第7話「Rewind」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2017年12月11日 ちょっと修正。
クロノスが手を翳すと、一瞬にして鷹也の身体は原子分解され、その姿は世界から消える。
そして、宙を舞っているであろう鷹也の原子に向け、クロノスは嬉々とした表情で言い放った。
「さぁ、アンデッドのDNAよ、再びその身を戻し、神気を高めよ!」
すると、鷹也の原子は空中で渦を巻くように集まり、再び、元の姿へ。
鷹也は、訳の解らない法術を掛けられた事に怯え、息を荒くしていた。
な、なんだったんだ、今のは……。
手も足も、出なかった……。
裸体で蹲る鷹也を眺め、クロノスは不服そうに言葉を吐いた。
「ただ、元に戻っただけか……」
な、なんとかしないと……。
どうする?
ダメだ、迷っている暇は無い。
剣は、剣は何処だ?
アイツ(フェリオス)だって、避けたんだ。
剣だ、まずは、剣を。
そう考えた時、突如として、鷹也の手元に剣が現れた。
え!?
突然現れた剣に動揺したが、首を振って我に返る。
今は考えるより、動かないと!
そんな鷹也を尻目に、クロノスは次の手を考えていた。
「もう少し、妖気が残っていた方が膨らむのか?」
奴が、未だ何かを考えてる隙に!
慌てて、目の前の剣を掴み、裸のまま、クロノスへと滑空する。
だがクロノスは、襲い掛かってくる鷹也を気にすることも無い様子で、深く考え続けていた。
そんなクロノスへ、鷹也は滑空した勢いそのままに、剣を振る。
その刃が、あと数センチで当たろうとした、その瞬間。
――世界は、時間を刻む事を忘れる。
それは鷹也だけでなく、波も、風も、この星のありとあらゆる物が停止していた。
唯一つ、クロノスを除いて。
「リープより、リワインドするか」
そう言って、クロノスは手を広げると、再び、世界は時を刻み始めた。
――反対の方向に。
鷹也の眼に飛び込んでくる景色は、まるでビデオを巻き戻して行くようだった。
斬りに行く前の場所まで戻され、剣は無くなり、原子分解され、再び戻る。
死んだ筈のフェリオスやグレイスまで、生き返えった。
そして、この海岸に到着したばかりの所で、その巻き戻しは終了する。
鷹也の死角へ入ったグレイスの蹴りがヒットし、鷹也は弾き飛ばされた。
更にグレイスは、吹き飛ばされた鷹也を追い滑空する。
それを見て、フェリオスが叫んだ。
「グレイス! 後ろだ!」
グレイスは振り返って、自分の肩を掴もうとしたクロノスへ、詠唱する。
「フリィィィーーーズ!」
だが、その詠唱も空しく、クロノスは凍らない。
「お前に氷結耐性が有るのに、儂に無いと思ったか?」
まるで、フリーズが自分に反射したように、グレイスは恐怖で硬直し、その肩をクロノスに掴まれた。
矢張り、そうか……。
フェリオスは、そうなる事を解っていたようで、手の中に発生させた火球をクロノス目掛け放つ。
「ブレイズ!」
それを見て、クロノスは鼻で笑う。
「愚かな、忘れたかフェリオス」
「忘れちゃいないさ」
すまんな、グレイス。
お前の神気を、親父に遣る訳には行かないんだ。
そう、フェリオスの狙いは、クロノスでは無く、最初からグレイスだったのだ。
グレイスに当たったブレイズは、グレイスを灰に換え、その灰は風に散って逝く。
「小賢しい真似を」
クロノスは、次の標的を睨んだ。
だが、フェリオスは、怯える事無く、鷹也へ指示する。
「ドラキュラ、一旦休戦だ! 手を貸せ! 俺が奴を食い止める、お前は神気を高める事に集中しろ!」
全く、お前なんかに頼る事になるとはな。
だが、俺が死んだ後、アイツは親父と戦った筈だ。
親父が、アイツの神気を極僅かの段階まで、リワインドしたと言うことは……、
恐らく、アイツが親父を追い詰めたに違いない。
何をグズグズしてやがるんだ、さっさと全てを神気に換えやがれ!
「インフェルノ!」
幾つもの火柱が、クロノスを包む。
「儂を食い止めるだと? 笑わせるな」
その声の方向は、火柱の中では無く、フェリオスの背後に在った。
「だろうなーッ!」
それを解っていたとばかりに振り向いて、フェリオスは背後に居たクロノスの顔を掴んだ。
「何をするつもりだ?」
それでも、冷静さを失わないクロノスに、フェリオスは笑い、力を籠めてクロノスの口を抉じ開けた。
「果たして、耐性は体の中まで在るかな?」
口の中で広がる火球を、一気に爆発させる。
「ブレイズ!」
読んでくれて、ありがとう。
次回「Predictable」




