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MoonLit  作者:
MoonLit
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第8話「母の日記」

読んでくださる方に合う作品であることを祈りつつ。


2018/01/21 加筆修正を行いました。

 カイルが父の話をする時は、出会った頃のような直視出来ないほどの妖気を感じる事は無かった。

 今、ようやく直視できた伯父の顔は、透き通るような白い肌に紅い瞳、そして、短く跳ね上がった白銀の髪。

 それは、まるでギリシャ彫刻のような美しさだった。


「俺は、そんなに、父に似ているのか?」


「あぁ、肌と髪の色が違うくらいだ」


 嬉しいとも悲しいとも言えない、複雑な気分だった。

 俺は、迷い始めていた。

 父と母を殺されたと言う事実もあるが、俺の居れる場所は……もう此処しかない。

 だからと言って、慣れ久んだ人の世界を壊すことも、ヴァンパイアに目覚めて、その血を吸う気にも成れなかった。


「すまない、もう少し時間をくれないか……」


 そんな俺に、伯父は優しく声を掛けた。


「敵対する事さえなければ、いくさに参加せずとも良い。世話になった人間が居るなら、特別に迎え入れよう」


「ありがとう」


 それから、2日後。

 ずっと気になってたことがあって、俺は久しぶりに実家に帰った。

 それは、育ててくれた母が、俺をヴァンパイアだと知っていた事だ。


 今まで帰れなかったのは、生きている筈のない俺が姿を現せば、軍に疑われると思ったからだ。

 1年半が過ぎ、戦場跡となってしまった実家は、俺に帰ることを決意させた。

 形としては存在していたものの、中は荒れ放題だった。


「随分と……盗られたな……」


 今は、金目の物は必要無い。

 欲しいのは……母さんの日記だ。


「確か? 机の引き出しに……あった!」


 引き出しは壊されていて、鍵が掛かっていたと言うべき跡があった。


「よかった、日記は無事だ」


『見ては、イケマセンって言ったでしょ!』

 

「……」


 最初のページには、そう書かれたあり、次のページには、


『仕様がない子ね、母さんが生きている間は此処までにしなさい。もし、この世に居ないのなら……続きを必ず読みなさい、貴方にとって大切なことが書かれているから』


 と書かれてあった。


「んじゃ、遠慮なく」


     ・

     ・

     ・


 2月24日。

 美咲が、ヴァンパイアと付き合っていると私に告白した。

 自由奔放な子だとは思っていたけれど、ここまでとは……。


 3月31日。

 今日、その相手、アルベルトと言う名のヴァンパイアに会った。

 下手な人間よりは、マシかと思えるほど、とても感じも良い青年?でした。


 5月18日。

 アルベルトは、美咲を妻に欲しいと言ってきた。

 もちろん、父さん母さんは大反対!

 私は……応援してるよ。


 8月20日。

 美咲は、どうやら妊娠したようだ。

 やれやれ。

 親が気づく前に、私はアルベルトが解らない場所で妹と暮らすと、親に嘘を付いて家を出た。

 最初、アルベルトは嘘を付く事を反対していた。

 1つ嘘を付けば限りなく嘘が繰り返され、真実が解った時には、美咲を愛してることまでも信用されなくなるからだと言った。

 でも、本当のことを話せば間違いなく、お腹の子は処分されてしまう。

 そう告げると、アルベルトは納得して、三日に一度は実家へ「美咲を出せぇ!」と、演技しに行くのでした。


 3月9日。

 今日、アルベルトに似た、元気な男の子が産まれました。

 ヴァンパイアが涙を流して、喜ぶ姿を初めて見ました。


「なんて、名前にしようか?」


 幸せそうに、母は子を抱きながら、"その子"の父に問い掛けた。


「実は、もう決めてるんだ。鷹は飢えても穂を摘まずって意味から、鷹也ってつけようと思うんだ」


 その子の父は自慢気に、名を告げた。

 小首を傾げながら、その子の母は、その名前の理由を聞く。


「……武士は食わねど高揚枝たかようじと、同じ意味……だよね?」


「ち、ちょっと違うかなぁ?」


 人でない夫よりも、人の文化を知らない妻を呆れたように見つめていた妻の姉が、代わりに答えた。


「正しい生き方をする者は、どんなに困っていても、不正な行いはしないと言う意味で、そんな"鷹"のようになりなさいって事でしょ?」


 アルベルトは、その通りですとばかりに、義理の姉に拍手を贈る。


「鷹也かぁ……鷹也、ママよ」


 7月29日。

 今日は、鷹也と二人でお留守番。


「貴方のパパとママは、今、貴方が幸せに暮らせるよう頑張ってるから、"香織お姉さん"と、お留守番していましょうね」


 でも、帰って来たのは、アルベルト一人だった。


「すみません、お義姉さん。美咲を守ることが出来ませんでした。僕は……今から、美咲を殺した相手と戦わなければなりません。ですから、鷹也のこと、よろしくお願いします」


 アルベルトが泣いたを見たのは、二度目だった。


「あと、これを鷹也に」


「これは?」


「赤い薬を飲めば鷹也は"陽光"を浴びれるようになります。青い薬を飲めば"吸血行為"を眠らせることができます。ただ、青い薬は未完成なので、元に戻る可能性があり、ヴァンパイアとしての能力が一部目覚める恐れがあります。もし、鷹也に何かあれば、僕の研究室まで行くように言ってください。これが、その地図です」


「アル! 生きて帰って来なさい、鷹也の為に!」


 アルベルトは、ニッコリと微笑んで飛び去った。


 でも、アルは帰って来なかった。


 私は、今日から鷹也の母親になろう。


 母さんが入院するまで、俺の成長記録は刻み続けられていた。

 俺は、母さんが身内であることを嬉しく思った。


 父さん、そして、二人の母さん。

 俺は、どうしたらいい?

 教えてくれ。


読んでくれて、ありがとう。



父さんと君だけが、研究所に入れるようにしてある。

次回「研究所」

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