第13話「No Pain, No Gain.」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/01/01 次回予告追記。
血で染まり、震える幼い少女を見ながら、アレスターは嘆いた。
「こんな時代だ、せめて一緒に逝かせてやるか……」
アルベルトさえ、生きていれば……、
こんな思いは、しなかっただろうに……。
ドラキュラは、人間の血を飲まなければ、生きていけない訳ではない。
しかし、それは異常な喉の渇きに耐えられればの話だ。
DNAに刻まれた中毒症状は、喉を掻き毟りたくなるほどで、幾人もの挑戦者達は、脱落者となって帰ってきた。
そんな中、ただ一人、二年も耐えた者が居た。
「アルベルト、本当に飲んでないのか?」
「あぁ、今は幾ら人間が多いとは言え、このままのペースで行けば、何れそれも尽きる。家畜のように増やせば良いと言う馬鹿も居るが、人間は唯一、自らの命を捨てられる生き物だ」
「だからって……永遠にアレを耐えるのか?」
「まさか、献血という手段もあるし、だがそれより、出来れば血を飲まなくても良い薬を作りたいんだ」
「そうか、早く出来ると良いな」
「ん? まさか、君も欲しいのか?」
「あぁ、イケナイか?」
「いいのか? 血は強さの成長に比例している。君の立場的には……」
「カイルが居るし、君だって居る、他にもいっぱい強い奴が居るんだ。俺に、王が回って来る事なんて無いよ」
「僕も変わってると言われるが、君も随分変わってるな」
そう言って、笑い合ったあの頃が懐かしい。
結局、アルベルトは薬を作る事無く、この世を去ってしまった。
産まれる息子には、血の呪縛から解放してやりたい、そう言ってたのに……。
満月の夜、本能のまま徘徊し、偶然見つけた人間の女の首に噛み付いた。
「済まんな。だが、約束する。今夜は、君一人だけにするよ」
あと少しで、女の血を吸い尽くそうとした、その時。
「ハンナーッ!」
突然、そう叫びながら、金属バットを握った男が襲い掛かって来た。
反射的に動いてしまったアレスターは、本能が指示する流れのままに、その男の首に歯を立ててしまう。
「約束は、守れなかったか……」
そう呟いて、アレスターは男の首を刎ねた。
血を飲むだけでは許されず、相手をゾンビにまでしてしまう。
なんて罪深い、生物なんだ俺達は……。
その首が転がった先には、震えて蹲った少女が居た。
この人間達の娘か?
アレスターは、大きく溜息を吐き、少女へと歩み寄る。
だが、アレスターよりも早く、その少女に飛び掛ったのは、その少女の母だった。
ゾンビ化したハンナは、娘の両肩を掴み、その顔に喰らいつこうとする。
咄嗟に、ハンナの首を刎ねた。
ハンナに残っていた僅かな血が、娘の顔を染める。
「助けた形になったが、こんな時代だ、せめて一緒に逝かせてやるか……」
その時、数発の銃声が鳴り、その内の一発が、アレスターの肩を掠めた。
「まだ、君を守る者が居たようだね」
アレスターは、そう言うとフワリと浮かんで、その場を去った。
「あの時の娘か……」
震えながら銃を向けるクレアに、そう言った。
「お前さえ、お前さえ、現れなければ」
レオンは、その間で必死にクレアへ訴える。
「ダメだ、クレアさん! 負の連鎖を続けてはイケナイ!」
それは、長くなった争いを回避する為に、ホークアイが掲げていた言葉でもあった。
「代表の君がそれでは、最早、共存なんて夢のまた夢だな」
「アレスター! 煽るようなことは言わないでくれ!」
アレスターを嗜めると、レオンは、ゆっくり説得に入る。
「いいですか、クレアさん、アレスターは共存の為には必要な男です。もし、今、アレスターを殺れば、多くの血が流れる。ヴァンパイア側も、人間側も」
「解ってる、解ってるけど、出来ないの。心が許さないのよ!」
「そんな人間は、貴女だけじゃない! 貴女だって、言ってきた事じゃないですか!」
最早、何も言い返せないクレアは、無言のまま撃鉄を起こした。
「退いて、レオン」
仕方ない……言いたくはなかったが……。
「アレスターの父、バルバドを殺したのは、鷹也さんです」
クレアは、その場に泣き崩れた。
読んでくれて、ありがとう。
タイトルの『No Pain, No Gain.』の本来の意味は『苦労なくして利益はない』なのですが、
『この痛みに耐えなければ、目的は果たせない』というつもりで、使用しています。
こういう意味がある訳ではありませんので、間違って使用しないようにねw
「何か、僕に聞きたい事でもあるのか?」
「在り過ぎるね。その前に挨拶だろ? 久しぶりだな」
「ん? AIの僕とは、初対面の筈だが?」
次回「テセウスの船」




