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MoonLit  作者:
Black Moon
88/105

第11話「Sacrifice」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2018/02/18 修正。

「果たして、耐性は体の中まで在るかな?」


 フェリオスが渾身のブレイズを放ったその瞬間、再び、時間は逆行する。


 ――青いな、四の五の言わず、撃てば良かったものを。


 脳内にクロノスのいやらしい笑い声が響き渡り、フェリオスの顔を歪ませる。

 膨らんだブレイズは収縮し、掴んでいた手は離れ、乱立していた炎の柱は次々に消えて行き、そして、時はグレイスが生きていた時間まで、さかのぼった。


「ブレイズ!」


 改めて、グレイス目掛け放たれたそれは、クロノスの右手によって掻き消された。

 クロノスの左手で肩を掴まれていたグレイスは、神気じんを全て奪われ、翼を失い、地上へと真っ逆さまに堕ちて逝く。


「クソったれ、振り出しか!」


 否、グレイスの分だけ、更に下がったか……。

 だが、リワインドしたという事は、体内へのブレイズは有効と考えて良さそうだな。

 しかし、何故、リープ(時間跳躍)ではなく、リワインド(時間遡行)なんだ?

 リープなら、俺達の記憶は残らない筈なのにだ。

 俺達が親父にとって、そこまでの存在では無いからか?

 本当に、それだけか?


「考え事か? 随分と余裕じゃないか」


 その声は、既に背後に在り、厭らしい笑みで浮かべている。

 フェリオスは、慌ててバックナックルを振ったが、その右拳は軽々と受け止められた。


 しまった、これじゃ、さっきの繰り返しじゃねーか!


 固く掴まれた拳を振りほどこうと足掻あがくも許されず、徐々に神気じんが奪われて行く。

 最早これまでかと、フェリオスが諦めた時、クロノスが吹き飛ばされた。


「礼は言わんぞ、ドラキュラ!」


 そう、鷹也がクロノスの死角から、蹴り飛ばしたのだ。

 フェリオスは、極僅かしか感じられない鷹也の神気に苛立いらだつ。


「何してやがる! さっさと変換しろ! さもないと、前のように上手くは行かんぞ!」


「上手く? 上手くなど行ってない!」


「なに?」


「何もやっちゃいないんだ。ヤツは俺を見て『足らない』と言って、時間を戻した」


「足らない?」


「教えてくれ、どうやれば早くジンに変換出来る?」


「チッ! 知るかよ、そんな事! 仕方ない、時間を稼いでやるから、剣を貸せ! お前は集中してろ!」


 だが、剣を呼び寄せようとするも、剣は来ない。


「ダメだ、さっきは来たのに!」


「クソが! 物質転送程度で、そんなに神気を使うのかよ……神気の使用量? そうか! リワインドを選んだのは、リープの方が神気を使うからだ! 違うか! 親父!」


 そう呼ばれた者は、既に飛ばされた先にらず、目の前に立っていた。


「それがどうした?」


「さては親父、もう先が見えねぇんだろ?」


 突拍子も無い問いかけに、クロノスは馬鹿にしたように冷笑する。


「可笑しいか? なら何故、コイツの蹴りを喰らった?」


 その言葉で、クロノスは眉をひそめた。


「図星か?」


「遺言は、終わったか?」


「遺言? 遺言はテメェじゃねぇのか? 死期が近いんだろ?」


 クロノスの表情が険しくなったのを見て、フェリオスは笑い、探偵が推理を始めるように語り出した。


「そもそも、テメェが子(使徒)を作ったのは、種族の繁栄でも、後継者を作る為でもない。テメェの寿命を延ばす為の喰いモンだ、違うか?」


「ほぉ」


「だから、どの種族との配合が、神気を高くするのか、何度も何度も繰り返した。使徒同士の性交渉を許さなかったのは、母体となった使徒の神気が、著しく減ったからだ。テメェにしてみれば、産まれる子の方が高ければ、それも良かったんだろうが、等価に至らない事の方が多かったんだろ? だから禁止にした」


 その名推理に、クロノスは無言のまま拍手を贈る。


「しかし、使徒では補えないところまで、テメェは来てしまった。だから、テメェと同じ神を作って喰らえば寿命は延びると考え、コイツを作った、違うか?」


 そう言って、親指で後ろに居る鷹也を指した。


「喰い物? 俺が?」


「流石だな、フェリオス。だが、それを知ったところでどうなる? 何も出来まい?」


「否、そうでもねーさ。十分な時間稼ぎには成った!」


 鷹也が剣を召喚し、フェリオスに投げる。


「剣を!」


 投げられた剣を受け取り、フェリオスは構える。


「炎の使徒フェリオス、して参る!」


 そう言って、横に振られた剣は、鷹也の首をねた。


「なんだと!」


 さぁ、どうする親父!

 リープか?

 リワインドか?

読んでくれて、ありがとう。



再び、クレアの時間が動き出した時、最初に動いたのは手では無く、瞳から流れた一筋の涙だった。

次回「クレアの涙」

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