最終話「神化」
長かった三章も、ようやく最終話です。
それでは、読んでくださる方に合う作品であることを祈りつつ。
2017/05/03 11:54 修正
アルベルトを生かせたのは、コイツを産むため。
カイルを始末させなかったのは、ヴァンパイアとして、コイツを成長させるため。
クライの封印を許したのは、アルベルトと人間の女を出逢わせるため。
自分の意志で動いていたと思っていた俺は、親父の掌で踊らされた、ただの道化師だった。
カイル、アルベルト、グリンウェル、クライ、俺やフェリオスに至るまで。
コイツを神化させる為の過程に過ぎなかったのか!
グレイスは、最期の力を振り絞って叫んだ。
「フェリオス、逃げろーーーッ! これは親父の罠だーーーッ!」
「親父?」
突然、俄には信じがたい話を聞かされた方にしてみれば、この状況が何故、父の所為なのか理解できず、戸惑った。
しかし、リザレクション(復活)が起こらないことで、グレイスが危機的状況なのことだけは理解出来た。
「まさか、アンチフィールドか?」
対法術禁止領域。
それは神の中でも、父にしか使えない特別な術だった。
「親父が、このエリア一帯に?」
それを確認する為、フェリオスは詠唱し、自分の身が炎に包まれたことで、その術を行っているのが父ではなく、ドラキュラの方であると確信する。
「覚醒し、神化したという訳か……」
この時のフェリオスは、グレイスがリザレクションが起こらないことで、父の仕業であると勘違いしたのだと考えていた。
ヤツをグレイスから離せば、リザレクションが掛る筈!
まだ、間に合う!
フェリオスは、鷹也からグレイスを引き離す為、一気に近づこうとしたのだが、
「こう振るんだったか?」
その言葉と共に、剣から放たれた真空波がフェリオスを襲う。
フェリオスは、危険を察知し避けたが、行き場を失った真空波は地面に当たり、大地が大きく裂ける。
おいおい、チートにも程があんだろ!
当たれば、即死だな……
「こんなことなら、クライの言うこと聞いて、回復術を覚えておくんだったな」
口ではそう言いながらも、自分よりも強い者が父の他に居たことに、喜びを感じていた。
心の奥底で、父と戦ってみたいという衝動がフェリオスにはあったからだ。
そして、その絶好の相手が、目の前に現れた。
「こいつなら、全力で戦っても文句はねーだろ、親父!」
その答えが返って来ない事で、了承を得られたと思ったフェリオスは神気を上昇させる。
次々と飛んでくる衝撃波を交わし、鷹也へ近づき拳を放った。
「どうだ? 神になった気分は!」
鷹也はそれに答えず、拳を剣の腹で受け止めると、剣を振ってフェリオスを弾き返した。
ヤツの方が、未だ速いのか?
もっと速く!
ヤツが捉えられない程に速く!
目にも留まらない剣撃を繰り出す鷹也、最初は難なく躱していたフェリオスだったが、段々とその身が削がれて行く。
何だコイツ、まだ速くなるのか!
一旦、距離を……
だが、その離れたフェリオスへ、数え切れない程の衝撃波が襲い掛かる。
「舐めるな!」
フェリオスは、己が身にブレイズを放ち、その熱がバリアとなって、衝撃波を打ち消した。
「インフェルノ!」
幾つもの火柱が地より噴出し、鷹也を包む。
お前には熱耐性があるだろうが、目眩ましにはなる!
神気を覚えたてお前が俺に気付くのが先か、俺がお前を殴る方が先か、勝負だ!
火柱の一つから飛び出したフェリオスの拳が、鷹也を捉えた。
手応えを感じたフェリオスは、畳み掛けるように二撃目を――。
な、なん……だと?
目の前に居た筈の鷹也は、すでに後ろに在り、フェリオスの体は真っ二つに切り裂かれていた。
あれか? あのメイヲールを仕留めた技か?
あれを、あれを、俺は喰らったのか?
「ぐ、グレイス……俺にリザレク……」
だが、居ると思われた者は其処に居らず、遥か遠くで見つけた姿に、フェリオスは絶句する。
何故だ、もうコイツのテリトリーから外れている筈なのに……。
その姿とは、復活すること無く地面に叩きつけられ、砕け散ったグレイスの躯だった。
親父か?
親父なのか!
グレイスの最期の言葉が、フェリオスの脳に響く。
「オヤジィィィィィィィーーーーーッ!」
だが、その叫びが父に届くことは無かった。
おわり
読んでくれて、ありがとう。
あと残すは、エピローグとあとがきです。
よろしければ、そちらも、どうぞ。




