第11話「Sacrifice」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/02/18 修正。
「果たして、耐性は体の中まで在るかな?」
フェリオスが渾身のブレイズを放ったその瞬間、再び、時間は逆行する。
――青いな、四の五の言わず、撃てば良かったものを。
脳内にクロノスの厭らしい笑い声が響き渡り、フェリオスの顔を歪ませる。
膨らんだブレイズは収縮し、掴んでいた手は離れ、乱立していた炎の柱は次々に消えて行き、そして、時はグレイスが生きていた時間まで、遡った。
「ブレイズ!」
改めて、グレイス目掛け放たれたそれは、クロノスの右手によって掻き消された。
クロノスの左手で肩を掴まれていたグレイスは、神気を全て奪われ、翼を失い、地上へと真っ逆さまに堕ちて逝く。
「クソったれ、振り出しか!」
否、グレイスの分だけ、更に下がったか……。
だが、リワインドしたという事は、体内へのブレイズは有効と考えて良さそうだな。
しかし、何故、リープ(時間跳躍)ではなく、リワインド(時間遡行)なんだ?
リープなら、俺達の記憶は残らない筈なのにだ。
俺達が親父にとって、そこまでの存在では無いからか?
本当に、それだけか?
「考え事か? 随分と余裕じゃないか」
その声は、既に背後に在り、厭らしい笑みで浮かべている。
フェリオスは、慌ててバックナックルを振ったが、その右拳は軽々と受け止められた。
しまった、これじゃ、さっきの繰り返しじゃねーか!
固く掴まれた拳を振り解こうと足掻くも許されず、徐々に神気が奪われて行く。
最早これまでかと、フェリオスが諦めた時、クロノスが吹き飛ばされた。
「礼は言わんぞ、ドラキュラ!」
そう、鷹也がクロノスの死角から、蹴り飛ばしたのだ。
フェリオスは、極僅かしか感じられない鷹也の神気に苛立つ。
「何してやがる! さっさと変換しろ! さもないと、前のように上手くは行かんぞ!」
「上手く? 上手くなど行ってない!」
「なに?」
「何もやっちゃいないんだ。ヤツは俺を見て『足らない』と言って、時間を戻した」
「足らない?」
「教えてくれ、どうやれば早くジンに変換出来る?」
「チッ! 知るかよ、そんな事! 仕方ない、時間を稼いでやるから、剣を貸せ! お前は集中してろ!」
だが、剣を呼び寄せようとするも、剣は来ない。
「ダメだ、さっきは来たのに!」
「クソが! 物質転送程度で、そんなに神気を使うのかよ……神気の使用量? そうか! リワインドを選んだのは、リープの方が神気を使うからだ! 違うか! 親父!」
そう呼ばれた者は、既に飛ばされた先に居らず、目の前に立っていた。
「それがどうした?」
「さては親父、もう先が見えねぇんだろ?」
突拍子も無い問いかけに、クロノスは馬鹿にしたように冷笑する。
「可笑しいか? なら何故、コイツの蹴りを喰らった?」
その言葉で、クロノスは眉をひそめた。
「図星か?」
「遺言は、終わったか?」
「遺言? 遺言はテメェじゃねぇのか? 死期が近いんだろ?」
クロノスの表情が険しくなったのを見て、フェリオスは笑い、探偵が推理を始めるように語り出した。
「そもそも、テメェが子(使徒)を作ったのは、種族の繁栄でも、後継者を作る為でもない。テメェの寿命を延ばす為の喰いモンだ、違うか?」
「ほぉ」
「だから、どの種族との配合が、神気を高くするのか、何度も何度も繰り返した。使徒同士の性交渉を許さなかったのは、母体となった使徒の神気が、著しく減ったからだ。テメェにしてみれば、産まれる子の方が高ければ、それも良かったんだろうが、等価に至らない事の方が多かったんだろ? だから禁止にした」
その名推理に、クロノスは無言のまま拍手を贈る。
「しかし、使徒では補えないところまで、テメェは来てしまった。だから、テメェと同じ神を作って喰らえば寿命は延びると考え、コイツを作った、違うか?」
そう言って、親指で後ろに居る鷹也を指した。
「喰い物? 俺が?」
「流石だな、フェリオス。だが、それを知ったところでどうなる? 何も出来まい?」
「否、そうでもねーさ。十分な時間稼ぎには成った!」
鷹也が剣を召喚し、フェリオスに投げる。
「剣を!」
投げられた剣を受け取り、フェリオスは構える。
「炎の使徒フェリオス、推して参る!」
そう言って、横に振られた剣は、鷹也の首を刎ねた。
「なんだと!」
さぁ、どうする親父!
リープか?
リワインドか?
読んでくれて、ありがとう。
再び、クレアの時間が動き出した時、最初に動いたのは手では無く、瞳から流れた一筋の涙だった。
次回「クレアの涙」




