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MoonLit  作者:
Black Moon
83/105

第6話「アレスター」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2017年12月9日 次回予告追記。

 モニタに映る男は、傲慢ごうまんを絵に描いたような面構つらがまえで、話し方もその顔に似合って高圧的なものだった。

 使われていた言葉は敬語であったものの、伝わってくる印象は、恫喝どうかつそのものだった。


「よく考えた上で、お返事を頂きたい。忘れないで欲しい、我々はエクリプスと共にあることを」


 そう付け加えて、イマジニアの大統領を名乗る男ディンガーは、一方的に通信回線を落とした。


「交渉と言うよりは、脅迫だな」


 そうボヤいたこの男、名をアレスターと言い、かつて、王不在の時代に摂政をしていたバルバドの息子で、現ヴァンパイア王である。

 現状では、ヴァンパイア界最強であるものの、それはエクリプスによって、強いヴァンパイアが一掃されてしまった結果であって、歴代で比べれば中の上と言った存在だった。

 だが、最早、ヴァンパイアには、アレスターしか居らず、過度な期待に押し潰されそうになるも、この12年間、自分の出来る限りのことを遣って、ヴァンパイアの領土を守って来た。

 ホークアイからの亡命願いに応じて受け入れたのも、国力を上げる手段の一つだった。


 アレスターは、交渉と言う名の脅迫に、頭を悩ませる。

 ディンガーの話を要約すると『本日以降、亡命してきた人間の女を全て引き渡せ、従わない場合は宣戦布告とみなし攻撃する』というもの。


「先制攻撃してくるのに、こちらが仕掛けるような物言い……全く、人の政治家という生物は、詰まらないこだわりが有るのだな」


 すでに回線の切れた相手に、そう皮肉った。


 さて、気になるのは、女だけという点だ。

 この星の6割を治めるイマジニアの男女比が、かたよってるとは思えない。

 その中に、重要な人物でも居るのか?

 だったら、その一人を指名するだけで良いのではないか?

 人質にされる事を気にしてるのか?

 否、違うな、それなら、女全てを人質にすれば良い。

 特定しないのは、奪還作戦の際に、複数と個人ではコチラの守りに差を与える為か?

 生きたままでの、引き渡しを望んでいると考えるべきだな。

 渡せば、本当に攻めて来ないのだろうか?

 逆に、その女を渡さない方が、攻めては来ないのではないか?

 どちらにせよ、一度、その女と話してみる必要が有りそうだな。

 あと気になるのは、エクリプスか……。


 そして、数年前から気にしていた、大きな疑問が脳裏をぎる。


「エクリプス……本当に生きているのか?」


 人間界でエクリプスは、人間でキリストのような神の遣いだと信じられている。

 だが、妖気を感じられるヴァンパイア側では、ラズウェルド戦でエクリプスが妖気を発したことから、ヴァンパイアであることは明白だった。

 エクリプスが人であろうとなかろうと、ヴァンパイア側にとって、問題は無い。

 問題なのは、イマジニアと共にある、つまりは自分達の敵である点だ。


 アレスターは、12年前に起こった争いをアルバムをめくるように思い出して行く。


 あの時、確認できた大きな妖気は、確か3つ。

 2つはメイヲール級、あと1つは他よりも……少し小さかったか?

 現れた直後に、一番小さかった筈の妖気がメイヲールを超え、その瞬間に、メイヲール級の一匹が消えた。

 恐らく、この時消えた妖気がメイヲールで、退治したのがエクリプスだろう。

 イマジニアの調査報告を見る限り、メイヲールの死体が見つかった事から、まず、ここまでは間違いないだろう。


 ヴァンパイアが、そして、レーダーが捉えた大きな妖気は3つ在り、一番大きかった妖気は、かつてこの星に君臨した山羊の魔人で、その次ぎに大きな数値を見せたのは、その魔人の角が姿を変えた剣だった。

 この時、その2つが余りにも大き過ぎた為、その影に隠れるようになった第3の妖気、鷹也に注目する者は、人間界には居なかった。

 それは、最新の軍事レーダーを持つイマジニアでさえ同様で、大きさや位置の計測は出来ても、区別までは付けられず、後の調査による公開情報では、第1の妖気をメイヲール1、第2の妖気をメイヲール2、第3の妖気をウォレフ、もしくはグリンウェルではなかったのかと、あくまで結果から導き出された予測でしか無かった。(非公式の見解では、第3妖気は鷹也となっている)


 アレスターは、さらに記憶を辿たどる。


 その後、一匹が逃げ、それをエクリプスが追った?

 で、あの異常な高温現象だ。

 そして、その直後、二匹とも居なくなった。

 あの戦いでエクリプスが死んだのなら、この12年間、エクリプスが討伐を行わなかった説明が付く。

 しかし、エクリプスにはカイルを討伐した際、手に入れたと思われるアルベルトのローブが有る。

 高温現象が1800万度という異常な温度だったが、あのローブならば、水爆の4億度に耐えた実績がある。

 あの程度では、燃え尽きない……つまりは、あれでは死なないということになる。

 となると、イマジニアに居るエクリプスは本物ということに……。

 あと、気になるのがメイヲールの死体に残った、胸を穿うがったあと

 あれは、カイルの技ではないのか?

 カイルが、エクリプス?

 いやいや、それは幾ら何でも、考え過ぎだな。

 カイルなら、隠れる必要が無い。

 あの争いから、一度もあのレベルの妖気を感じた事が無い。

 そもそも、共存が目的だったから、闘う必要が無いのなら、それもうなずけるが……イマイチ納得が出来ん。


 アレスターは窓を開け、外を、否、今後の行く末を眺めた。


「さて、どうしたものか?」



 一方その頃、同じ考えをする者が、別の場所に居た。


 あの時、奴等は確かに「逮捕する」と言った。

 国家反逆罪などと、重罪であるにも関わらずだ。

 今の奴等なら、逃亡に見せかけて射殺することも出来た筈だ。

 実際、逃げても後方から、銃声は聞こえなかった。

 つまり、目的は捕まえることであり、暗殺ではない。

 捕まえなければならない理由とは何だ?

 鷹也さんが、現れた時の為の人質か?

 否、12年も経った今、そんな事を気にする奴は居ないだろう。

 エクリプスが影武者だと公言されては困るのなら、暗殺を選択するな。

 一体、この人に、何の価値が有るんだ?


 幾ら考えを巡らせても答えは出ず、そして、もう一つの疑問も暗礁あんしょうに乗り上げていた。


 何故、正確な居所がバレたんだ?

 拠点は、毎回変えているし、第一、夕食の為に選んだ店でだ。

 俺の気付かないスパイが居たのか?

 否、そうなるとバウアーって事になる。

 あんな単純な奴が、スパイなんて出来る訳がない。


「ん? なんだ? 何か可笑しいことでもあったのか?」


 バウアーにそう言われ、思わず噴出すレオンだった。

読んでくださって、ありがとう。



「リープより、リワインドするか」


次回「Rewind」

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