第1話「クロノス」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2017/10/19 あとがきを修正。
光が失われた暗闇の世界で、それはまるで直視できない閃光のような存在だった。
再び、世界が光を取り戻した時、瞳に映った光景は、違う世界になっていた。
「何処だ、此処は……」
移動させられた感覚が、全く感じられ無かった。
これが……コイツの起こした御業ってヤツなのか?
"コイツ"と呼ばれた者は、人の年齢にして五十代と言ったところ、黒い髪と黒い髭を携えた男だった。
だが、その男に驚いたのは、鷹也だけではなかった。
「お、親父……なのか?」
自分が知っいる父とは、明らかに違う。
だが、神気の大きさからすれば間違いなく、否、大きさで言うなら寧ろ、以前の倍近く在って、別人と言うべきだった。
何よりも、見た目が違っていた。
「どういうことだ……」
その光景に、フェリオスは遥か昔の出来事を思い出す。
それは、父の手から逃げようと、神界を飛び出した一人の使徒だった。
「フェリオス! お前は、否、全ての使徒が、親父に騙されているだ!」
まるで神に祈らんばかりに両手を組み、命を奪わないで欲しいと懇願する惨めな腹違いの兄の姿を前に、フェリオスは蔑んだ眼差しを向ける。
「命乞いにしては、ツマラナイ話だな」
「本当だ! 本当なんだ!」
涙まで浮かべやがって、見苦しい。
「ならば聞くが、何の為だ?」
「そ、それは……それは解らんが……俺は見たんだ!」
フェリオスは、大きく溜息を吐いて、兄に今生の別れを告げる。
「最期に、言いたい事は無いか?」
「本当だ! 本当なんだフェリオス! お前も、いつか親父に……」
その言葉を最期に、兄を灰に変えた。
あれは……あの言葉は、本当だったのか?
そう言えば……クライから、神気を奪った時?
そうか、そうだったのか……。
ヤツの言う通りだったか……。
「長かった。お前にとっては、30年も満たないであろうが、儂は、お前が現れるのに、一万年も待った」
「な、何を言っている?」
「気をつけろ、ドラキュラ……親父の、ヤツの名はクロノス、ヤツは時をつ……」
そうフェリオスが言ったところで、クロノスは鷹也の目の前に!
な、なに!
構えるより先に、胸倉を掴んでいたフェリオスを奪われ、吹き飛ばされた。
見えなかった……。
移動しようとする動作さえも……。
不味い!
アイツの回復はさせん!
鷹也は、クロノスへ無数の真空波を放つ。
だが、全ての真空波は、クロノスに当たる事無く、まるで何も無かったように擦り抜けた。
なんだ?
避けたのか?
「親父、見ない内に、随分と若返ったじゃねーか」
息子との会話に興味の無いクロノスは、フェリオスの胸に手を当てる。
「ん? アンチフィールドか、小賢しい」
そう言うと、フェリオスを空へ投げ捨て、右手を翳す。
「フェリオス、今までご苦労だったな」
その言葉で最期を知ったフェリオスは、今まで敵だった者へ叫んだ。
「ドラキュラ聞け! コイツの出来ることは、お前も……」
全てを伝える前に、フェリオスの肉体は破裂し、此の世を去った。
「余計なことを……」
「な、なんだ? 仲間じゃ……息子じゃないのか?」
「そうだ、だから何だ?」
「何なんだ、お前は!」
鷹也との会話にも興味の無いクロノスは、右手を顎に付け首を傾げる。
「ん? 少し足らんな……出直すか」
「逃がすか!」
鷹也は、瞬時にクロノスへ詰め寄り、斬り掛かる。
縦に振られた剣は、当たったかに見えたが空を斬り、その斬り掛かった相手はというと、信じられないほど遥か上空に浮かんでいた。
再び、鷹也が詰め寄ったのだが、クロノスは空気に融けるように消え去った。
読んでくれて、ありがとう。
この地球を導けるのは、
我々以外に、一体、誰が出来ようか?
ヴァンパイアの人間化は、
共存を促すものではない!
人間化とは、
人の血を吸わなければ生きられない、
太陽の光を浴びることすら出来ない、
そんな劣悪遺伝子を持つ、
不完全な生物の修正行為である!
次回「月蝕の旗の下」




