあっている様子は、人間の暖かさを感じさせるものだった。だが……

(でも、なんであいつは、あんなに申し訳なさそうなんだろう……?)

そう。何故かそのコミュニティーに、アリアは馴染んでいない。いや、むしろ自分から一歩引いている風である。アリアは、貰い物や子供との遊びの誘いを申し訳なさそうに断ると、悠真に駆け寄り、

「じゃあ、私はこれで失礼します!」

そう言って、村のはずれの方に走り去ってしまった。

「なんだ……?」

アリアが走り去った方を見て、首を傾げていると

「あんた、異世界人かい?」

と、背後から声をかけられる。見ると、先程アリアに茶菓子を勧めていた、恰幅の良いおばさんであった。

「ええ、そうですけど……」

「あんた、あの子に変な事してないだろうね⁉︎」

「いや、してないっす。天地天命に誓って‼︎」

凄まじい迫力で迫られた悠真は、思わず一歩後ずさりながら弁明する。

「そうかい?ならいいけど、変な事したらタダじゃおかないよ?」

「……肝に命じておきます。」

内心で、なんでこんな事言われにゃならんのだ、と思いながら、

(本当に大事にされてんだな……)

とも思う。そして、だからこそわからないことがある。

「彼女、なんかあったんですか?」

「なにがだい?」

「いや、さっきまで普通に喋ってたんですけど……この村に着いてから、歯切れ悪いって言うか、遠慮してるって言うか……そんな感じなんです。」

「…………」

「踏み込み過ぎ、ってのはわかってんですけど、人里まで案内して貰った恩は感じてるんです。

何が出来るってわけでもないですけど、何もできない訳じゃない。それこそ、異世界の知恵があれば、何かしらの役には立つと思うんです。」

「…………あの子はね、」

そう言って、おばさんは語り始めた。






曰く、アリアは莫大な魔力を持って生まれてきたらしい。魔術師の家系でもない、ごく普通の家庭に生まれたにもかかわらず、強大な魔力と尋常ならざる魔術の才能を持って生まれた彼女を、しかしながら両親は忌避しなかった。村人の誰一人として、彼女を偏見の目で見る者はいなかったのだ。彼女の両親は、愛娘の才能を死なせない為に、必死に努力した。旅の行商人に魔術書を売ってもらったり、冒険者の魔術師に教えて貰ったりと、たゆまぬ努力を続けて来た。そんな中、悲劇が起こる。彼女の母親が、流行り病でこの世を去ってしまったのだ。アリアはまだこの時、七歳であった。幼くして母親を失った彼女は、せめて母親の努力に応えようと、魔術の勉強に更に力をいれ、鍛錬を積み重ねてきた。そして四年後、再び彼女を悲劇が襲う。それは、旅の冒険者が村を訪れていた時の事だった。冒険者の一人に魔術を教わっていた時、村に魔物が現れたのである。その数、およそ三十。たかだか四人の冒険者では抑えきれず、村の中にまで侵入されたのである。村の集会所に全員で避難し、冒険者四人が、直近で迎撃している中、数匹の魔物が冒険者をすり抜けて集会所に迫ってきたのである。アリアは、迷いなく杖を取ると、魔術で応戦した。冒険者が撃ち漏らした魔物をアリアが迎撃するという隙のない布陣で次々と数を減らしていくが、冒険者達は度重なる戦闘で、アリアは不慣れな初陣で疲弊していたのだろう。故に、


その一匹を見逃した。


気付いた時にはもう遅い。狼のような魔物はその鋭い爪でアリアを切り裂こうと迫る。しかし、それを庇うかのように、アリアの父が、間に入ったのだ。鮮血が舞い、アリアは半狂乱になりながらも、魔物を焼き払い、冒険者達に治療をせがむ。父を助けて欲しいと。

しかし、出血があまりにも多かった。

アリアは父に泣きながら何度も謝った。しかしアリアの父は、娘を咎めず、代わりに頭を撫でながら、



ーー強くなったなぁ、アリア。父さん鼻が高いよ


と、優しげに、微笑みながらそう言ったのである。結局最後の最後まで、父は自分の娘を撫でながら、満足げに、息を引き取ったのである。



後に、近くの街から魔物の異常発生についての調査員が派遣され、その結果、ある事が分かった。曰く、魔物の異常発生は、周囲の魔力濃度が急激に濃くなったせいだと考えられる、と。

その話を聞いてから、アリアは村人との関わりを断ち、村はずれでひっそりと暮らしているのだそうだ。





話を聞き終わった後、悠真は一人で、村の中を歩いていた。

(いかんな、こりゃ……)

歩きながら、悠真は思う。どうやらまたいつもの悪癖(、、、)が出てしまったと。

(しゃあねぇだろ、あんな話聞いたら)

ある意味、悠真が悠真たる所以であり、そして勇者たる所以でもある、悠真の性分。

(放っておけるはずがねぇだろ、こんなもん)

この男は、意外というか、やはりというか、良くも悪くも、お人好しなのである。





「ふう……」

夕方、服を着替え、フリルのついた寝巻き姿になったアリアは、夕飯の支度をする前に少し休もうと、ベッドで横になっていた。

(今日は色々あったなぁ……)

代わり映えのしない毎日だった為、今日の出来事が酷く新鮮に感じられた。そのせいか、いつもより疲れが酷く感じる。

(今日はいつもより早く寝よう……)

そう思い、体を起こす。早く夕飯の支度をしなくては。その時だった。


コンコン、


と、扉をノックする音が聞こえたのは。


(こんな時間に……一体誰が……)

警戒しながら、杖を取り、ゆっくりと扉を開ける。そこには、

「ユーマさん……⁉︎」

「おう。」

そこに居たのは、今日出会った神崎悠真だった。

「どうしたんですか?こんな時間に…」

アリアがそう聞くと、悠真は片手で後頭部をかきながら、


「いや〜悪いんだけどさ。今晩、泊めてくんない?」

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