第19話「瞳に映った世界」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/03/06 誤字修正。
「ドラキュラ聞け! コイツの出来ることは、お前も……」
新たに現れたクロノスと言う名の敵は、親父と呼んだ相手を何の躊躇いも無く破裂させた。
「余計なことを……」
「な、なんだ? 仲間じゃ……息子じゃないのか?」
「そうだ、だから何だ?」
「何なんだ、お前は!」
クロノスは、右手を顎に付け首を傾かしげ「少し足らんな、出直すか」と呟いた。
「逃がすか!」
鷹也は、瞬時に詰め寄り斬り掛かるも、捉えることが出来ず、一瞬にしてクロノスは遥か上空へ。
再び、クロノスに向かい飛んだが、空気に融けるように消え去った。
「ど、何処だ? 何処に行った?」
その時、鷹也は激しい眩暈に襲われる。
「な、なんだ? せ、世界が……歪んで……」
その歪んだ景色に堪え切れず、目を閉じる。
眩暈が止み、再び目を開けた時、凍って身動きが取れなくなっていた。
え?
あいつら、なんで?
夢……だったのか?
それとも、さっきのが夢なのか?
「いくぜ、ドラキュラ! 俺のブレイズは、太陽よりも暑いぜ!」
この台詞、前にも……正夢でも、見ていたというのか?
唱えられたブレイズと言う名の法術は、鷹也を中心に海岸沿い2キロを一瞬にして蒸発させたのだが、ローブが鷹也を守り、火傷を負うことさえ無かった。
よし、動ける。
ん? やつらより、大きなジンを感じる!
その気配を追って見上げた先には、眩暈の前に対峙した敵、クロノスの姿が在った。
正夢を……見てた訳じゃなかったのか?
そう言えば……確か、フェリオスという名の赤毛が『時が』どうとかって言ってたな。
あいつは、時を操るのか?
信じ難い話ではあるが、その答えでしか現状を納得する事が出来ない。
そ、そんな相手に、俺は勝てるのか?
駄目だ、今はそんな事よりも!
鷹也は、翼を大きく広げると蝙蝠の翼は抜け落ち、新たに白い翼が現れる。
あいつは、危険だ!
あいつから、殺らないと!
深呼吸を一つした後、覚悟を決めて、クロノスへ一直線に向かう。
鷹也は、全ての力を右腕に集中させ、クロノスを背後から貫いた。
それを見て「よし!」とフェリオスが言った、その瞬間。
再び、世界が歪曲する。
ま、またか!
戻された時間は、僅かに3秒前、クロノス貫く直前だった。
「お前の浅はかな悪知恵に、気付かんと思うか?」
そう言って半身をズラされ、鷹也の右腕はクロノスでは無く、フェリオスの胸を貫いた。
鷹也は、フェリオスを貫いた右腕を抜き、クロノスに対峙する。
クロノスは、再び「まだ、足らんな……」と、顎に手を当て小首を傾げた。
「何を言っている?」
「試してみるか……」
その言葉で、鷹也は原子分解されてしまう。
「さぁ、アンデッドのDNAよ、再びその身を戻し、神気を高めよ!」
すると、鷹也の原子は空中で渦を巻くように集まり、再び、元の姿へ。
裸体で蹲る鷹也を眺め、クロノスは不服そうに「ただ、元に戻っただけか……」と呟いた。
鷹也は、迷いながらも闘う覚悟を決め、剣を探す。
すると突如として、鷹也の手元に剣が現れた。
突然現れた剣に動揺したが、首を振って我に返り、慌てて剣を掴むと、裸のままクロノスへと滑空し、剣を振る。
振られた剣が、クロノスに届いたと思った瞬間、時間が逆行する。
な、なんだ?
自分の意志とは関係なく、動いてきた経緯をなぞるように戻って行き、死んだ筈の二人までもが生き返った。
再び、正常に時間が動き出した時、青い髪の男に蹴り飛ばされ、砂浜を転がる。
使徒の二人がクロノスと闘い始めたが、間も無く、青い髪の男は灰になった。
「ドラキュラ、一旦休戦だ! 手を貸せ! 俺が奴を食い止める、お前は神気を高める事に集中しろ!」
ジンを高める?
どうすれば、高まるんだ?
妖気と同じか?
幾ら集中しても、神気を高める事が出来ない。
そうこうしている内に、再び、時間が逆行し、青い髪の男が生きていた時間まで戻った。
ジンが移ったのか?
あいつ、そんなことまで出来るのか!
不味い! 赤い髪のヤツまで捕まった!
ジンは未だ僅かだったが、構わずクロノスへと向かい、蹴り飛ばした。
「何してやがる! さっさと変換しろ! さもないと、前のように上手くは行かんぞ!」
「上手く? 上手くなど行ってない!」
「なに?」
「何もやっちゃいないんだ。ヤツは俺を見て『足らない』と言って、時間を戻した」
「足らない?」
「教えてくれ、どうやれば早くジンに変換出来る?」
「チッ! 知るかよ、そんな事! 仕方ない、時間を稼いでやるから、剣を貸せ! お前は集中してろ!」
だが、剣を呼び寄せようとするも、剣は来ない。
「ダメだ、さっきは来たのに!」
「クソが! 物質転送程度で、そんなに神気を使うのかよ……神気の使用量? そうか! リワインドを選んだのは、リープの方が神気を使うからだ! 違うか! 親父!」
そう呼ばれた者は、既に飛ばされた先に居おらず、目の前に立っていた。
「それがどうした?」
「さては親父、もう先が見えねぇんだろ?」
先が見えない?
「なら何故、コイツの蹴りを喰らった?」
未来が……見えるって事か?
それとも経験しておいて時間を戻し、未来が見えると言っているのか?
どっちだ?
前者なら、一生、攻撃が当たらないぞ。
フェリオスは推理を始め、自分はクロノスの寿命を延ばす為の喰い物だと結論付けた。
「喰い物? 俺が?」
「流石だな、フェリオス。だが、それを知ったところでどうなる? 何も出来まい?」
「否、そうでもねーさ。十分な時間稼ぎには成った!」
鷹也は剣を呼び、フェリオスに投げた。
受け取ったフェリオスは、剣を構える。
「炎の使徒フェリオス、推して参る!」
そう言って、横に振られた剣は、鷹也の首を刎はねた。
な、何故だ……何故、俺を……。
視界が狭まり、暗闇に包まれ、思考は停止する。
それは鷹也にとって、眠っていたというより、気絶していたような感覚だった。
再び意識が戻った時、視界が広がった世界に、フェリオスは居らず、ただ一人、クロノスだけが立っていた。
あいつ(フェリオス)が居ない……殺られたのか?
だが、取り込まれた感じはしないな。
クロノスが両手を広げた時、鷹也は分解されたことを思い出し、剣を呼ぶ。
来い!
フェリオスの手から、こぼれ砂浜に突き刺さって居た剣が、鷹也の右手へ転移する。
あの原子分解だけは、喰らってはいけない!
その前に、攻撃を!
剣を振ったが、半身で躱されると、そのまま背後へ回られ、右肩を掴まれた。
「させるか!」
鷹也は、己の身体もろともクロノスを切り裂くと『コイツの出来ることは、お前も……』と言ったフェリオスの言葉を続ける。
出来るんだろ、俺にも!
戻れ!
切り離された筈の下半身が、上半身へと戻る。
「妥協に、妥協を重ねざるを得んとはな……出直すとするか」
クロノスは、瞬間移動で鷹也との距離を取るように遥か上空に浮かぶと、目を閉じ両手を広げる。
「今度こそ、逃がさん!」
読んでくれて、ありがとう。
エアーズロックに、向かったアレスター。
だがそれは、巧妙に仕掛けられた罠だった。
次回「方舟」




