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MoonLit  作者:
Black Moon
97/105

第20話「方舟」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。



2018/02/23 次回予告を追記。

 オペレーターは、眠い目を擦りながら、レーダーが捉える目標の行方を見守っていた。

 指令を受けた際は、歴史的瞬間に立ち会えるかも知れないという高揚感で、真剣に監視し出来ていたのだが、4時間が経過した辺りから集中力が切れ始め、8時間を過ぎると「何故、交代要員を申請しなかったのか?」と、自分を責めるようになっていた。

 オペレーターは、肩肘をついてモニタを眺め、目標となっている赤い点を眼で追う。


 こいつが着くまで早くても、あと10時間ってとこか?

 あ~あ、こんな事なら、3交代制にって言えば良かった。

 そうすりゃ、俺の持ち分は7時間程度だったんだ。

 それで最後の番を選べば、良かったんだよ。

 何が嬉しくて、20時間も眺めてなきゃいけねーんだ。

 歴史的瞬間は、見たかったけどさ……。

 辛いわー、早く帰って、寝てぇーわー。

 どうせ上層部は、1時間前辺りに来んだろうなー。


「予定時刻まで仮眠……して、バレたら不味まずいってレベルじゃねーな」


 大きな欠伸あくびと共に、大きな溜息をいた。


「もっと、速く飛べよ」


 今のオペレーターに許された事は、目標相手を愚痴って、頭を掻きむしるくらいだった。



 到着予定時刻の20分前になってようやく、ゾロゾロとオペレーターの居る司令室に、イマジニアの閣僚たちが入って来た。


「どうだ? 新しいレーダーの調子は? 正確な位置を捉えられているか?」


 何が「どうだ?」だよ、20分前なんかに来やがって、いい気なもんだ。


 オペレーターは、心の内とは違う言葉で、それに答える。


「はい、このまま速度を維持するのであれば、あと数分でウルルへ到着すると思われます」


 それを聞いたイマジニア大統領ディンガーは、いやらしく笑い、ワイングラスを天に掲げる。


「ムーンリット(ヴァンパイア)も、愚かなるサード(第三世界の人間)も、怠惰な属国(イマジニア植民地)も、増え過ぎた。誤った思想、誤った種族、その存在が多岐に分かれ過ぎた為に、誤った世界へ向かっている。最早、それを一握りのイマジニアン(本国に住むエリート)が支配するのは、オーバーワークだ。我々イマジニアンが、否、神に選ばれしトータルエクリプスが、清浄な世界へ導かなければならない! いよいよだ、諸君! いよいよ、我々の望む世界となる! このイマジニア本国が、第二の方舟となるのだ!」


 そう言って、掲げたグラスを口へ運び、一気に飲み干すと、ディンガーはレーダーを眺め、その移動する赤い点がエアーズロックに着くのを待った。


 大人しく女を渡しておれば、そんな労せずに済んだものを。

 まぁ、それでも、

 アレスター、お前の運命は変わらんがな!



 一方、アレスターの城に残されたクレアたちも、アレスターの移動を見守っていた。


「これってアレ? 私たちを追ったっていう?」


「そうだよ」


 アルベルトのAIから渡されたローブによって、妖気も、飛行物体としても、通常のレーダーでは捉える事が出来ない、しかし、レオンとクレアを追った『臭いによる追跡レーダー』なら、他国に知られること無く、見守る事が出来る。

 執務室に在る巨大モニタには、アルベルトの姿と世界地図が映し出され、赤い点がエアーズロックを目指し移動している。


 赤い点がエアーズロックと重なった数分後、緊急警報が鳴り響く。


「な、なに? 何か有ったの?」


「今、第三世界で核が使用された」


「え? ヴァンパイア用の?」


「どちらともだ。ヴァンパイア用と水爆が同時に使用された」


「レオンは? アレスターは?」


 アルベルトのAIは、無言のまま首を振る。


「そ、そんな……」


「次は、此処が危ない。バウアー、クレアを連れて研究所へ」


「解りました。クレアさん、急ぎましょう」


 その時、大きな音をてて、執務室の扉が開いた。

 その扉を開けた者を見て、アルベルトのAIが目を見開く。


「何故、君が此処に居る? アレスター」


「君に1つ、聞き忘れた事があってね。行くのを止めたんだよ」


「レオン!」


 その後ろには、レオンの姿も在った。


「何を聞きたい?」


「もしもだ、もしも、鷹也が居ない、そして、その家族、クレアも居なくなったら……お前は、どうするんだ?」


 その問い掛けを聞いて、アルベルトのAIは鼻で笑う。


「そんな事を聞く為に、行くのをめたのか?」


「あぁ、そうだ」


「何もしないさ。忘れたのかい? 僕は、世界に干渉してはイケナイ存在なんだよ」


「そうだ、お前が世界へ干渉しないように、アルベルトがプログラムを組んでいる筈なんだ。恐らくそれは、今も有効な筈だ」


「何が、言いたい?」


「グレーゾーン……この言葉に、引っ掛かったんだよ」


「何を引っ掛かる事が在るんだ?」


「出来る出来ないの返事で良い筈なのに、グレーゾーンと敢えて答えた」


「敢えて? 嫌な言い方をするね。正確に答えただけなんだが?」


「依頼の言い方を変えれば、受ける可能性があるんじゃないのか?」


 アルベルトのAIは、眉をひそめた。


「お前は、アルベルトのアルゴリズムを掻い潜って、誘導してる」


「疑心暗鬼も甚だしい。僕がそんなことして、何になるんだ」


「理由は解らん、自我でも目覚めたか?」


「話にならない」


「だが、一つだけ確かな事が在る」


「何だ?」


「俺たちがエアーズロックに行く前に、爆弾は完成していたという事実だ」


「僕の知らないところで、完成させていたんだろう」


「発電という目的で、お前に依頼していたら?」


 アルベルトのAIは黙り、アレスターを睨む。


「アルゴリズムを掻い潜る答えが、見つからないようだな」


読んでくれて、ありがとう。



その行動には、全て意味がある。

次回「Magicians Select」


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